84話 改革するべく立ち上がれ!!
宰相との資料庫の交渉は上々でこの度、晴れてガルフェルド国に「資料部文官 司書」という役職が出来ました。本来なら各院に新部署設立の議案を通して、各部署に予算などの根回しをして…なんてややこしい事があってから皇帝に議案書が回るという順序なんだけど…リュージュと宰相がこの場にいる事ですし、皇帝も宰相も資料庫には困っているという事と資料庫が片付くまでは予算は司書の給金だけという事で…つまり独裁権力を行使で…やっちゃいました。もちろん名誉ある初任はレリアス。試験なんて通り越して従者から文官への大出世…本人が恐縮して途中から気を失いかけていたのは見なかったことにしよう
「これで資料庫も帝国図書館のように使いやすくなればいいのですが…」
宰相が吐くため息にいち早く反応したのは気を失いかけてたレリアスだった。
「わっ私は資料庫の把握はしておりますが、帝国図書館のような管理は無理ですし、他にどのようにすれば人々が使いやすくなるかなどわかりませんっ!!!」
「「「っ!?」」」
そのレリアスの訴えに目からウロコだったのはあたしだけではなく、すでに新しい仕事として話を進めようとしていたリュージュと宰相もあたしと同じ顔してるし…全然考えてませんでしたけど、そう言われてみるとそうだわ。今は廃墟みたいになってるあの資料庫を万人に使えるようにしなければ司書を作る意味なんてない。確かに本の場所は把握しててもそれはレリアス一人だけの話で…彼が一度に対応出来る数なんて限られてるし、城内に立ち入る事が出来る人全員が使えるようにするにはそれなりのシステムを考えなくちゃならない。つまり元の世界の図書館みたいに整えなくちゃいけないのが司書であって…半泣き状態…いや、すでに涙をぽろぽろと零すレリアスを横目に見ながらあたしは引きつった顔で宰相の方向を向いた。
「ねぇ宰相…他のこういう施設では本の管理はどうやって整理されてるの?」
「多分、魔法管理でしょうね…」
「…多分?」
何だその曖昧な返事は?宰相ともあろうものがそんな事も知らないのか?…なんて逆襲が怖くてとても言えませんけど…
そんなあたしの考えを読み取ってるのかどうかはわからないけど…宰相はあたしを見ながら大きな溜息をついて説明をはじめた
「帝国図書館や魔術学院の資料庫の管理方法は門外不出らしく、我ら帝国中枢の人間も利用はしてもその方法は知らないんです。魔法書籍など重要な書籍は城の資料庫など比べ物にならない数と物があるらしいですが…城の資料庫のように本が存在するところも見た事はありません。ただ入口に並ぶ管理人達に探している本を言うと、すぐにその手元に現れるんです」
…その不思議システムは何なのですか?経験してないから想像すら出来ないんですけど…頑張って想像してもホテルのフロントのような物?が限界なんですけど…
「とにかく…つまりはタイトルがわからないと本を借りられないの?」
そんな馬鹿な。
その方法では目的の本を探しにいってその本を探している途中に偶然、興味を引く本に出会うという楽しみが無いという事になる。結構そういう出会いから新しい物の考え方なども学べたりするし、凝り固まった頭がリセットされたりするのに…
「探しているものが曖昧だったりすると管理人が何種類か選んで探してくれます」
それって管理人の好みが+αされてるって事だよね…。それは図書館の機能としてそれはどうなんだろう?…ん〜その管理魔法にはちょっと興味があるけれど…この世界の本の流通は頂けない。
そういえば、確かにこの世界にきて思った事があった。この世界の人は本を読まない。娯楽にも書籍を楽しむという事がない。テリサン村の本屋など廃業寸前だったし…というか本屋があっただけでももしかしたら凄いのかも…うん、確かに店主はとても変わった人だった。
その他でも大人達が物を読んでる姿なんて数えるほどしか見た事ないし…多分どこへ行っても地方はそんな感じなのかも。
…だから文字の発展、というか共通化が遅れてて同じ国なのに『貴族文字』や『平民文字』なんてあたしにすればありえない物が無数にずっと続いてるんじゃないかな?
「…過去を知るって重要だと思うんですけど、平民の皆さんって本読みませんよね?この世界の人達はどのようにして歴史を勉強してるの?」
そのあたしの質問には今まで黙っていたリュージュが答えてくれた
「カタリという者達がいる。その者達は先代から伝え聞いた事をそのまま、世界を回り後世に伝える役割を担っている。ギュラーザルもカタリだ」
「…ギュラ?」
怪物みたいな知らない名前が突然出てきて引っかかった。誰?それ…
「アサミズに歴史を教えている者だが…?」
「あ…そうでした」
嘘です。今リュージュに言われて初めてあのおじいちゃん先生の名前がわかりました。だってあのおじいちゃん、部屋に入ってくるなり何だか興奮して昔話を始めちゃったから名前なんて聞くタイミングが無かったし…。
それにしても…やっぱり元の世界の図書館感覚に慣れたあたしには、この世界のシステムは受入れられそうにない。疑問に思った物は自分の手で探したいし、折角文字も少しずつ覚えてきたのだから本だってたくさん読みたい。
黒の加護の書籍なんかも探したいのに、誰かを仲介しないとそれが手に入らないなんて絶対嫌だ。だって目立っちゃったら命狙われる可能性が高くなるし、出来る限り隠密作業で行いたいのに…
これは何とかしなければ…
「ねぇ…折角だからこの城の資料庫はちょっと違う感じにしてみない?」
とりあえずこの城から書籍改革を起こしてやるっ!!!
すみません。
最近バタバタで更新がおもうようにいきません
しばらくこの感じが続くと思います