時代8 縁日の避暑地
その日の天気はお祭日和だった。
夏祭りと梅雨の中間の縁日。
オリエンテーリングや社会科見学の後の催しで、夜店市だと物騒なのか日中にバザーや、フリーマーケットを兼ね揃えた一大イベントだ。
日中の間は、小学生が多い学校の屋外授業の息抜きイベント会場にされて、渡真利が丘小学校の6学年は、全クラス参加なので、客層整理もままならなかった。
『村渡悠良、小学6年生。小学生最後の一大イベントの昼間縁日に参加しました!!』
悠良班の女子達が屋台制覇を達成しようと足を運ぶのに必死になった。
夕刻に近い、そろそろ集合時間に差し掛かる頃。
雨脚は小粒だが、ぱらついた雨が一滴一滴、祭会場の地面へと叩きつけた。
「雨じゃーん。もう、サイアク~!!」
村渡班の田沼が困り果てた。
続いて班の女子、羽田が騒ぎだした。
「服、薄着だから雨で透けると男子の目がヤバイし、どっか避難しよ!!」
班の女子、山代が避暑地の雨宿りに最適のスポットを知ってると言ってきて、全員がそのスポットへと駆けつけた。
「あ~ん!! 先客いるし~」
悠良がそうやって諦めた……と思いきや、
「やあ!!」
「悠良さんのお兄さん!!」
田沼が声を大にして絶叫した。
避暑地で雨宿りしていたのは、悠良の兄の友達『春河玲夜』だ。
田沼はこの間の勉強会に会った架空上の兄像……寿康と勘違いしたので、そのまま避暑地にいるカレに一目惚れしたという。
「ええ!! この方がウワサの悠良さんのお兄さん!! イケメンじゃない!!」
甘々の絶叫声の女子群。『玲夜』はかなりの人気ぶりで頭が上がらなかった。
「あっ!! 雨もう止んだみたいよ。集合時間過ぎてるし、早く現地へ駆け込むわよ!!」
班員率いる悠良を先頭に、集合の現地まで駆け抜けていった。
「じゃ『お兄ちゃん』、またウチで」
手を振りだす悠良が雨上がりの虹よりも輝いて見えた。
「悠良、またな」
シナリオ抜きのアドリブでここまで芝居できた高校生男子。
悠良たちを見送ったあと、柔道大会会場に向かうワンボックスカーがやって来た。
玲夜は、それに乗って、大会に臨んでいった。
『村渡悠良、小学6年生。今日は縁日近くの避暑地で玲夜さんと雨宿りをしました!!』