表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
至上最強迷子  作者: 月下部 桜馬
2章 魔術学院入試編
79/85

79話 木曜 政治・経済

 あたしは政治経済なんてまったく興味がなかったし、どんなにつまんない授業になるんだろう…と、しかも先生はもちろん宰相様ですのでとにかく木曜の朝は最悪の気分だった。だけど…蓋を開けてびっくりとはこの事で


 「この国は皇帝を頂点として元老院、貴族院、庶民院の三院から成り立つわけです」


 これを聞くと普通に政治の話が始まるのかなぁ…なんて思っちゃうじゃないですか…ところがどっこい!


 「まぁ…基本的にはそれだけでいいでしょう。今からは政治実践編です。魔術学院では貴族クラスと平民クラスに分かれていますが、同じ学年であれば共通行事なども増えてきます。そしてそんな際には必ずといっていい程、貴族連中は自分の力を誇示したがります。なのでそんな時に役に立つ権力分布図、早見表を用意しました」


 そう言って貼り出されたでっかい紙にはびっしりと家名が書き込まれており、それぞれの家が=だったり、×印で結ばれていたりする…おぉ…まさに権力分布図。


 「各家名が色枠で囲まれてるのって…その家の基本属性?」

 「はい。ちなみに家名下の(元)などの記載は当主が院所属の場合です。これを見ればこの国の貴族の把握などすぐに出来ますので、世渡りの糧となさって下さい」

 「………」


 うん…。魔術学院が貴族社会だという事はわかっていたので、こういう権力図があるのは正直助かるけど…普通こういうのって国家機密っぽいものじゃないんでしょうかね?こんなの敵国に渡ったらかんたんに内紛起こせそうじゃないですか…


 「私はね…自分自身が貴族身分の当主ですので、表立っては言えませんが、本当は実力もない者が立派な家柄というだけで蔓延る事が出来る貴族制度なんて反吐が出るほど大嫌いなんですよ」

 「………」

 「陛下と一緒にこの腐りきった世界の膿を出す為に日夜頑張っているわけですが、その為のコマは常に不足しています。アサミズが平民として魔術学院に入るのであれば、もちろん権力を持たない実力者の筆頭として動いて頂けると思っていますので、下手に貴族のガキ共にちょっかいを出されては困りますから…ね」

 「………」


 うん、何気に恐ろしい事を言ってないかい?しかも黒い笑みが恐ろしいですよ。正しく今、宰相が悪代官な顔ですよ?


 「…あ、あたしは普通に平和に生きたいんですけど」

 「えぇ、アサミズは普通に平和に生きて頂くだけでいいんです。そのうち周りが変わりますから」


 …それって全然平和じゃない気がしますよ。能天気に笑って海を漂ってると、どんどん渦の中心に流されてくように政治に巻き込まれてる気がするんですけど…


 「あはは…」


 うん、方や一国を動かしている宰相に対して、たかだか数年の営業しか社会経験を持たないあたしでは、策において勝つ見込みなんてあるわけがなく…長いモノには巻かれろといいますか…


 「確認ですけど…あたしは普通で平和なんですよね?」

 「えぇ、お約束します。陛下の大事な方を危険な目に合わせるような事はしませんから…」


 うん…それって危険な目以外はするって事だよね?不安を残しつつもこれからこの宰相が行うであろう具体的な内容なんて聞くのは恐ろしすぎる。


 「わかりました。その分布図…参考にさせてもらいます」

 「はい。今月中にしっかり頭に叩き込んでください。政治については今のところはこれだけで結構です。経済の方ですが、こちらはアサミズはテリサン村で経営をしてたそうですので、基礎は省いて今現在の帝都の市場と動向、これからの予測などを中心に学習予定を組んでいます。今日は現在の帝都の市場価格を中心に学習しましょう」


 そう言うと宰相は黒板に貼ってあった権力分布図を黒板から剥がし、勉強室から出た。一応後を追って覗くと、あたしのバリケード部屋に入っていってそこの壁へ分布図を貼りなおしてる。毎日学習しろっていう事ですね…っていうか宰相って今言ったような事を全部頭で把握しちゃってるんだよね…恐ろしさがどんどん増してます。急上昇です。

 戻ってきた宰相は空いた黒板にどんどん物の名前と数字を書き出していく。それらの作業を資料などは一切見ずにすらすらと行う宰相の記憶容量って一体どれぐらいのキャパがあるの?終わることのない羅列をただただ呆然と見ながらも、ちょっと気になるところが見つかった。

 へぇ、魔石にも市場価格ってあるんだ。

 宰相によって書き出されたものを見る限り今は天属性の魔石価格が急騰している…テリサン村では市場価格なんてなかったから全部一律商売していたけど、帝都ではそうもいかないらしい…なるほど、こういうのはすごく参考になるわ。ようやく書き終わったのか宰相はあたしの方に向き直ると、書き出した物の市場価格を一つずつ説明を始めた。

 塩の値段から土地の値段まで、市場価格には理由があり、それを正確に読み取る事が経済では重要だと教えられた。ちなみにこの市場価格は毎週調査をされているらしく、その情報を発信している『帝都経済情報紙』は必ず目を通すように言われた。


 …あたし元の世界でも新聞のテレビ欄しか見てなかったんですけど…

 あたしは株式欄のような小さい文字の羅列を思って今からうんざりしてしまったのだった

おそくなりました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