強制力の強い恐ろしい世界\(^o^)/
悪役令嬢じゃなくてヒロインに挑戦してみました。
ちょっと長いですが楽しんでいただけると幸いです。
帝立魔法学園
その赤いレンガでできた建物に入ろうと立派な門を緊張しながらくぐった瞬間、
私は全てを思い出した。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!恋愛じだい"い"い"い"い"ぃぃぃ!!もでだいぃぃぃ!!」
「じゃあこれやれば?モテるぜ??離してくれないぜ?」
「あん?乙女ゲーム??………やるわ!モテるは!!…………ギャァァァァァァァクソゲェェェェェダァァァァァァ…!」
これは私の前世で友達と悪ふざけでプレイした乙女ゲームの世界なのだと。
「あらま……」
私はその事にびっくりしすぎて校門の前で立ちつくした。
柔らかい風が桜を散らして行く。
……今日は良い天気だなぁ。
「おい!お前道の邪魔だろう!!とっとと歩け!!」
私が通行の邪魔をしていたからか後ろから怒鳴られた。
……少し現実逃避していたようだ。
振り返ると、攻略対象の俺様生徒会長様(この国の皇太子)が迷惑そうに仁王立ちしていた。
彼の美しい金髪がキラキラと輝いている。
あれ?このシーンどっかで見たことが……
「ん……?お前まさか噂の平民上がりの特待生じゃないか?」
「え"…………?」
何を言ってるんだろう??
平民上がりの特待生???
何処かで聞いた事のある設定だ……。
私は鞄から手鏡を取り出した。
ちょっと自分の外見チェック。
嫌な予感がするのだ。
ふわふわの淡い色の金髪……
大きな青い目……
そしてピンク色の可愛らしい唇……
うん………
典型的なゆるふわな可愛らしい癒し系の美少女だ。
私ヒロインですわ………。
説明するとこの世界はさっきも言ったように私が前世でプレイした乙女ゲーム、『恋して貴族様❤︎〜もう離れられない〜』という題名からしてクソゲー臭のするゲームの世界なのだ。
内容は平民の主人公が平民では珍しい魔力持ちとして特待生となって貴族の子女達が通う帝立魔法学園に入り、そこにいるイケメン攻略対象者達と恋愛をしながら貴族と平民との間にある根深い差別と闘い、最後には出生の秘密などの謎が解かれるというありきたりなものだ。
ぶっちゃけ言おう、クソつまらない。
物語最大の謎である出生の秘密も最初にヒロインの髪の色と皇太子の髪の色がかぶっていて現皇帝の弟の娘が行方不明という情報のせいであ…察し……だし、差別の描写も教室に入って自分の机に座ろうとした瞬間に魔法の炎で机を焼かれ、貴族令嬢から「お前の席ねぇからぁ!!」と言われるだけなのだ。(しかもこの令嬢の声は攻略対象の使い回しであり、女とは思えないその野太い声にネットのユーザーの腹筋は崩壊した。)
しまいにはヒロインと攻略対象者達がたまらなくウザいというオプション付き。
まずヒロインだがすごく頭が軽そうなのだ。
どう軽そうかと言うと……
「わたしゎ、ルナ・ミリアともうしますぅ、、、平民だけどぉ仲良くしてくれると嬉しいなぁ☆」
言動だ。とにかくウザい、堪らなくウザい。何だよわたしゎ、、って……。
そりゃ虐められるわ……。
そして攻略対象者もとにかくウザい。
選択式なので攻略自体はとても簡単なのだがかなり愛が重い。
とにかく主人公と一緒に居たがるために四六時中ずっと側にいるのだ。セーブ画面にまで出てきた時はもはやネタと化していた。
題名の通りのもう離れられない…だった。
世の乙女ゲーユーザーは攻略する前にもう攻略されている新感覚ゲームと白目を剥いた。
わたしもその一人だ。
そんな世界に私は転生してしまったのである。
「おい!黙ってないで何か言ったらどうなんだ!!」
生徒会長様の怒鳴り声で私は現実へ返って来た。
どうやら私が返事をしないので怒っているようだ。
これはいけない、目の前にいるのは攻略する前に攻略されているウザさMAX男だが曲がりなりにも皇太子、無下に扱えば私は捕まってしまう、ちゃんと返事をしなければ!
