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至上最強迷子  作者: 月下部 桜馬
2章 魔術学院入試編
76/85

76話 魔空間

 

 あたしの「いやぁぁぁぁ」と言う叫び声と一緒に飛び込んだ空間は以前の飛空よりはるかに高いらしく、地上を広範囲で見渡す事が出来た。コハルの背中に乗りながら見渡した限りでは、色彩あふれる何ともファンタスティックな世界に見える。4色の大きな湖と山が四方にあってそこから網の目のように川が流れ出し、途中で交じり合っては複雑な色になっている。しかも驚いた事に湖の傍には森や建造物らしき物まである。あまりにサイズが小さくて何かはよくわからなかったけど…うん。高さってね極限を超えるとそう怖くないんだってわかった。だけどそれも少しの間だけで、あたしを背中に乗せたコハルは何か目的を見つけると空中をスノーボードのように格好よく滑り出した。

 

 「ひぃぃぃぃ」


 安全装置の無いジェットコースターの落下に乗っているようなもので、眠気なんて一気に吹飛ぶ…目をつぶってコハルにしがみつく事で必死に気を失いそうになるのをこらえる。だけど空腹に胃が浮き上がる感覚は凄まじく…酔った


 「こ、コハル…ギブです…」

 [主?うわぁっ!!すみません。魔空間での感覚をそのまま使用してしまいました]


 振り返ったコハルがあたしのグロッキーな様子を見て急速に速度を落としてくれるけど、それによってさらに胃が浮き上がった…


 「もう…無理。吐く…吐くものないけど…吐く」

 [あっ主っ!!もう少しだけ耐えて下さい]


 そんな事を言われても今更どうしろと?ふわふわと降りるコハルの上で多分真っ青になってるあたしは、されるがままだった。 

 そのまましばらくゆっくり降下するコハルにだんだん気分も落ち着いてくる


 「し、死ぬかと思った」

 […すみません。魔空間での力の違いを忘れていました]


 ひたすら申し訳なさそうにしているコハルに追い討ちをかけるのも可愛そうなので普通に話しかける。


 「…それにしても魔空間なんて名前だからもっとオドロオドロしい物を想像しちゃったわ。あれって川?」


 だいぶ地上に近づいてきたから地理状況が把握出来てきたけど…赤い川やら緑の川やら…ほんとに色とりどりだわ…


 [主、あれは魔力の流れが水のように見えるだけで、本当の水ではありません]

 「魔力の流れ?」

 [はい。今からあの流れに降りて城へ向かいますので]


 …魔空間から戻るにも戻る場所とか関係あるんだ?

 

 「…ってこの空間でも移動するんだったら、元の世界でもよかったんじゃないの?」

 [この世界は時の流れが違うんです。なので城に戻ってもさっきからほんの少しの時間しか経ってないはずです]

 「へぇ…」

 

 そんな会話をしている間に赤い流れに辿り着き、コハルがその上に立つと自然に動きだす。…水みたいなのに沈まないって…変な感じ。なんて考えてるとコハルが突然体を傾けた。


 [おっと…]

 「うわっ!な…何?」

 [突然飛び出してきた者がいました]

 「え?」


 言われて流れをよく見ると他にも流れの中からひょこひょこと聖獣の顔が飛び出しているのがわかる。コハルが上手く避けたので振り落とされたりはしなかったけど…びっくりした。


 「聖獣?」

 [この魔力の流れは聖獣達の回復場でもあるんです。ここは火属性の流れですので、その属性の者達がこうして魔力の波につかり回復してるんです]


 …うん。確かに飛び出す顔がみんな気持ちよさげだし、まるで冬の猿温泉みたいだ…。

 

 「ねぇ…ここって聖獣だけの空間なの?」


 疑問に思った事は解決出来るならしたい


 [いえ、ここは聖獣の回復場でもありますが、それと同時に精霊達の存在する場所でもあります。四方の湖の傍にそれぞれ大きな城のような物が建っているのを見ましたか?]


 湖の傍にちっちゃい建造物があったのは認識出来たけど…城だと言われれば城かもね。程度にしかわからないサイズだったし…


 「そんなのもあったね」

 [あれは四大精霊の住処です。この魔空間は各城に住む精霊王と精霊女王によって管理されています、城の周りにある建物はそれを中心に各属性の精霊たちが群れを形成している為に出来たものです]

 「それは群れじゃなくて立派な街でしょ?っていうか国家じゃん…」

 

 そういえば元の世界でこういう不思議生物の集まる世界って『幻想界』っていうんじゃなかったっけ?この世界を知ってしまうと魔空間よりぜんぜんその呼び方の方がしっくりくる。だけど…あたしこの世界知ってる気がする……ん~だけど…脳の疲労度がハンパ無いから該当する答えが導き出せず、悶々としたものだけが溜まる。


 「だめだ…思い出せない」

 

 こういう時は無理に頑張っても答えなんて出てこないので、忘れるに限る。きっと何かの拍子にぽっと出てくるでしょう。それにしてもこれだけしっかりした空間なら


 「…コハル、あたしが呼び出さなくてもこの世界だったら全然寂しくないね」

 [主、私は主の傍が一番好きです。大半の聖獣達だってほんとは主の傍に居たいんだろうと思います。ただあの世界では聖獣は存在するだけで主の魔力を消費してしまうので仕方なくこの世界に戻ってくるのだと思いますよ。その点、主はずっと私が存在する事を許してくださる…私は幸せです]

 「…な、何よ…照れるじゃない」


 いつもより饒舌なコハルの言葉に思わず顔が赤くなる。意味も無くコハルの頭をグリグリとしてしまうのはもちろん照れ隠し。そんな傍から見るとバカップルみたいなあたし達だったけど…


 [主…周りが騒がしくなってきました。先を急ぎましょう…]


 意外と冷静なコハルの声にバカップルはあたしだけだったとちょっと恥ずかしかった。それにしてもさっきまでの声とは違う深刻そうな声色にあたしも警戒心が生まれる


 「…どうしたの?」

 [主の存在を精霊達に見つかると厄介ですので…]

 「…?」


 すっかり忘れてたけど…もしかしてこの世界でもあたしのハイスペックは何かトラブルを呼び起こすんでしょうか?


 「えっと…猛スピードでお願い」

 [了解しました]


 コハルはあたしの言葉を聞くと足を半分ほど魔力の流れに沈め、スピードをあげた。それにあわせてあたしも姿勢を低くしてコハルにしがみついて静かにしてると周りの声が大きく聞こえる


 【あれは…確かに黒の加護者?】

 【精霊王にご報告しなくては…】

 【精霊女王にご報告しなければ】

 【【急がなくては…】】

 

 は~い。やばい気配が漂ってます。

 心の底から早く城に帰りたいです

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