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殿下の教育係  作者: 戦乃作為
第1章 【軟禁生活と日常】
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第13話 『大と小の一長一短』

「授業を始めます」

「始まるのか」


また唐突に授業が開始した。

思いつきでやってるとしか思えない。

教育係の眼は爛々と輝いている。

漆黒の瞳がギラギラしていて少し怖い。


「最初に殿下にお尋ねします」

「なんだ?」

「胸が小さい女性と胸が慎ましい女性、どちらが殿下の好みですか?」


ふむ。これは難問だ。

胸が小さい女性はその名の通りだ。

胸が慎ましい女性とは胸が小さい女性だろう。


つまり、どちらを選んでも貧乳好き。

どうやらボクに選択肢はないようだ。


「答える必要があるのか?」

「ええ。しっかりとお認めになって下さい」

「認めるも何もボクは貧乳なんて……」

「お黙りなさい」


ひぇっ。久しぶりに怒られた。

教育係が激おこぷんぷん丸だった。


「偉い人は言いました」

「なんだいきなり」

「貧乳はステータス。希少価値だと」

「言ってて恥ずかしくないか?」

「黙りなさい」


ヤバい。こいつは相当キレてる。

教育係は完全に切れたナイフだった。


「殿下はちっぱいが好きなのです」

「やめろ。洗脳しようとするな」

「ちっぱいのどこがいけないんですかっ!?」

「とにかく、落ち着け」


何故ここまで貧乳を推すのだろう。

それはともかくとして、検証せねば。


「ともあれ、比較対象が必要だな」

「比較、対象……でございますか?」

「ああ。三つ編み眼鏡を呼べ」

「何故、三つ編み眼鏡を……?」

「ボクの見立てでは、あれは相当だ」


一度召喚した際、ボクは目撃した。

床に転んだ三つ編み眼鏡の豊満な胸を。

比較対象にはもってこいだろう。


「わかりました。受けて立ちましょう」

「何故貴様が受けて立つ気満々なのだ?」

「私は殿下の教育係でございます」

「だから、どうした」

「殿下が道を踏み外さぬよう、身を呈してでも真っ当な教育を施す義務があります」

「お前が一番道を踏み外しているだろう」


いちいち突っ込むのが面倒になってきた。

しかし、突っ込まなければ何処に何を突っ込まれるかわからないので、仕方ない。


軽口を叩き合って、三つ編み眼鏡を待つ。

しかし、なかなか現れない。

一体、どうしたのだろうか?


不審に思っていると教育係が動いた。


「何奴っ!?」


いきなり部屋のドアを蹴破る。

なんだなんだ。癇癪か?

びっくりして目を丸くしていると……


「あ、怪しいものじゃありませぇんっ!」


三つ編み眼鏡が食パンを咥えて立っていた。

どういう訳かおでこが赤い。


恐らくドアの前に立っていたのだろう。

その気配に気づいた教育係が蹴破ったのだ。

そしておでこをぶつけた、と。


「教育係、とりあえず謝れ」

「くっ……申し訳、ありません」

「だ、大丈夫です!驚きましたけど……」


ひとまず、これで禍根は残るまい。

ひと段落したのを見計らい、問う。


「三つ編み眼鏡」

「は、はいっ!」

「何故ドアの前に立っていた?」

「ち、遅刻しようと思って……」

「は?」


なんだこいつ舐めてんのか?

三つ編み眼鏡の世迷言に眉を潜める。

すると教育係が耳打ちをしてきた。


「恐らく、前回の召喚の際に、殿下を失望させたことを気に病んでの行動かと」

「前回の召喚……?」


それで思い出した。

あの時ボクは自然の摂理を観測しようとした。

しかし、三つ編み眼鏡は遅刻をしなかった。

だから、今日は遅刻しようとしたのだ。


そこまで理解して、納得する。

そして、びくびく身を震わせる三つ編み眼鏡の労をねぎらうことにした。


「三つ編み眼鏡」

「は、はいっ!」

「ボクの為に良くやってくれた」

「え、えへへっ」

「だが、これからは空気を読め。いいな?」

「肝に銘じておきます!!」


そう言って三つ編み眼鏡は平伏した。

それに伴い、たわわな胸が床につく。

うむ。やはりボクの目に狂いはなかった。


「くっ……これ程とは思いませんでした」


何故か教育係が悔しそうだ。

仕方なく、助け舟を出してやる。


「時に三つ編み眼鏡」

「はい。なんでしょう?」

「お前はどこまで開脚出来る?」

「開脚ですか?私、身体硬くて……」

「ふむ。その点は、教育係の勝ちか」


ボクがそう言うと、教育係は嬉しそうに口をもにゅもにゅさせて微笑んだ。


まあ、それぞれ一長一短だろう。

そう結論付けたボクに、教育係が囁く。


「やっぱり殿下は貧乳好きですね?」


どうしてそうなるのか……


ボクは溜息を吐いて、否定はしなかった。

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