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至上最強迷子  作者: 月下部 桜馬
2章 魔術学院入試編
78/85

78話 『普勉』とは普通に勉強する事である

 テーブルの上には食べきれない…いやぎり食べれるぐらいの食事が並び、空いた皿はどんどん下げられていく。食事は和やか?に進んでいく…と言うのは一言もしゃべっていない。だって目の前にこんなにたくさん美味しそうなご飯があって会話とかありえないでしょ!ご飯の時には口を閉じて食べなさい!がうちの家訓でしたし。


 「あいかわらず…いい食べっぷりだったな…」

 「?」


 いつの間にかリュージュは食事を終わらせていて、食後のディアという飲み物を飲んでいる。ディアはコーヒーに近い味がする飲み物で、高級な物らしく城にきて初めて飲んだ時には「コーヒーぃぃぃ!!」と感動したのを覚えてる。研究者系の人はコーヒー中毒、カフェインジャンキーな人が多いんですよ。例に漏れずあたしもジャンキーですから…。リュージュのディアから漂う香りがあたしの鼻を刺激してくる…早く食べ終わってあたしもディアが飲みたい。そこからあたしの食の勢いは倍速になった


 「………」


 もちろんリュージュは言葉を無くして痛い視線を投げかけてくるけど、デザートまで全て頂いて「お腹いっぱい満足。満足」と寛いだ気持ちになってるあたしにはそんなもの全然痛くも痒くもない。


 「……その小さな身体のどこにこれだけの食事が入るんだ?」

 「胃」

 「…?今、何と言った?」

 「だから…胃!」

 「だからの後が上手く聞き取れん…それはアサミズの国の言葉か?」


 …ずっとあたし的には日本語を話してる感覚なんですけど、というかあなた達の言葉もしっかり日本語なんですけどね…これって多分だけど世界を超える時の言葉の補正機能とかってやつ?だけど…補正されない言葉が存在してる?

 ちょっと引っかかる…研究の時でもそうだったけど、こういう時の発見は意外と重要だったりする事が多い。だけど答えを出すにはパーツが足りない。


 「う~ん」

 「…アサミズ?」

 「あっごめん。お腹って言いたかったの…間違えちゃった」

 「そうか」

 

 別に話しても良かったんだけど、きちんと答えが出てないから説明出来る自信もないので適当に誤魔化した。リュージュも特に追求してくることなく次の話題へと移ってくれた


 「ところで、授業は順調か?」

 「…鬼のような先生ばっかり紹介してくれてありがとう」


 ほんとに全部の授業癖のある先生ばっかりで、身が持たないわ…って怨みの視線を向けたら誤魔化すように苦笑を返された。そんなので騙されないし…


 「だが、皆優秀な者達ばかりを集めたぞ」

 「それに伴わないあたしの実力が悪いんでしょうかねぇ…」

 「実力が無いなんて事は言わせないぞ…アサミズの場合無いのは気力だけだ」


 はい…よくご存知で。というか自分でも自覚して無かったんだけど、きっと今までみたいに適当にやっておけば何とかなるかな?なんて甘い考えがどこかにあったんだと思うのよ。でも魔術実技で特に感じたけど、やっぱり技能を学ぶという事は一筋縄でいくもんじゃなくて、真剣にやらないと身につく物じゃない。ハイスペックと天才がノットイコールだという事は嫌という程思い知らされた。


 「25歳の女に今更学習の気力とか求めないでよ…」


 こっちは学業から遠のいてもう結構経つっての…元々その学業中だってあたしは好き嫌い激しくて興味の無い授業なんて最低限しかしてなかってのに…その分興味のある事にはどんどんのめり込むタイプだったから研究は好きだったんだけど…


 「学ぶ事に年齢は関係ないさ。世界は動いているのだぞ、常日頃から学んでいる事はたくさんあるじゃないか。ならばその一部を試験にまわせばいい事だろう?」

 

 簡単に言っちゃってくれる。…しかもあたしの大好きな効率的な考えじゃないか。言われると確かに大人になっても仕事や何かを毎日学んでいるんだけどさ…こう…勉強!ってなるとどうしても身構えちゃうのは受験がある日本人だからなのかな?

 そういう事を考え出すと、何だかグルグルと思考が回りだしてあたしは顔を横に向けてテーブルに突っ伏した


 「…アサミズ?」

 「……何でもない」

 

 小さい頃はお箸を持つことだって文字を書く事だって同じ学ぶ事だったのに…いつから生活を学ぶ事と勉強する事が別になったんだろう?…学校に行った時から?違う。だってあたしは『勉強』だなんて思った事なかった。


 「『勉強』ねぇ…」


 強く勉める事。普通に使ってて意味なんて深く考えた事無かったけど…これを日常的に使ってるって…脅迫観念に囚われてるよね…。普通に勉強で『普勉』でも良かったんじゃないの?なんて思ってしまうのは大人だからなんだろうけど…


 「…ただ、あたしは今こそ『勉強』しなくちゃならないんだろうなぁ…」

 「さっきからブツブツ何を呟いているんだ?」

 「こっちの話。頑張らないとっ!って思ったの」

 「やる気が出たのなら何よりだ」


 言葉を返せないあたしを救うようにディアが前に置かれたので、飲むフリだけしてリュージュに思いっきり舌を出してやる。

 

 「…何だそれは」

 「ほら、あたし猫舌だから、熱くて…ちょっとヤケドしたみたい」

 「………大丈夫か?」


 怪訝な目で心配する言葉をかけるって不思議な事をする男だ。あたしはその視線と言葉は無視して今度はゆっくりとディアを口に含む


 「あつっ!!」


 ほんとに熱かったディアに思わず声が出てしまって「あ…」と思っても後の祭りで、リュージュの冷たい視線に晒された。しかも帰る際にきっちりあたしの今後のスケジュールの休憩時間が30分減らされたのは言うまでもない。まったく大人気ないやつめ…まぁ、果てしなくお互い様ですけどね。

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