第15話 『パジャマ交換』
「さて、よい子は寝る時間でございます」
何故か教育係がボクのベッドメイキングをして、先にベッドに潜り込む。
だが、それはいい。湯たんぽ代わりだ。
それとは別に、言いたいことがあった。
「寝る前に言いたいことがある」
「睦言ですか?お待ちに。今、録音を……」
「違う。そうじゃない」
何やらそわそわしている教育係を黙らせる。
そして、とある問題を指摘した。
「ボクは賭けに負けてパジャマを奪われた」
「はい。私が頂戴致しました」
「そのパジャマを何故お前が着ている?」
教育係は現在、ボクから奪ったシルクのパジャマを身に着けている。
手足の丈が合っていない。
それに、ボタンも上まで閉められない。
大きく胸元がはだけていた。
「あまり、見られると、その……」
「欲情しているんじゃない。呆れてるんだ」
「欲情して下さい」
「断る」
そんなやり取りをして、諦めた。
パジャマの奪還は不可能だ。
ボクは建設的な会話を模索する。
「お前のせいでパジャマがない」
「それは由々しき事態でございますね」
「ああ、極めて由々しき事態だ」
「提案があります」
「どうせロクでもないことだろう?」
「殿下の素肌を私が暖めます」
「ほら見ろ!やっぱりそうだ!!」
じゅるりと舌舐めずりする教育係。
悪寒を覚えて、ボクは断固拒否。
すると教育係は何かをボクに手渡した。
それは……教育係のパジャマだった。
「大変心苦しいことに、シルクではありませんが、着心地は保証致します」
「心苦しいならボクのパジャマを返せ」
「嫌でございます」
仕方なく、教育係のパジャマに袖を通す。
教育係の匂いがする。不思議な感覚。
思わず、鼻を押し付けたくなるような……
「嗅いで頂いても構いませんよ?」
教育係の意地悪な声で理性を取り戻す。
この変態と同じ穴の狢になってたまるか。
「ごほん。うむ……着心地は悪くない」
「大変よくお似合いですよ」
「ブカブカではないか」
「それが良いのではないですか」
ふむ。そういうものか。
ただ、何となく気恥ずかしくて言い返す。
「ピチピチも、悪くないぞ」
「お褒めに預かり、光栄です」
そうしてボクらは一緒に横になる。
教育係が寝かしつけるように髪を梳く。
ボクはどんどん眠りに落ちる。
「くふっ。殿下の匂いに包まれて、幸せです」
「その笑い方、どうにかならんのか?」
「興奮すると、つい」
そうか。それなら仕方ないか。
寝る前にもう一つ、言っておく。
「……お前の香りが、心地いい」
そうしてボクは眠りについた。
「言うだけ言って寝るなんて、ずるいです」
顔を真っ赤に染めた教育係。
寝ているボクはそれを見れない。
それはボクの知らない教育係の一面だった。




