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至上最強迷子  作者: 月下部 桜馬
2章 魔術学院入試編
74/85

74話 水曜 魔術実技④


 今あたしは泥んこ遊び…もとい、泥人形作りに精を出しています。目の前には百体以上の形・大きさ、様々な土偶が形成されており、もちろんあたしの魔力によるものなんですけど…難しいんですよ。理屈じゃない感覚での魔力調整って…どうしてこんな事になっているのかって理由はもちろんあの光の柱に決まってるし…あの光の柱を見てのシーの感想は結構きついダメだしだった


 「なってないわ~、全然なってない。予想外の凄さと駄目っぷりね。こんな魔力を全力で放出し続けたら世界が壊れるし、無限魔力だからってこれはないわ~」


 さりげなく恐ろしい事と同時に人の心を抉るという高等技術をさらっと言っちゃってくれます。


 「…とりあえず体内魔力の感覚を掴まないと話にならないわね。そうね…まず泥人形を同じ形で十体作れるようになりましょうか」

 「え?十体でいいの?」

 「ええ。これと同じものを十体ね」


 そういうとシーは地面に魔法陣を描いて発動させた。すると地面から土が盛り上がりどんどん人の形になっていく。


 「…あれ?これって」


 ん?何だか見慣れた土偶ですけど…。どうみてもその土偶はリュージュにしか見えない。しかも妙に土偶なのに完成度が高いんですけど…


 「想像しやすい人の方が形成するの簡単だから。あたし達に共通する人物ってリュージュかシュビかラッシュでしょ?その三人の中だとシュビは印象に残らないし、ラッシュは昨日会ったばっかりで印象もないでしょうから必然的にリュージュにしたわ」


 うん…言ってる事は正しいけど、やっぱりさらっと宰相に対してぐっさり台詞を吐いてますよね。城ってほんとに一癖も二癖もある人達ばっかだな…、ちなみに本人泣くかもしれないけどメルフォスさんももちろん含まれてます。


 「わかりました。リュージュの土偶十体ですね」

 「えぇ。頑張って」


 十体のリュージュの土偶を想像してみて、絵面的にはちょっと…と思ったけど、頭の中では意外に彫刻置き場みたいな感じで違和感がない。やっぱ美形は得だと思う。

 

 「よし…」


 あたしは頭の中で今見たシーの土偶をイメージしながら「我が力よ、地上に降りて糧となり、形を示せ」と詠唱し、両手を地面につけ魔力を注ぐ

 するとシーと同じように地面が盛り上がる。ただあたしがちょっと力みすぎたのか凄いスピードで100Mほどの巨大な土偶が出来ていく。


 「げ…」


 そうあたしが言った瞬間にその土偶が破壊された。もちろんそんな事をしてくださるのは横のシー以外におらず…それにしても一応リュージュを象ったものを木っ端微塵に躊躇いなく破壊するシーに恐怖を感じる


 「アサミズちゃん」


 シーが笑顔で自分の作った土偶を指差している。はい、重々承知してるんですけど…つい力が入ってしまいました。なんて言い訳を言える雰囲気じゃない。


 「だ…大丈夫です。次こそは」


 つまり魔力の注入を抑えればいいんだから、両手で力を送った物を片手にすれば半減するわよね?あたしはもう一度詠唱して今度は力を抜いて片手だけを地面につけた

 すると今度は3Mぐらいのサイズになったけれど、ディテールが無茶苦茶ですでに人を形成していない。


 「あれ?」

 「アサミズちゃんの目にはリュージュはああいう風なのかな?」


 わかってます!!わかってますから!!!そんな怒りマークな笑顔を顔に貼り付けるのは止めてください。つまり…片手だと魔力の注入量は抑えられたけど、不完全な魔法になってしまうって事よね…。つまり両手で片手分の魔力を注入する事が必要なんだろうけど…その感覚がイマイチ解らない。

 魔法が発動した時には体の中から何かが掃除機で一気に吸い取られるような感じなんだけど…注ぐんじゃなくて吸い取られる感覚だから上手く調整が出来ないんだよね…


 「うーん?」


 なかなかいい手が思い浮かばない状態に、ちょっと位置指定を使えば簡単に出来るのに…と簡単な方法に流れそうになる。ダメダメ…それじゃ意味ないから。そんな考え込んでるあたしにシーが声をかけてくる


 「魔力の調整は感覚の問題だから考えるより回数こなす方が早いわよ。せっかくの無限魔力なんだから活用しなさい」


 うぅ…基本効率を求めるあたしの性には合わないけど…やるしかない。出来なきゃ効率も何もないしね…


 「うおりゃ~!!!」


 それからは100Mクラスの土偶を何体も作ってはシーに壊され、やっぱり片手案も捨てきれず人では無い物を何体も作り出し、両手で3Mほどの土偶人形を作れるようになる頃には何百体の土偶に囲まれすっかり日が暮れていた。それだけやってもシーのディテールには全然追いついてない。


 「これを十体って…鬼でしょう?」

 「あら…やっとわかったの?今日はもう日も暮れたし帰りましょう」


 くすくす笑うシーに思わず近くにあった泥団子を投げたが軽く手で払われてしまう。



 この世界の魔法を使えるようになる事。



 その言葉の難しさを痛感した一日だった。

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