②友達
ある日、給食を残す子が多いと神崎先生が言い出しました。
帰りの時間です。
みんな早く帰りたいのに、神崎先生は難しい顔をして、みんなを見ています。
神崎先生は、今年、先生になったばかりの新米さんです。何をするのにも一生懸命で、いろんなことをみんなに提案します。
毎月、学級ソングを決め、帰りの時間に歌うことにしたのもその一つ。
神崎先生のオルガンに合わせて、みんなで歌うのですが、和馬は口をパクパクさせるだけで歌いません。それを神崎先生に言いつけたのは、康太です。
神崎先生に怒らえた和馬は泣きたい気分でしたが、我慢我慢です。
”カランコエプワフンワカフンワリプーワプワ”
シーンと静まりかえった教室で、話し合いは続けられていました。
興味がない和馬は、外を眺めています。
康太は早くサッカーがしたくて、落ち着きがありません。
誰もが、早く良い意見をださないかなとこっそり、様子を伺っています。
「好き嫌いは良くないので、少し頑張った方がいいと思います」
そう言ったのは、知美です。
「でもどうしても食べられない物だってあるわ」
美奈代が言い返しました。
「私も、アレルギー持っているし」
恵子が言うと、それからは教室にいろんな意見が飛び交い、神崎先生がまとめました。
アレルギーの子は、絶対に食べてはいけない。どうしてかと言う事を説明してから、食べずに嫌いと言っている子だけは、一口だけでもがんばってみる。ずっとは難しいので、一週間だけやってみることに決まり、やっとさよならです。
克己と康太が一目散に、教室を出て行きました。
和馬も背中を丸めて教室を出て行きます。
「かず君、バーイ」
大きな声で呼び止められた和馬、驚いて振り返ります。
明日歩に大袈裟なくらい手を振られ、思わず和馬の顔がほころんでしまいます。
誰にも相手にされていない和馬でしたが、明日歩だけは違いました。
朝、教室に入って行くと、決まって、「イエ~」と言ってハイタッチをして来ます。
最初の内は無理やりでしたが、今では自分で手を上げています。
でもそれだけです。
今だって笑って見せるだけで、教室を出てしまったのです。
そんな和馬のことを、明日歩は怒ったりしません。
「じゃあ明日」と言って、また手を振るのです。