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殿下の教育係  作者: 戦乃作為
第1章 【軟禁生活と日常】
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第3話 『黒髪ロング』 その1

「授業を始めます」


今日も突然授業が始まる。

もはや、慣れた。

最初はボクも困惑した。

こいつの担当科目に、とても驚いた。


「今日も性教育なのか?」

「左様でございます」


そう、こいつは性教育の教師である。

父上がわざわざ派遣して来たのだ。

それだけボクは期待されていた。

しかしその期待は、重荷でもあった。


「お前はボクの年を知っているのか?」

「御年12才になられたと聞いています」


その通り、ボクはまだ12才だ。

それなのに今から期待されても困る。

世継ぎなど、まだまだ先の話だった。


「12才のボクに何を教えるつもりだ?」

「今だからこそ、必要な知識を」

「ほう?聞こうじゃないか」


いつにも増して、真剣な教育係。

こちらも居住まいを正して耳を傾ける。

そんなボクの耳に教育係は息を吹いた。


「ふぅ〜」

「なっ!? 何をする!!」


びっくりした。耳がとても痒い。

生まれて初めての経験だった。

そんなことをされたのは初めてだった。


「これが、『性感帯』でございます」

「せ、性感帯……?」

「左様。ゾクゾクしたでしょう?」


耳を押さえて悶えるボクを見下して、教育係は如何にも偉そうに腕を組む。

パリッとした燕尾服を着こなす教育係は、悔しいけど、様になっていた。

かっこいいと、子供ながらに思う。


「そ、それがどうしたと言うのだっ!」


苦し紛れに、意味を尋ねる。

耳が性感帯だからどうした。

それに何の意味がある、と。


「これをご覧下さい」

「また漫画か」

「ええ、このページにご注目下さい」


教育係が差し出した漫画に目をやる。

それは、『耳かき』をしているページ。

黒髪ロングヘヤーのヒロインが、甲斐甲斐しく主人公の耳かきをしている。


「耳かき、か」

「耳かき、です」


ふむ。悪くない。

きっと心地いいのだろう。

しかし、気になる点がある。


「どうして膝枕なんだ?」

「自然の摂理でございます」


またそれか。

しかし、耳かきをするならそうなるか。

他にしようがない。理にかなっていた。

だから、これが一番自然なのだろう。


「興味が湧いた」

「それはようございました」

「黒髪ロングヘヤーの娘を呼べ」

「かしこまりました」


そして、黒髪ロングの女が召喚された。

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