⑪約束
夏休み最初の日曜日、明日歩の家に、和馬とお母さんがやって来ました。
引っ越しの挨拶に来たのです。
和馬と明日歩は公園で遊んでくると言って、走って行ってしまいました。康太や克己たちと、そこで合流することになっています。
最後に遊ぶ約束をしてあったのです。
和馬のお母さんは、明日歩の父親にお礼してもしきれないと言って、涙を浮かべます。
七夕の日、和馬の話を聞けるように、電話をつなげておいてあげたのです。
和馬には、弟なんていません。
お母さんのお腹にいる時に、死んでしまったのです。
ちゃんと説明をしたつもりだったのですが、寂しさを紛らわすために、自分で話しを変えてしまったのでしょう。
もう少し、和馬といる時間を増やせるように、母親は自分の親元へ戻ることを決めたのです。
折角、友達が出来たのにと言って、和馬にはだいぶ泣かれてしまったと話す母親に、明日歩の父親は、大丈夫ですよと言ってあげました。
和馬には、魔法の言葉があります。母さんを守りたいという意志があります。
そして二人して、公園へ子どもたちを迎えに行きました。
汗だくになって、遊んでいる子供たちへ声を掛けました。
アイスを配り、みんなで食べてお別れです。
明日の朝いちばんの新幹線で、二人は引越しです。
女子たちは、目に涙を浮かべて用意してきたお別れの品々を渡し、男子はふざけながらですが、ぶっきら棒に思い思いのものを渡して行きます。
和馬の目にいっぱいに涙です。
明日歩の父親の方を見た和馬が、ニッと歯を見せました。
和馬からのお別れのプレゼントは歌です。
とても小さな声でしたが、クラスでみんなと一緒に歌った歌です。
大合唱になったビリーブが、夏空に響き渡って、さっきまでふざけていた男の子たちの目にも、涙です。
歌い終わった和馬は、ニッと笑って、とっておきのあの魔法の言葉をみんなに教えてあげました。
「カランコエプワフンワカフンワリプーワプワ」
この言葉があれば大丈夫。勇気100倍です。
「サヨナラサンカクまた来てシカク、カンカラコエクエプワフンワカフンワリプーワプワ。畜生、忘れんじゃねーぞ。絶対にまた会うんだからな」
康太が叫びました。
和馬はもう一人ぼっちなんかじゃありません。
赤く染まった空の下、また会う約束です。
涙を拭って、和馬もそれに答えます。
「カンカラコエクエフンワカフンワリプーワプワ」
今日からはみんなと繋ぐ、大切な魔法の言葉。
「カンカラコエクエフンワカフンワリプーワプワ。また会おうね」
いつまでもいつまでも、和馬はみんなに大きく手を振り続けたのでした。
(おわり)
つたない文にお付き合いいただきありがとうございます。
是非、本編を読んでない方はそちらも一度読んでみてください。
大好きなビリーヴと歩親子を交えながらこの物語が書けて、本当にうれしく思っている、自己満足野郎ですいません。
また機会がありましたら、この親子を題材に書きたいと目論んでいます。
いつになるか分かりませんが、その時はまたよろしくお願いします。




