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殿下の教育係  作者: 戦乃作為
第1章 【軟禁生活と日常】
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第1話 『三つ編み眼鏡』 その1

「では本日の授業を始めます」


いつものように『教育』が始まる。

時間は特に決まっていない。

教育係は何時でも何処でも授業する。


こいつはボクの近くに常に控えている。

執事のような燕尾服を着て、艶やかな黒髪をサラサラ靡かせて、傍に佇む。


そして、突然『授業』を開始する。

それが教育係のやり方だった。


「ボクは今忙しい」

「だからこそ、でございます」


現在、ボクは書類の束と格闘中だ。

机の上に山の様に積まれた見合い写真。

これを精査するのがボクの日課だった。


「そんな写真でお妃を選ぶよりも、もっと殿下の為になる方法があります」


教育係は自信満々で物申す。

ボクは仕方なく、見合い写真から顔を上げて、『授業』を受けることにした。


「どんな方法だ?」

「こちらでございます」


教育係は見合い写真を取り上げると、代わりに1冊の本を手渡した。漫画だ。

如何わしいイラストが表紙を飾る。

なんのつもりかと怪訝な視線を向ける。


「この書物に必ずや殿下の好みの女性が登場すると断言致します」


断言された。

仕方なく、本を開く。

そして最初のページに疑問を抱いた。


「どうしてこの女はパンを咥えて走っているんだ?」

「学校に遅刻しそうだからです」

「一般庶民は皆、遅刻しそうになるとパンを咥えて走るのか?」

「極一部の限られた者だけです」


ボクの問いに教育係はスラスラ答える。

そんなものかと次のコマに移る。


「ぶつかったぞ」

「はい。お約束ですからね。ある種、自然の摂理でございます」

「自然の摂理なのか」

「左様でございます」

「パンツが丸見えなのも摂理か?」

「至極当然かと」


そ、そうなのか。

それなら致し方ないな。

極めて遺憾だが、摂理だからな。うん。


「……教育係」

「なんでしょう?」

「主人公が頭からヒロインのスカートの中に突っ込んだぞ。おかしくないか?」

「おかしくありません」

「……本当にそうか?」

「ええ、露ほども」


これもまた、自然の摂理、か。

ボクは納得して目を瞑る。

ヒロインは三つ編み眼鏡だった。

少しばかり、興味が湧いた。


「三つ編み眼鏡の女を呼べ」

「かしこまりました」


そうして三つ編み眼鏡が召喚された。

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