……もちろん普通の口調で
「これは申し訳ありませんでした。学校があまりにも立派で驚いてしまったんです」
「なるほど……。まぁ平民にはそう見えるのだろうな」
イラッとしたが黙っとく。
「ええまぁ……。それでは失礼します」
「いやちょっと待て!お前、生徒会に入らないか?」
「嫌です。」
はいフラグ折ったー!
誰がクソゲーの攻略対象者達と付き合うかっつーの!!てか簡単に生徒会に入れんな、選挙で選べや!!
私は足早にその場から立ち去った。
「そうか!入ってくれるのか!!」
はい?
私が振り返ると生徒会長様は"空中に向かって"話しかけていた。
もう一度言おう。
"空中に向かって"だ。
「あの人頭大丈夫なの……?」
「え……あれ皇太子じゃん……」
「マジで?この国終わったな……」
周りで生徒達がざわめいている。
それに全く気づかずに空中に向かって話し続ける生徒会長様。
「お前のような平民こそこの学校を変えられると思うんだ!!」
「俺のサポートしろ!!」
「……まぁ、お前がどうしてもと言うなら手伝ってやらん事も……」
ヤバい。
生徒会長様の頭がお釈迦になってる!?
……この世界もしかしたら乙女ゲームのシナリオ通りにする力がかなり強い?
強制力が働いてるってわけ?
……教室に入ったら机を燃やされるんだろうか。
結論から言うと机は燃やされなかった。てかみんな超優しい。差別とか全然無かった。
逆に攻略対象者が「君は平民だから知らないと思うけど……」とか言った瞬間に「お前そんな事言って恥ずかしくないの?」って注意してくれるぐらいだった。
そして朗報、ライバルキャラ、というか悪役令嬢も転生者だった。
悪役令嬢のサティは生徒会長様と婚約しているはずだったんだけど婚約する前にここが乙女ゲームの世界で自分がヒロインを虐めた罰で婚約破棄された挙句、娼館に売られる事を思い出し、婚約しなかったらしい。
だがやはり世界の強制力があまりにも強く、何故か生徒会長様は自分とサティは婚約していると思い込み定期的にサティの屋敷に来ては、「ふん、俺はお前の事を愛していない。これは政略なのだ。」と嫌味を言って帰っていくのだという。
「最初の頃は意味がわからなくて怖かったですわ。」
サティは苦笑いをしながら青筋を立て拳をバキバキと鳴らして言った。
すごく、、、男らしいです、、、
どうやらこの強すぎる強制力は攻略対象者にしか働いていないらしい。
そしてクソゲー要素の恐怖!くっついてくる攻略対象者の所為で強制的にイベントが発生してしまう。
うえぇぇぇ
〜腹黒副会長(宰相の息子)の場合〜
「へぇ……、君が新しい生徒会役員ですか?普通の子ですね」
「いきなり何なの?てか生徒会入ってねぇよ」
「まぁせいぜい足りない頭で頑張ってくださいね」
「話聞いてる?喧嘩売ってんの?」
〜チャラ男(侯爵家の息子)の場合〜
「君が新しく生徒会に入ったルナちゃん?カッワイー!今度遊ぼうよ〜」
「ナンパは帰れ、そして私は生徒会に入っていない」
「おやおや〜何で俯いてるの?可愛い顔をもっと見せてよ〜」
「眼科行けや」
ワンコ系男(騎士団長の息子)の場合〜
「ワンワンワンワンワン!!」
「犬かよ」
「ワンワンワンワンワン!!」
「これガチでマッチョなイケメンが四つん這いになって鳴いてるんだぜ?笑えるだろ?どんなプレイだよ」
双子のばあry
と、このようにゲーム内でも無残だった攻略対象者達は現実世界では変わり果てた姿を晒していた。
この学校の生徒達はいつも絡まれる私に同情の目を向けている。
最近では知らない女生徒がお菓子までくれる始末だ。
泣ける。
このようにしてイベントが強制的に進んでしまった結果、最後のイベントが始まった。乙女ゲームの中での最大の修羅場、悪役令嬢断罪イベントだ。
「公爵令嬢サティ・ミレバール!お前をルナ・ミリアを虐めた罪によって俺との婚約を破棄し、爵位を剥奪する!そして俺の新しい婚約者をこのルナ・ミリアとする!!」
