①ひとりぼっち
子供は子供なりに精いっぱい生きているのです。
さびしんぼうな友達を救うため、歩親子は立ち上がります。
ほのぼのしていただけたら何よりです。
”カランコエクエプワフンワカフンワリプーワプワ”
この意味が分からない言葉、和馬にとっては、大事な大事な魔法の言葉なのです。
嫌なことがあると、この言葉を心の中で、何度も何度も繰り返し唱えれば、するとどうでしょう。さっきまでの気持ちはどこかへいってしまい、にっこり、笑顔が戻って来てくれるのです。
和馬は、いつも一人ぼっち。
夕映えが光る空を蹴飛ばすように、ブランコを揺らしていると、一人また一人家に帰って行きます。
隣でブランコを揺らしていた男の子も、お父さんが迎えにやって来ました。
嬉しそうに肩車され、公園を出て行きます。
それを見るたび、和馬はいいなと思うのですが、でもそんなことは、絶対に言えません。言ってはいけないのです。
和馬には二つ違いの弟がいます。
弟は生まれつき体が弱く、病院にずっと入院しているのです。
会いに行きたいのですが、何故かお母さんは許してくれません。
お父さんは、和馬が三歳の時、遠い街へ家族を残して引っ越して行きました。
家族のためにお仕事をしに行ったのよと、お母さんは和馬に話しました。
ですから和馬はきっといつか、たくさんのお休みを取って、お父さんが帰って来てくれる日を楽しみに待ったのです。
しかし、一年経っても二年経っても、お父さんは帰って来ませんでした。
手紙もたくさん書きました。
ですが、返事は一度も来たことがありません。
最初は、いつ帰って来るのか訊いては駄々をこねていた和馬も、小学校に通うようになる頃には、口にしなくなったのです。
それは訊いてはいけなことだと気が付いたからです。
それからというもの、和馬は話すことが苦手になってしまったのです。
ですから、学校でもだんまりです。
誰が何を話しかけても、ものを言わない和馬ですから、当然友達はいません。
克己や康太みたいにサッカーが上手くありませんし、昌幸や秀雄のように人を笑わせる才能もありません。勉強が出来れば少しは良いのかもしれませんが、和馬は計算をしていると、頭がくらくらして来てしまうのです。国語の時間は、まぶたが重くなってしまって、夢の中へ誘われてしまいます。音楽なんてもってのほか。話すのが苦手なのに、歌なんて歌えるはずがありません。歌のテストなんて、信じられません。体育は背中を丸めて、なるべく目立たたないようにするのが精いっぱいです。
だけど、クラスで二番目に背が高い和馬。どうしても目立ってしまうのです。
ドッヂボールは、一番最初にターゲットにさせられてしまいます。
顔面にボールが飛んできて、目から火花が飛びます。
それでも和馬は泣きません。
ヘラヘラと笑って、外野に回ります。
子供の世界は残酷なもの。
そうなると、面白半分でいろいろなことを仕掛けるのです。
学級員の知美ちゃんが、注意しても聞きません。
それどころか言い争いが始まってしまいます。
そんな声、聞きたくはないので和馬は耳を塞ぎ、あの言葉を唱えるのです。