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殿下の教育係  作者: 戦乃作為
第1章 【軟禁生活と日常】
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第10話 『初めてのスカート』 その2

「とても良くお似合いですよ」

「黙れ。ズボンを返せ」

「しばらく女心を学んで下さいませ」


そう言って、教育係はボクの手の届かない高いところにズボンを隠した。

年上だけあって、教育係は背が高い。

足も長いし、手も長い。


ボクは渋々スカートを受け入れた。

受け入れざるを得なかった。


「さあ、読書を続けましょう」


そう言って教育係はポンポンと膝を打つ。

意図がわからず、怪訝な視線を送る。

するとこいつはとんでもないことをほざいた。


「私が読み聞かせます。膝の上で、ね」

「な、何を馬鹿なことを……」

「殿下を慮ってのことです」

「何が慮るだ!?ふざけるな!!」


これには流石のボクも怒る。

ボクはこいつのオモチャじゃない。

だけど、教育係は頭が良い奴だった。


「でもほら……椅子、冷たいですよ?」


ペタペタ椅子を触って冷たいアピール。

冷たい椅子にスカートで座りたくない。

仕方なく、ボクは膝に乗った。


「くふっ。殿下のお尻柔らかいですね」

「へ、変な笑い方をするなっ!?」


背後から耳元でおかしな囁きをされた。

ボクは背筋がぞぞっとして身をよじる。

教育係はしっかり抱っこして離さない。

頭がクラクラした。


「それじゃ、読んで差し上げますね」

「……もう、好きにしろ」

「あ、良いですね。今の台詞素敵です」

「うるさい馬鹿っ!!」


結局小一時間以上、ボクは拘束された。

漫画を読み終え、教育係に命じる。


「読み終わったなら早くズボン返せ」

「返したいのは山々なのですが……」

「なんだよまだ意地悪するつもりか?」

「実は少々高過ぎるところに置いてしまいまして、手が届きません……えへっ」

「えへっ、じゃないだろう!?」


信じられない。教育係は最悪だ。

自分でも届かないところに置くとは。

しかし、今は叱るのは後回しだ。

問題の解決が先決である。


「私に考えがあります」

「どうせロクでもないことだろう」

「肩車をすればよろしいかと」

「ほら見ろ!やっぱりだ!!」


ロクでもない教育係の提案。

しかし、他に選択肢がなかった。


「ぜ、絶対余計なことをするなよっ!?」

「殿下の太ももに挟まれて、幸せです」


教育係の妄言は無視。集中する。

あとちょっと、あと少しで届く。

それなのに、教育係が邪魔をした。


「はむっ!」

「ぎゃあー!?」


太ももの内側を噛まれ、悶絶する。

噛み付いて離さない教育係を殴る。


この!変態!教育係め!いい加減にしろ!


「では、私が上ということで」

「初めからそうしろっ!!」


結局、ボクが教育係を肩車してやった。

どうしてこのボクが何故こんな目に。

しかしそんな文句は口に出来ない。


首に伝わる教育係の体温。そして香り。

つい赤面して、そしてがっかりする。


教育係はスカートを穿いてない。

これでは仕返しができない。


ボクはこの日、世界の不公平さを呪った。

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