時代9 碧灯海岸にて
渡真利高野台の峠を越えると太平洋が見えてくる。
碧灯という海水浴場の海岸だ。
一台のバンにカヤコと春河玲夜を連れて家族連れの海水浴に出掛けた。
7月20日を過ぎた夏休みのクールスポット。この舞台が彼女たち小学生最後の名イベントになるのであった。
悠良がカヤコに話しかけた。
「こんなとこでもスク水はNGでしょう? カヤコさん」
「あたしのマイブームよ。小学生最後のファッションの一つなの!!」
「あたしは……こんなこっ恥ずかしい白ワンピのだけど、もう似合わないよねぇ」
「いいんや。よく似合ってるから、『寿康お兄さん』に見せてやんなさい(ムフフフフ……)」
「なんで、お兄ちゃんに?」
「なんででしょうね(ムフフフフ……)」
遠くの方から大きな声がした。 実の兄の寿康だった。
「あっ、待って……あたし達も行くよ~!!」
悠良たちも一緒に加わり、一大スポーツ、ビーチバレーに挑んでいった。
カヤコは電波系の通信力でホンモノの玲夜と繋がっては話し合った。
わざとらしくカヤコ寿康ペア、悠良玲夜ペアに組ませておいた。そのほうがビーチバレーを楽しめるからだ。
「寿康さんのお友だち……ど下手!!」
カヤコが辛口を叩いた。ホンモノの玲夜のスパイクが本気過ぎてか、ホンモノの寿康は焦りだした。
ホンモノの寿康のサーブで悠良がレシーブミスした。
「キャッ。おに……いや、レイヤさん、手加減して~」
「大丈夫かい?」
手を差しのべるホンモノの玲夜。ドギマギした悠良。顔を赤らめて正面を見るのも出来ずにいた。
「さあ、スイカ用意したから、みんなビーチバレー中断しなさい」
悠良母の計らいで、スイカを食べにいった全員。
スプーン無しでそのまま等分に切られたそれを貪る悠良だった。
「ほらほら、スイカの種、ほっぺたにつけちゃって……取ってやるからじっとしてろ!!」
ホンモノの玲夜は実の兄を装って兄妹の関係を演じきった。
悠良は、暑さのせいか逆上せるように、あたふたした。
「ケホッ、ケホッ……」
吹き込んで蒸せた悠良。
両親と実の兄の寿康が心配する。
「おいおい、あわてて食べるからだろ!!」
「このくらい……大丈夫~!!」
一夏の名イベントは、春河玲夜の参加によって、思い出に残る最高の宝物となった。今日はそんな良い一日であった。
『村渡悠良、小学6年生。玲夜さんと海水浴イベントで盛り上がりました!!』
12歳と紹介する箇所がありましたがその部分を小学6年生と修正しました。