「私は虐められてねぇしそもそもサティ様とお前婚約してねぇじゃん!そして私はお前と恋仲じゃねぇよ!!頭おかしいんじゃねぇの!?」
生徒会超様がそう全校生徒の前で宣言した瞬間私は絶叫した。
生徒達もこいつ何言ってんの?とドン引きしている。
サティと目を合わせると苦笑い。
「会超様の言う通りです!ルナを虐めた罰、その身に味わってくださいね?」
にっこり笑う腹黒副会長。
「僕に真実の愛を教えてくれたルナちゃんのためにね……」
真面目な顔のチャラ男。
「ルナは生徒である前に俺の大事な人だ……」
職務放棄の生徒会顧問。
「ルナちゃんを」「虐めるなんて」
「「僕たちが許さない!!」」
シンクロ率200%の双子。
「ワンワンワン!!ワンワンワンワン!!」
犬。
そしてそんな生徒会集団を見つめる
「あいつらやばいよ……」
「てか生徒総会ってこういう事宣言する場所だっけ……?」
「引くんだけど……」
ドン引きの生徒諸君。
カオス\(^o^)/
この言葉につきる状況であった。
もういい……
こんな状況誰も望まない……。
私はそんな意味を込めてサティを見つめた。
サティは私の視線に気づき、頷いくと不敵に笑った。
「サティ!お前はルナの下着を……」
「すみません殿下、ここに皇帝陛下からの勅命の書がありますので読ませていただきますね。」
「しかもお前はギャグボールを……」
「皇帝陛下からです。『生徒会の諸君、お前ら全員病院行けや』だそうです。」
「そんなお前は俺の婚約者に……」
「ダメだこりゃ」
とうとうサティの令嬢口調も消えてしまった。
その後衛兵によって攻略対象者達は病院へ連れて行かれてしまった。その中には現騎士団長もいたけど涙目になってた。息子が犬になってジャレついてたもんな、同情するわ。
放課後、サティが私の所に来た。
「終わりましたわね…」
「うん、すっごい疲れた……。」
「貴女が一番被害にあっていましたもんね。」
「うん……。」
「……ところであのお話受けてくれるのかしら?」
ドキッ……
私の心臓が跳ねた。
「ん?何だっけー?知らないわー(棒」
「嘘おっしゃい」
あ"あ"ぁぁ……。
もう逃げられないかぁ……。
やっぱこの世界………
「はぁ……あの話でしょ?【婚約者になってくれ】っていう」
「そうですわ。」
そい言ってサティ……公爵令息サテリーク・ミレバールは微笑んだ。
実はあのクソゲー、斬新な所が一つだけあった。
まさかのライバルキャラがおネェなのだ。
つまりサティは女装はしているがれっきとした男!
そして、
隠れ攻略キャラでもある。
……攻略方法は至極簡単で他のキャラの好感度を上げなければいいのだ。
つまり私がやっていた事である。
数日前にサティから婚約を提案された時からもしかしてサティルートに入っているんじゃないかって疑っていたのだがまさか本当にそうなるとは、、、
「転生者のお前なら俺が心も体も完全に男だって事知ってるだろ?」
そう言ってサティは笑う。
女物の服を着ていようとその雰囲気は完全に男。
好みだ。
「で?返事は??」
サティは私の髪を一房すくう。
こいつ絶対に私の返事わかってるわ。
「もちろん受けるに決まってんでしょ!!悪役令嬢ルート、選択してやろうじゃない!!」
私は胸を張って答える。
ヒロインの台詞通りではないけど、多分ヒロインではなく"私"として一番合っている返事だから。
「……色気のねぇ返事」
サティは呆れた顔をしてこちらに顔を近づけた。
徐々に近づくサティの顔を見つめながら思うことは、
やっぱりこの世界、強制力強すぎるわー。
ということだった。
……今度ゎ抗わないけどね☆
と、最後に無理矢理恋愛描写を入れてしまいました。(・・;)
でもやっぱりハッピーエンドが一番だと思うんですよね(^_^)
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