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殿下の教育係  作者: 戦乃作為
第1章 【軟禁生活と日常】
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第27話 『殿下のお悩み』

「ボクはちゃんと母乳が出るだろうか?」

「はい?」


ボクの切実な疑問に、教育係が首を傾げる。


オレっ娘の一件以来、ボクは悩んでいた。

王家の存続は義務であり、使命だ。

なんとしても世継ぎを残す必要がある。


しかし、貧相なボクに子育てが出来るのか。


それが、不安だった。


「殿下の仰っている意味がわかりません」


普段は察しがいい癖に今日は鈍感な教育係。

仕方なく、ボクは心中を吐露する。


「ボクの胸は真っ平らだろう?」

「そうですね」

「きちんと母乳が出るか心配だ」


自分の貧相な胸板を見下ろす。

見事に平らだ。全く何もない。

見渡す限り、平地だった。


そんなボクの頭をくしゃりと教育係が撫でる。


「殿下のご心配は杞憂です」

「そうか?」

「ええ、何なら私が母乳を子に飲ませます」


胸を張ってそう宣言する教育係。

しかし、奴の胸もまた、貧相だった。


「お前の胸には期待していない」

「は?」

「まだボクの胸の方が期待出来る」

「あ?」


ひぇっ。なんか怒ってる。

聞いたことない声が聞こえた。


「ごほん。それはさて置き……」

「まずは謝って下さい」

「ご、ごめんなさい」


ぺこりと教育係に頭を下げるボク。

歯向かってはただでは済まない。

生存本能がプライドを上回った。


「よろしい。それで、どうしたのですか?」

「ああ、三つ編み眼鏡を呼んでくれ」

「何故ですか?」

「今のうちに母乳を搾っておきたい」


三つ編み眼鏡はかなりの巨乳だ。

あいつなら搾り放題だろう。

世の中には乳母だっている。

何もおかしな行為ではない筈だ。


それに純粋に母乳の味が気になる。

我が子に飲ませる前に確認しておきたい。


そんな願望を抱くボク。

それをよそに教育係は一考して、頷いた。


「そうですね。枯れるまで搾り取りましょう」


何やら邪悪な笑みを浮かべる教育係。


画して、三つ編み眼鏡が召喚された。


「し、失礼しますっ!お呼びですか?」

「よく来てくれた。まあ、そこに座れ」

「は、はいっ!」


三つ編み眼鏡を椅子に座らせる。


そして、目の前の机に哺乳瓶を置いた。


「へ?」

「ちょっと搾ってくれ」

「な、何をですか……?」

「もちろん、母乳だ」


要件を告げると、三つ編み眼鏡は理解した。

顔を真っ赤にして、わなわなと震える。


ボクは異変に気付き、即座に対応する。


「大丈夫だ。ちゃんと後ろを向いている」

「そ、そういう問題じゃありませぇーん!」


何故か悲鳴を上げて抗議する三つ編み眼鏡。


おかしい。

何か気に障ることをしただろうか?


「自分で搾るのは気が引けるのでしょう」


困惑するボクに教育係が助け舟を寄越す。


そしてドンッ!と、何かを机に乗せた。


「これで搾ってみては如何でしょう?」

「あ、あのぅ……これってまさか……?」

「ええ、『搾乳機』でございます」


教育係が持って来た搾乳機。

なるほど。これなら効率が良い。


しかし、三つ編み眼鏡は突然席を立つ。


「きゅ、急用を思い出したのでこれで!」

「は?」

「それでは失礼しますぅ〜!!」


何やら青い顔で退室した。


呆気に取られて見送るボク。

思わず教育係に尋ねる。


「どうしたんだ、あいつは?」

「恐らく、トイレでしょう」


何故か意地悪な笑みを浮かべる教育係の返答。

それにボクは納得する。


そうか……トイレか。

それなら仕方がない。やむを得ない。

またの機会にしよう。


「それはさて置き、殿下」

「ん? どうかしたのか?」

「母乳の件についてですが……」

「なんだ?」


ボクは首を傾げて耳を傾ける。

すると奴は驚くべき真実を告げた。


「子供が出来れば自然と乳房は発達します」

「そ、それは本当かっ!?」

「はい。本当でございます」


そうか……それなら、良かった。


人体とは実に上手く出来ているものだ。

生命の神秘に感嘆し、胸を撫で下ろす。


「それならボクも子が産めるな」

「陣痛は相当痛いらしいですよ?」

「……なら、お前が産んでくれ」

「はいっ! お任せ下さい!」


さりげなく、ボクをビビらせる教育係。

何故か満面の笑みで出産を快諾された。

こいつは陣痛が怖くないのだろうか?


なんとなく、負けたくなかった。


「……やっぱり、ボクも産みたい」

「くふっ! お任せ下さい!」


ボクの教育係はどちらにせよ快諾するようだ。

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