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殿下の教育係  作者: 戦乃作為
第2章 【学園生活と日常】
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第46話 『複雑な構図』

「教育係」

「はい、なんでしょう?」

「その格好はどうにかならんか?」

「はい?」


初めての授業が終わり、休み時間。

授業内容自体は極めて普通だった。

離宮ですでに習い終えたものばかり。

だから、戸惑いは少なかった。


しかし、同級生達は戸惑っていた。


「皆、お前の燕尾服が気になるようだ」


ひしひしと感じるクラスメートの視線。

もちろん新参者のボクにも向いている。

しかし、大半はボクの背後に。


皆、教育係を気にしていた。


「おかしいでしょうか?」

「ああ、おかしいだろうな」


首を傾げる教育係に言って聞かせる。

明らかにおかしいと。

すると奴は渋々と頷いた。


「わかりました。着替えてきます」

「ああ、着替えてこい」


退室する教育係。

その姿を目で追うボクと同級生。

奴が教室の外に出た。


その瞬間、同級生が一斉にこちらを見た。


「ねぇねぇ、どこから来たの?」

「あの人って何なの?」

「デンカちゃんって呼んでもいい?」

「あの人ってもしかしてさあ……」


すぐに取り囲まれて質問責め。

集まって来たのは女生徒ばかり。

ボクはしどろもどろになってしまう。


「いや、あまり答えられなくて……」


俯きながらも、何とか絞り出す。

正体を隠す為とはいえ、心苦しい。

けれど彼女達はそれで納得したようだ。


ここはボクの国の王立学園。

貴族や高官の子女達が多く通っている。

素性を明かせない者も多いのだろう。


ほっと安堵していると、奴が戻った。


何故か……学園の制服姿で。


すらっとした奴が制服を纏っている。

細身の教育係に似合っている。

長い足が、スラックスで際立つ。

素直に、格好良いと思った。


すると、黄色い歓声が上がった。


「すっごいイケメン!」

「ねぇねぇ、やっぱりあの人って……」

「だよね? 『主席』だよね?」


教育係を褒め称える女生徒。

男子生徒も数人頬を染めている。

そして気になる発言が聞こえた。


主席?

主席ってなんだ?


教育係の元に彼女達が群がる。


「やっぱり主席ですよね?」

「おや、私を知っているのですか?」

「学園始まって以来の天才だと」

「昔の話です」


チヤホヤされる教育係。

なるほど、奴はこの学園の卒業生らしい。

それで、『主席』ってことか。


どうでもいいけど、なんか苛つく。


「主席は確か今、殿下の……」

「ええ、その通りです」

「すごい! 噂は本当だったのですね!」

「はい、私は殿下の教育係です」


さらっと身の上を明かした教育係。

おいおい!そんなこと言っていいのか?

ボクは焦りを感じて視線を送る。


その視線に気付いた奴が、にやりと笑う。


そして、とんでもないことを口にした。


「殿下のご命令で学園に来ました」

「殿下のご命令で?」

「ええ、妃候補を教育する為に、ね」


平然と虚言を吐いて、ボクに視線を送る。

それを受けて彼女達は誤解した。


ボクが、ボクの妃候補であると。


「あちらの妃候補様にどんな教育を?」

「それはもちろん、殿下好みの教育を」

「わ、私も是非教育して下さいっ!」


火に油を注ぐ教育係。

受講志願者まで現れる始末。

ボクは憮然として、ため息を吐く。


すると、部屋の隅から舌打ちが鳴った。


「チッ。何が殿下だ」


見ると、そこにはあの青髪の少年。

似たような髪色の取り巻きもいる。

憎々しげに呟いて、席を立つ。


そしてそのまま取り巻きと共に退室した。


何だったのだろうか。

明らかにボクに対する敵意があった。

しかし、恨まれる覚えはない。


首を傾げていると、声を掛けられた。


「あ、あの……」

「ん?」


見ると、そこには三つ編み眼鏡が。

おっかなびっくり、びくびくしている。

そんな彼女が、キッとこちらを睨んだ。


「教育係さんを取らないで下さいっ!」

「は?」


突然訳わからないことを言い出した。

何のことかわからず困惑するボク。

三つ編み眼鏡は涙目で説明した。


「あの人は殿下の教育係さんですから!」


それだけ言って、立ち去った。

言われて呆然とするボク。

そして、ふと思い出した。


今、ボクは変装している。

薄桃色のウィッグを被って。

鳶色のカラコンをつけていた。

舞踏会の時と同じように。


そして彼女はボクに気付いてない。

舞踏会からこれまで、感違いしていた。

どうやらボクは泥棒猫扱いされたらしい。


ボクの教育係をボクが奪い取る。


実に奇妙な構図となってしまった。


「どうかなされましたか?」


呆気に取られていると、奴が来た。


「……お前のせいだからな」

「はて、何のことでしょう?」

「うるさいっ! 自分で考えろっ!」


首を傾げる奴に怒鳴り散らす。

ふんっと鼻を鳴らしてそっぽを向く。

ボクが機嫌が悪いのは教育係のせいだ。


こいつが話を拗らせて。

こいつがチヤホヤされて。

ボ、ボクの前で女にヘラヘラして!


もう頭にきていた。

教育係なんてもう知らないっ!!


すると奴は、そっと耳打ちをした。


「誰よりも、殿下が可愛いですよ」


……ずるい。

こいつは本当にずるい奴だ。

だってボクはもう怒りを忘れてしまった。


「教育係」

「はい、なんでしょう?」

「……制服、似合ってる」

「くふっ。殿下程ではございません」


ボクの教育係は本当に都合が良い奴だ。

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