監禁......
「ただいま」
彼女を驚かさないように、ゆっくりとドアを開ける。
「......」
「なんだよ、まだ怒ってるのかよ?」
彼女は俺に無理やり付けられた首輪を気にしながら、恨めしそうな目でこっちを見る。
彼女に近づき首輪にそっと触れる。
「これは、俺と君にとって、とても大事な物だから、外す事は許さない」強く、優しい口調で彼女を諭す。
彼女と出会ったのは今から二週間前だ。街で彼女を見て以来、俺の頭から彼女は離れなかった。何日か丹念に下見をして、今日こそ必ず連れて帰ると固く心に決めたのが二日前だ。
覚悟をすれば後は簡単だった、呆気なく彼女は俺の部屋に連れて来られ、今に至る。
「腹が減っているんだろ、だから、そんなに苛ついているんだ」
彼女はここに来てからまともに食事をしていない。俺を警戒しているのだろうか?
食べ物を皿に移して、彼女の側に置いてやる。空腹に勝てない様でこちらを警戒しつつ匂いを嗅いでいる。
「大丈夫、毒なんて入ってない」
余程お腹が空いていたのだろう、彼女は一口かじると、むしゃぶりつく様に、皿に顔をうずめ食事をはじめた。
「そうだ、今日、良いものを買ってきたよ」
仕事用のバッグからそれを取り出す。
棒状のプラスティック製で長さ30センチ、その先端に長いゴムが取り付けてある。
試しにひとふりしてみる、ビュオッと空気を切り裂く音に彼女が食事を止め、驚いた顔でこちらに振り向く。視線は俺の手にあるそれを凝視している。
「うん、なかなか良さそうだ。後で気が済むまでこいつで遊んでやるよ。今はゆっくり食事を楽しんでいてくれ、俺はシャワーを浴びてくる」
濡れた髪をタオルで拭きながら部屋に入る。食事を終えた彼女は窓の外をぼーっと眺めている。
「出たいか? 」俺は絶対に出さないが、意地悪な質問を彼女にしてみる。
「気持ちは分かるが、外は危険がいっぱいだ。事故にあうかもしれない、頭のオカシイ奴だっているし、そんな奴らに君が捕まって乱暴されたり、殺されでもしたら俺は生きていけない」
先日まで他人だった男がこんな話をしてる。彼女は今どう思っているのだろう。
そう言えば、ここに連れて来てから彼女の声をまだ聞いていないことに気付く。
「とにかく、君と俺は最後までここで生きていくんだ。分かったね」
すると彼女が一言。
「ニャアー」と鳴き、毛繕いをはじめた。