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久しぶりに

 「こうやって二人で出かけるの久しぶりだね」

 君の車の助手席に座りながらわたしは笑う。

 「そうだな」

 「海に行くのも久しぶり」

 高速道路を走っているので、窓の外の景色は変わらない。

 「暇なら寝ててもいいよ」

 わたしと付き合いが長い君はわたしのことをよくわかっていて、そんなことを言ってくけどせっかく君の車に乗って出かけているのだから起きていたい。

 「あとどれぐらい?」

 「んー、このままいけば三十分ぐらいかな」

 「りょーかい」

 海に行こうと言ったのはわたしだ。冬だけど海が見たくなった。夏は人が多いと君が嫌がって一緒に行けず冬になった。

 「来年は夏に海を行こうよ」

 「嫌。人多いし」

 「たまには彼女の言う事聞いてよ」

 「今聞いてる」

 「そうだけど……」

 君はそういうのが好きそうな格好をしているのに、人ごみが嫌いで騒がしいところが嫌いだ。

 君はドリンクホルダーに置いているコーヒーに口をつける。私は甘いものが好きで、コーヒーは牛乳か砂糖を入れないと飲めないので無糖を飲む君はやっぱり大人だ。

 わたしより二つ年上でお酒も飲むし、煙草も吸う。体によくないからだばこはやめてほしいと言ってもやめないので諦めた。

 でもたばこを吸う姿もお酒を飲む姿もかっこいい。

 「早く二十歳になりたいなー。あと一ヶ月ちょっとかー」

 「飲めば」

 「だめだよ、二十歳になってないもん」

 「オレは大学に入ったら飲んだぞ」

 「うわー、悪い」

 「十八で飲むのと二十で飲むことの違いはないだろう」

 「そうだけど」

 なんとなくいけない気がしてわたしは飲むことができない。

 「誕生日は一緒に飲もう」

 「うん。嬉しいー」

 高速道路はそのまま空いていて、すんなりと一般道路に下りることができた。

 窓の外の景色はとても田舎で、山と少しの家と海が見えた。空が少しずつ茜色に染まりつつある。

 「夕陽見えるかなー」

 「どうだろう。ぎりぎりかな」

 「あとどれぐらい?」

 「二十分ぐらい?」

 夕陽見れたら嬉しいな。海で夕陽が見れるって最高だな。

 窓を開ければ冷たい風が入ってきて、わたしは身震いした。キン、と体に刺さる。

 「寒い……」

 「冬って感じだよね」

 冬の冷たい空気は嫌いじゃない。空気が澄んで気持ちがいい。

 「着いた」

 「おお、着いたー!」

 駐車場に車を停めて、外に出る。やっぱり風が体に刺さるような寒さだ。

 わたしはスカートで来てしまったので、足元がスースーと冷える。

 「寒さ大丈夫?」

 「んー、寒いけど大丈夫」 

 「手」

 差し出された手に手を重ねる。相変わらず君の手は冷たくてむしろわたしを寒くさせたけど、離す気にはなれない。ぎゅって握り締めたらわたしの体温が移るかな。そうなればいい。

 そのまま二人で浜辺へ向かう。

 「あ、夕陽見れるよ」

 「よかったな」

 寒くて仕方がないけれど、隣に君がいるからなんとなく温かい。

 無言でも平気っていいなって思う。君は普段からあまり話さないほうでわたしが話しかけない限り基本的に話さない。それでも辛くない。

 「綺麗……」 

 浜辺に着いた時には、ぎりぎりで太陽が少しだけ見えた。でも周りが茜色に綺麗に染まっていて海にそれが反射して言葉に表せないぐらい綺麗だ。

 「本当だ、綺麗」

 二人で太陽が完全に沈むまで見とれてしまった。

 今この瞬間話してしまうことはもったいない気がしてわたしはずっと海を見つめ続けた。寒さも忘れて私は海を見続けた。

 君を説得して二時間ぐらい車に乗って海に来てよかった。最初は夕陽が見れるとは思っていなかったけど。

 「綺麗だったね」

 「うん」

 少しだけ浜辺を歩いてわたし達は車に戻る。駐車場にある自販機でココアを買ってもらった。君はいつも通り無糖のコーヒーだ。

 車に乗ってココアを飲めばぽかぽかと体が温かくなった。甘くて少しほっとする。

 「あー、ココア甘いー」

 「味覚がお子様」

 「うるさいなー」

 急に唇を塞がれた。触れたぐらいの軽いキス。

 「なぜ無言」

 「だって急だったから」

 「行きますか」

 「うん、れっつごー……」

 君はそんなことが多い。だいたい突然キスされる。少し慣れたとはいえびっくりする。

 「家帰る?」

 「んー、どっちがいい」

 「どっちでもいいよ」

 「うわー、そっけない」

 わたしは一人暮らしで、君も一人暮らしだから誰にも迷惑はかけない。

 「じゃあ泊まってほしい」

 「りょーかい。泊まる」

 そのまま君の家に行って、泊まった。いつも思うけど君の部屋が綺麗過ぎて少し不服だ。

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