第21話 『朝までガッチリ』
「おはようございます、殿下」
「ああ、よく眠れたか?」
「はいっ!それはもう、ぐっすりと!」
翌朝、目覚めるとメイドが既に起きていた。
丁度、メイド服に着替え終えた様子。
どうやらまた着替えを見逃してしまった。
寝付きが相当いいらしく、安眠したようだ。
若干寝不足気味のボクはメイドが羨ましい。
「それは良かったな。ボクは寝不足だ」
「寝付けなかったのですか?」
「ああ、教育係が寝せてくれなくてな」
「ええーっ!?それはマジですかっ!?」
なんかめちゃくちゃ驚かれた。
顔を赤くしてきゃあきゃあ騒いでる。
そんなに驚くことを言っただろうか?
「ああ、マジだ。朝までガッチリだった」
「ガ、ガッチリ……?」
「なかなか離してくれなくてな」
「うぅ……えっちです……!」
なんだ?
メイドの顔が更に真っ赤になった。
しかも、内股になってモジモジしてる。
首を傾げていると、教育係が起きた。
「朝から騒がしいですね」
「起きたか」
「お、おおおはようございますっ!」
寝ぼけ眼を擦り、小さく欠伸をする教育係。
メイドは何故か緊張した様子だ。
深々と頭を下げて、朝の挨拶をする。
それを見て、教育係は何かを察したらしい。
「昨晩はつい熱く絡み合ってしまいました」
「絡みっ……!?」
「殿下がなかなか離してくれなくて」
「離さなかったのはお前だろう」
「はわわわわ……!!」
教育係の虚言に突っ込む。
するとメイドが慄いたように後ずさる。
内股で、モジモジとしながら、器用に。
彼女は何故こうまで衝撃を受けているのか。
「殿下、寝覚めのキスを」
「し・な・いっ!」
「では私から寝覚めのキスを送ります」
「や・め・ろっ!」
顔を近づけてくる教育係から必死に逃れる。
辟易としたボクの口から思わず文句が漏れる。
「はあ……もう突っ込むのが面倒臭い」
「つ、突っ込むのが、面倒……!?」
それを耳にしたメイドが更にモジモジ。
何故かいやらしい笑みの教育係が追撃する。
「では殿下、私の靴下を履かせて下さい」
「ああ、わかった。足を出せ」
「乱暴に、しないで下さいね?」
「わかってる。丁寧に履かせてやる」
「私も殿下の靴下を丁寧に履かせます」
「うむ。頼んだぞ」
「そ、それでは私はこの辺でっ!!」
朝の日課をしてるとメイドが暇を告げた。
涙目で頭から湯気が出ている。
意外とこの銀髪メイドは表情豊からしい。
「し、失礼しましたぁーっ!!」
「騒がしいメイドだな。何かあったのか?」
「きっとトイレでしょう」
「ああ、なるほど。それでか」
駆け足で部屋を飛び出して行ったメイド。
きっと漏れそうだったのだろう。
それならば、とやかく言うまい。
「さあ殿下、御足をこちらに」
「うむ。頼む」
「これで既成事実が出来ましたね」
「何のことだ?」
「くふっ。いえ、なんでもありません」
ボクの教育係は時々おかしなことを言う。
その意味をボク知るのはまだまだ先である。




