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至上最強迷子  作者: 月下部 桜馬
2章 魔術学院入試編
83/85

83話 必然は向こうからやってくる

 おや?向こうから歩いてくるのはリュージュと宰相ではないかい?

 廊下の反対側からやってくる二つの人影は見慣れた者で何か取り込み中なのかこちらには気付かずにどんどんと近づいてくる。 

 資料庫を出てからずっとレリアスの事をどうしよう?と考えていて、結局リュージュと宰相にお願いしようと考えていたらこのタイミングで二人共に会えるなんて何て偶然!これは今言うしかない!!


 「へい……」


 声をかけようとして、思わず止まった。そして自分の視力の良さにちょっと感謝する。それは二人が眉間に皺を寄せて難しそうな話をしていたからで…うん、きっとお願いはこのタイミングじゃない…向こうはこちらに気付いてないみたいだし、このままやり過ごすに限るわ。

 そう思ったあたしは後からついてきているレリアスを振り返った


 「レリアス、陛下と宰相様が通るみたい」

 「あ…はっはい!!」


 レリアスはそう返事をすると、すぐに廊下の端に避けて本を廊下に置き、頭を下げた。すごく背中がピンとしてて綺麗なお辞儀。あたしもそれに習ってレリアスの横で同じような姿勢をとった

 それが視界に入ったのかレリアスが慌てている


 「あっアサミズ様は別に避けなくても平気なのでは!?」

 「面倒だから」


 レリアスの言葉を一言で返す。だって勉強部屋以外の場所で見つかったら一から事情を説明しなくちゃなんないし、機嫌の悪そうな二人にそんな説明をする気にはならない。

 しばらく同じ礼の姿勢を取っていると、あたしの前を二人が通りすぎていく。ふぅ…無事気付かれなかったらしい…あたしが息を吐いたのを見たのかレリアスが声をかけてくる


 「アサミズ様?本当によろしいのですか?」

 

 れっ…レリアスうるさい!!今名前を呼ぶなっ!!


 「…アサ…ミズ?」

 

 レリアスの声にいち早く反応したのはやっぱりリュージュで、少し通り過ぎた所で驚いたように礼をするあたし達を見ている。

 …これはやり過ごせない。むむぅ…レリアス…


 「こんにちわ。陛下」


 あたしは諦めて顔を上げ、リュージュに挨拶をする。すると側にいた宰相も驚いて振り返ってきた


 「やはりアサミズか…どうしてこんなところに?今日は歴史と地理の授業のはずだろう?…それにその者は?」

 「ちょっとした用事です。それと彼は従者君でレリアス君です。それより宰相、急がれていたんじゃないんですか?」


 はい、あたしは諦めが悪いんです。楽にこの場を去る方法をフル回転で考えてます。リュージュに言っても絶対にこの場を去るわけがないので、遠隔攻撃しかけてみる。


 「アサミズ様、きちんと説明して下さらないと、これ以後陛下が使い物にならなくなります」

 「ちっ…」

 

 作戦失敗。RPGで言う、逃げたら回り込まれた。しかも宰相までがっちり包囲網をしいてきたとなると…面倒くさいけど…あたしは今日の経緯を簡単に説明するしかなく


 「え〜っとおじいちゃん先生が興奮で倒れられまして、自主学習を申し付けられたのでその参考資料を取りに資料庫にお邪魔しました」

 

 あたしの言葉に今までリュージュから一歩下がってこちらを見ていた宰相が身を乗り出してくる。


 「資料庫に!?目的の品をどうやってあの魔窟…コホン。資料庫から取り出したのですか?」


 …今魔窟って聞こえましたけど?…まぁ…あの本の乱雑な置き方では魔窟と呼ばれても仕方ないのかもしれないけど…この廊下の先にあるのは資料庫だけだから反対側から歩いてきた陛下と宰相も資料庫に用事があると言う事は簡単にわかる。それに今の宰相の発言であの部屋が管理出来てないという事がわかった。という事はつまりレリアスの存在は貴重なわけで…


 「私には……資料庫の主の加護があるんですよ…ふふっ」


 何だか簡単に教えたくなくなった。今教えてしまうとレリアスが宰相にこき使われる事になりそうだし、何たって悪代官ですから。


 「アサミズ…その加護とは何だ?」

 「優しい味方です」

 「…そいつは私よりアサミズの側にいるのか?」


 え〜っと何故そこでズゴゴゴとリュージュがキレてるのか意味がわかりません。


 「陛下…落ち着いて下さい。きっと加護とはあの者の事でしょう」


 そう言って宰相はリュージュの肩に手を置いて、あたしの後方でまだ頭を下げたままのレリアムを指差した。相変わらず感も良い事で…


 「…アサミズ、あの者は?」


 少しは怒りが収まったものの、それでもまだリュージュの声は冷たい。あぁ…こんな声を聞こうもんなら後のレリアムは震え上がってるだろうな…。


 「さっきも言ったでしょう?従者のレリアス君。それから宰相が言ったとおり『資料庫の主』です。資料庫の本を大体把握してる彼にお願いするともれなく願い通りの資料が手に入ります」

 「資料庫を全部…ですか?」

 「宰相、そんな物欲しそうな目で彼を見ないでくれる?」

 「……はい」


 全く!使えるコマをすぐに手元に置こうとするんだから油断も隙もない。

 だけどそんな自分に自覚が無かったのか、宰相はあたしの言葉にちょっとショックを受けてるみたいだ。


 「あのさ…二人は資料庫に用事なの?」

 「はい。突然貴族院から10年以上前の案件を提示されまして…その資料を探しにですね…」

 

 眉間に皺を寄せて話す宰相が、貴族院に対してウンザリしてるのか、放置された資料庫にウンザリしてるのかはわからないけれど… だけど…良く考えたらこれって初めに考えてたようにチャンスなんじゃないの?


 あたしはニマリと笑うと二人に提案を投げかけたのだった

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