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帝国の地術士  作者: 玉梓
序章
1/36

少年編 1

導入編となります。少々長く、判り難いかもしれません……。

 大陸にはかつて種族の存続をかけた、終末戦争と呼ばれる大戦があった。

 大陸の生態系を、あるいは他の種族を絶滅に追いやるほどの罪を犯した種族に対する、大陸に生息する全ての生命から拒絶反応であり、レジェンドラ大陸が『調和の大陸』と呼ばれる所以でもある。

 歴史上大陸を支配した種族は数えるほどしかないが、巨大な体躯を誇った龍も、無限に増え続ける蟲も、天候すら操ったエルフも。『大陸連合軍』の前に絶滅寸前まで数を減らし、今は厳しい戒めのもと、静かに暮らしている。

 大陸全土を巻き込んだ戦争はほぼ全ての文明を崩壊させ、多くの技術が失伝し、そうした支配者と文明の入れ替わりと栄枯盛衰の中で複数回、終末戦争の対象となった種族がいる。

 人間である。

 五百年前。

 人の終末への鐘が鳴った。

 彼らは大陸の魔力(マナ)を枯渇寸前まで消費し、自然をはじめあらゆる命に宿る精霊達を消滅の危機に追いやったが為に。

 精霊と人類の存続をかけた大戦は百年に渡り、人と異種族、そして罪を償うべく終末軍についた国家という人の血で血を洗う戦争が大陸各地で続いた。

 大陸全ての生命が疲弊した頃、大陸中央に位置するガルクバスト帝国で二人の騎士がその名を知られることになる。

 後の統一帝アデスは弱きを守る帝国の騎士として戦い続け戦場で噂されるようになり、彼の親友である『黒騎士』は断罪の騎士として終末軍側の人間を纏める指揮官となった。

 結果的に、聖騎士アデスは終末軍を指揮する黒騎士に勝利した。

 支配者側の勝利という前例のない結末を迎えるも統一帝は精霊の開放を実行し、これをもって百年にわたる終末戦争に幕を下ろしたのだった。


 しかし人類は守護精霊の加護を失い、その最大の恩恵である魔法技術は、大きく衰退していった。


 ガルクバスト統一帝国は大陸北部の八咫国、南部のシュバルツラントを除くほぼ全てを支配し、数こそ減らしたものの『人』は変わらず大陸の覇者として君臨していた。

 弱きを護り、正義を執行する騎士を象徴とする帝国は、大戦以前では大陸中央を支配していただけであったが、大戦に乗じて大陸の支配を目論んだ北と東西の大国の侵略を跳ね除け、逆に侵攻。

 終末戦争に耐え切った結果として、大陸ほぼ全土を支配するに至ったのだった。

 しかし時の皇帝は大戦の最大功労者である聖騎士アデスに譲位すると、自らは各地の再興のため帝都を去ってしまった。

 当時の宮廷で最も力を持っていたのは騎士の頂点である十人の聖騎士であり、彼等によって大きな混乱を起こす事無く統一帝国と改め、騎士の戒律とその精神は受け継がれた。


 大陸全土を巻き込んだ大戦から五百年。

 獣やモンスターに襲われる小さな争いはあるものの、国家間の戦争が無くなった大陸は安寧の時代へと入っていく。


 帝国とシュバルツラントとの国境となる山脈の雪解け水は麓の大森林を経て、大河となって大陸を横断する形で流れている。

 大河と大森林、山脈という険しい地形によって隔絶された人の手の入っていない黒い森はかつて、地の聖霊の聖地であり、大戦後の今でも大陸南部に及ぶほどの豊饒の力が活きている。

 帝国領土の南方を統治するダイス大公爵家には2つの役目があった。

 千年近く変わらぬ田園風景の広がる穀倉地帯の管理。その肥沃な土地から食料庫として帝国を支える事。

 そして黒い森の住人、シュバルツラント獣王国との国交である。中立を維持し、大戦に参戦しなかった獣人達は大戦後に王国制へ移行。少しずつ人間との交流を持ち始めていた。


 人が近付くことの少ない国境近くの辺境に小さな村がある。日の出とともに起き出し、男は家畜と森林の管理に、女は畑で汗を流し、日暮れ前には家族そろって食事を取る。そんな大人子供合わせて50人にも満たない小さな村に二人の少年がいた。

 夏。時刻は昼。威勢のいい掛け声と風きり音が広場に響く。木剣を打ち合わせ、時に体ごとぶつかっての本格的な、実戦さながらの訓練が彼らの日課である。

 畑と家畜を害獣と魔物から守り、ときに森林から迷い出てくる魔物を相手にする為に、村では男女を問わず大人達の手ほどきを受けるのだ。

 銀髪の少年が間合いを取ってフェイントを含んだ連撃で追い詰めるのに対し、金髪の少年は強引に踏み込んでの一撃で勝負しに行くスタイルで、12歳の少年とは思えないほどの才能を見せ付けていた。

一度始まればしばらくは終らない村の名物を、大人達は将来への安心と期待のこもった目で眺めるのだった。

 少年達に親はなく、大人達の仕事を手伝ってその日の食事を手にし、その合間に戦い方の手ほどきを受けるのが二人の暮らしだ。

 とはいえ狩りの獲物や村の作物はも平等に分配されているし、怪我や病気になっても惜しまずに薬を出してくれる。親は居ずとも決して不便は無く、逆に年相応以上にしっかりとした生活能力を持っているほどだった。

 大人顔負けの才能を持っていてもやはりまだ2人は子供である。

「勝負あり。そこまで!」

 剣を弾かれた銀髪の少年は、剣を振り切っていない相手の懐に飛び込んでの背負い投げ、その首元に短剣を押し当てていた。

 傍で見ていた銀髪の少女が終了を告げる。

最後にやっと登場人物が出せました…

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