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殿下の教育係  作者: 戦乃作為
第1章 【軟禁生活と日常】
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第4話 『黒髪ロング』 その2

「初めまして。お呼び頂き光栄です」

「うむ。苦しゅうない」


清楚で淑やかな着物姿の娘が現れた。

美しい長い黒髪。

だが、あまり心には響かない。

しかし、それはこの際どうでもいい。


「ボクの耳かきをしろ」

「はい?」


要件を伝えると首を傾げられた。

何がいけなかったのだろう?


「殿下」

「何だ?」

「あくまでも、さりげなく、です」

「……なるほど。わかった」


教育係に指摘され、理解した。

これは場の空気を読むべきだと。

そして、ボクがこの場を支配するのだ。


「おっと。耳かきを落としてしまった」


努めてさりげなく、耳かきを落とす。

ちらりと教育係を伺う。

うんうんと頷いてくれた。

よし、このまま行こう。


「そこの者、拾ってくれ」

「わ、わかりました」


そうしてさりげなく拾わせる。

黒髪ロングはボクの策にかかった。

あとは畳み掛けるのみ。


「む?突然耳垢が詰まってしまった」

「えっ?」

「早く耳かきをしないと中耳炎になる」

「は、はあ……」

「何を惚けている」

「えっ?」

「さっさとボクの耳かきを……」


完璧だった。

完璧な作戦の筈、だった。

しかし、ここで思わぬ邪魔が入った。


「殿下ぁぁぁぁああああ!!?!?」


教育係が、絶叫した。


「殿下っ!!早くこちらにっ!!」

「は?」

「殿下を中耳炎になどさせませぬ!!」


いきなり発狂した教育係。

何を血迷ったか抱きついてくる。

教育係の高級そうなコロンの香り。

それに気を取られてるうちに、膝の上に寝かしつけられ、耳かきをされる。


痛い、痛いって!もっと優しくしろ!


「おや?全然耳垢がありませんね」

「何をやってるんだ貴様は……」


綺麗な耳の穴に首を傾げる教育係。

ジロリと睨んでやると、察したようだ。


「これは失礼を。少々取り乱しました」

「どこが少々だ、どこが」


その日、ボクは知った。

この教育係は過保護過ぎると。


「あ、あの……」


おずおずと黒髪ロングが口を挟む。

もはや耳かきは望めまい。

ボクの耳が綺麗だと知れてしまった。


「もうよい。下がれ」

「は、はあ……失礼します」


黒髪ロングが退室する。

それをボクは膝枕されたまま見送った。

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