72話 水曜 魔術実技②
黒の加護者だからの訓練って何?そもそもそれを受ける為に学院にあたしは行くんじゃないの?降り立つとすぐにまだあたしの中に渦巻く疑問をぶつけた。もちろん下りる時にはコハルには伏せてもらいましたけど…
「あたしが黒の加護者だとリュージュに聞いて知ってるのはわかりました」
「ストップ。アサミズちゃんが黒の加護者だとリュージュから聞いたわけじゃないわ。リュージュは人の秘密を勝手に話したりしないから、そこは間違えないであげて。ただあたしとシュビはリュージュが黒の守護者だと知っていて、そのリュージュがこんなに執着する人を初めて見たの。それこそ公務を放り出しても駆けつけるような…あたしはそこから予想を立てただけ」
…つまり鎌を掛けただけだと?…ただあたしが思うに、リュージュはバレバレの行動しかしてないですけどね。まぁ、色々助けて貰ってるし、黒の呪いという事もあるので差し引きは0にしてあげましょう。
「わかりました。それでどうして訓練が必要なんですか?」
「『黒の加護者はその体内に全ての力となる魔力を宿す』。アサミズちゃんの中にある魔力を感じるまでそんな存在信じた事もなかったけど…」
…あたしの魔力を感じるって、そんなのいつのまに!?…そういえば思い出すのは数々のセクハラ医者の行為。そこから推測するに
「…触れると人の魔力を感じる事が出来るんですか?」
あの数々のセクハラ行為にそんな意味があったとは信じられないけれど、それ以外に考えられない
「『あたしは』ね。医療に従事してる人間はそれだけ他属性に触れる機会が多いからそうなりやすい環境なの。だからそこから培ったカン!」
「もっともな事言ってて最後はカンなんですか…」なんて突っ込めないのは…日本人『先生』の権力に一番弱いですから…。「皇帝」や「宰相」などは元の現実から離れすぎてイマイチ権力として認識出来ないんだよね。どう見てもあたしにはリュージュはヘタレわんころにしか見えないし…
「アサミズちゃんの体内って信じられないけど個々の魔力同士が溶け込まず、色んな魔力が入り乱れてるのが感じとれるのよ。ちょっと複雑で、まるで体内自体が難解魔法陣な感じ。そしてその力は行き場が無くて今にも決壊しそうなぐらいに増幅してる」
エサの次はダム認定。どんどん人間から離れてくなぁ…言わんとしてる事がなんとなくわかってしまうからそれも嫌なんだけど…
あたしの魔力は無尽蔵に体内の中で生成されている。コハルの言葉があたしの中に蘇る
「…つまり、どこかで発散させないと爆発するって事ですか?」
「ええ。あなたの魔力が暴走すれば誰も止められない。一国どころかきっとこの世界すべてを巻き込んでしまうような魔力だわ」
魔王じゃないですか…それ。時限爆弾を抱えてるハイスペックとか欠陥多すぎるでしょ
「あたしってこの世界に害にしかならないんでしょうか…」
「いいえ…あなたが生まれた事はきっと何かの意味があるはずよ。だからその時までにきちんと魔法の使い方を覚えましょうね」
あたしが生まれた意味…つまりあたしがこの世界に来た事に意味があるって事?いやいや…あたしは一般人で普通な日本人ですから、そんな物語の勇者みたいな事は丁重にお断りします。
よし…今までは料理も美味しいし成人してるんだからこのままこの世界に居てもいいかなぁなんて考えてたところもありましたが、一刻も早く元の世界に帰る理由が出来ました
「あたし頑張ります!!」
「いい心がけだわ。そうね…どうせなら実戦方法で魔法を使用した方が、何かあった時の護身術にもなるでしょう」
「え?」
はい?実戦方法って何ですか?
「そうしましょう!模擬戦闘の仕方を説明するわ」
「せっ戦闘!?」
それって模擬って言葉が戦闘の前につくのも初めて聞いたような人間にする代物じゃないですよね?
「自分が殺されかけたって事忘れたの?身の守り方ぐらいは覚えておかないと、いつでも人に助けて貰えるわけじゃないのよ」
そういえばそんな事もありました
「模擬戦闘は基本相手を殺しません」
「模擬なんだからもちろんでしょう!!ってそこから説明!?」
びっくりして思わずつっこんでしまいましたけど…
「攻撃魔法は相手がシールドを張ってから30秒後に行う事。30秒なのはそこから魔力が安定するからよ。それから出力制限リングをつけた手で攻撃魔法は行う事」
そう言うとシーさんは自分のポケットから銀色の腕輪を取り出した。
「じゃあ…とりあえず出力制限をかけた状況でどれほどの力なのかみたいから、つけてみて」
あたしに腕輪を渡されたけど…明らかに金属なそれを見てちょっと顔が引きつってしまう。
「あの…」
「ん?」
「あたし…金属アレルギーなんですけど…」
「………」
え~っと…そのびっくりした顔で思い当たるのは一つしかないんですけど
…黒の加護者でも無敵じゃありませんから。
更新が遅れてすみません
今回はちょっと難産でした