第14話 『よいではないか、よいではないか』
「夕食までご馳走になって、なんとお礼を申し上げたら……感謝感激です!」
「いや、こちらこそ馳走になった」
「へっ?」
「いや、こちらのことだ。気にするな」
呼んでおいてすぐに帰すのも悪い気がしたのと、おでこをぶつけてしまった謝罪の意味も兼ねて、三つ編み眼鏡と夕食を共にした。
三つ編み眼鏡はかなり大食らいだった。
豊満なバストに比べウエストは細い。
栄養が胸に行ってるのは想像に難くない。
何にせよ、とても美味そうに飯を喰って、そして帰って行った。
彼女の胸をよく観察出来たボクも満腹だ。
よし、この流れでもう1人召喚してみるか。
「教育係」
「なんでしょう?」
「黒髪ロングを呼べ」
「かしこまりました」
ボクの見立てだと黒髪ロングは巨乳ではない。
だが、丁度良いサイズだったと記憶している。
これを機に確認しておこうと思ったのだ。
「それでは私も失礼します」
銀髪侍女がぺこりと頭を下げ、暇を告げる。
夕食を運び、片付けてくれた彼女。
礼を言っておくべきだろう。
「ありがとう。美味かった」
「……えっ?」
何故か驚かれた。
何かおかしなことを言っただろうか?
「あっ、すみません。びっくりして」
「何を驚いているんだ?」
「殿下にお礼を言って貰えるとは思わず……」
そう言って、侍女は感激した様子だ。
ボクは普段からそんなに愛想がなかったか?
考えみると、確かに無愛想だった。
そんなボクが礼を言えるようになった。
それは、認めたくないが、きっと……
「これからはなるべく礼を言う」
「あ、いや、催促している訳ではなくて……」
「いいんだ。ボクは鈍い。催促してくれ」
そう言って微笑むと、侍女の顔が赤くなる。
そんな彼女の様子に首を傾げる。
すると侍女はおもむろにスカートを捲り……
「はい。そこまででございます」
「あ、私ったら、つい……」
「あとで私が見てあげますからね」
「よ、よろしくおねがいしましゅ……」
また教育係が邪魔をした。
なんなんだこいつは。何の恨みがある。
ボクはギリギリ歯ぎしりして教育係を睨む。
去って行く侍女を見送った教育係。
ボクを振り向くとペロリと舌を出す。
その赤い舌が扇情的で、見惚れた。
惚けていると、教育係は扉の方を指し示す。
それに促されて扉を見ると黒髪ロングがいた。
「またお呼び頂き感謝に絶えません」
礼儀正しく、楚々とお辞儀をされた。
ボクは我に返って客を迎える。
「よく来てくれた」
「お呼びとあれば、いつ何時でも」
完璧な受け答え。
黒髪ロングは非の打ち所がない。
しかし、それ故、物足りない。
「楽にしろ。今からいくつか質問をする」
「なんなりと」
「胸のサイズを教えてくれ」
「はい?」
……おかしい。
さっきまでの完璧な受け答えはどうした?
さては原因不明の難聴だろうか。
不思議がるボクに教育係が耳打ちする。
「殿下、あくまでも、さりげなくです」
「……そうだったな。わかった」
前に呼び出した時と同じやり取り。
それでボクは冷静さを取り戻した。
「時に黒髪ロング」
「は、はい。なんでしょう?」
「着物の帯はキツくないか?」
「えっ?」
「そうか、キツいか。では緩めてやる」
「えっ?えっ?」
困惑する黒髪ロングの帯にさりげなく手を掛けようとして……
教育係に邪魔された。
「よいではないか!よいではないか!」
「あ〜れ〜」
教育係が帯を引っ張る。
黒髪ロングがクルクル回る。
ボクは傍観者。
そのまま黒髪ロングは目を回して退場した。
「ふぅ。いい汗をかきました」
「おい、教育係」
「如何しましたか?」
「何故ボクの邪魔をする」
「私は殿下の手足ですので」
だからいつからボクの手足に……
そう文句を言おうとして、諦めた。
どうせ言い負かされるのがオチだろう。
ボクの教育係は時々こうして意地悪だ。




