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至上最強迷子  作者: 月下部 桜馬
2章 魔術学院入試編
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71話 水曜 魔術実技①

 フリルがふんだんに使われた白シャツにピンクチェックのキュロットズボンと茶色の編上げブーツ、「今から乗馬ですの。ホホホ」な格好であたしは城の裏庭に立たされていた。目の前にはそんなあたしの格好を涙を流して笑う医者ことシー。


 「…動きづらい」

 「あははっ!!!ダメだ…お腹が捩れる…」


 ナサエラさんに拉致られた後、シーのセクハラなんて可愛いと感じるぐらいに身体の採寸を全てとられ、次から次へとドレスを着せられては剥がされた。何のプレイだって頭の中で突っ込みながらも出る声は「んぎゃ〜っ!!」だけだった。

 そんな地獄から解放されたのは夜中で、せっかく授業が早く終わったのだけど、昨日なんて比じゃない位あたしの精神はボロボロだった。

 今日も二度寝しようとしたところを叩き起こされて入浴させられた。用意された服は昨日ナサエラさんが持っていたのなんて地味すぎるというぐらい派手なドレスだったけれどさすがにそれは今日は魔法実技なので…と断った。いつもの服を着ようとしたら、存在する筈の場所にその姿は無く、代わりに用意されていた服がコレ。どうみても無駄なピンクフリフリがロリータにしか見えません。

 

 「鬼すぎる…」


 お嬢様も乗馬ぐらいはなさるのでズボンスタイルで妥協出来るギリギリのラインがこの服らしい。あたし的にはもっとゆったりとした服が好きなのにズボンピチピチです。それに普通のブーツならまだしも、膝下までの編上げブーツなんて履いた事ないです。おかげで何度も転びました


 [お似合いですよ]

 

 転ける度にコハルに救われ、ニッコリ笑って横を浮遊するコハルが言ってくれる言葉だけが救いだと思う。それにしても目の前のこの人はいつまで笑い続けるのか…元はと言えば元凶の癖に…


 「そろそろ授業時間ですけど…」

 「ひひ…ごめん。けど笑ったわぁ…」

 「失礼です」

 「あぁ、ごめんごめん。アサミズちゃんの格好の事笑ったんじゃないのよ。ママ昔から自分の娘を着飾るのが夢だったらしいんだけど、生まれて来たのがあたしだったからさ。生まれた時からこの髪で、お洒落とか以前の問題だったのよね。まぁ…あたし自身も興味無かったし。だからママがたがを外すとそうなるんだって初めて知った」


 そう言ってシーは苦笑を浮かべている。…それにしてもその頭、天パにしてはダイナミックすぎるだろう。あたしの疑問を感じ取ったのかシーは自分の頭に手を当てて指を差し込んでいるけど、もちろん手櫛でも梳けたりはしない。


 「火属性の人間ってどうしても身体との相性が悪いのよ。だからどこかにこういった症状が出ちゃうわけ。アサミズちゃんも火属性だって偽るなら何か考えて置いた方がいいわよ」


 なるほどね…人体の45%は水だから火属性の魔力が影響するのかも。…ん?待てよ。今さらりと「偽る」とかって単語出ませんでした?


 「偽るって…どう言う…意味ですか?」

 「あたしもうっかりしちゃったけど…その話は後にしましょう」

 

 よく考えると城の裏庭なんて人が普通に出入り出来るところで話していい話ではなかった。あたしがシーさんに頷くと彼女は短い詠唱を唱えた。すると空中に3Mほどの赤い大きな鳥が現れた。鳥はシーさんの横に舞い降りると首を下げ、シーさんの肩辺りに顔を持っていく


 「……タカ?」

 「あたしの聖獣『グロアワーズ』宜しくしてあげて。アサミズちゃんの聖獣はその横に浮いてる子よね?」


 シーさんはグロアワーズの首を撫でながらあたしの横に視線を向けてくる。そこにはフワフワとコハルが浮いている


 「コハルです」

 「じゃあ移動するから、コハルと一緒に付いてきて」


 そう言うとシーさんはグロアワーズの撫でていた首に掴まり、ふわりとその背に飛び乗って大空へと飛び上がった。その一連の動きはとても優雅で目を奪われた。


 「早く行くわよ〜!!!」


 遥か上空から聞こえてくる声に我に返ると、若干周りの目が気になったけど城の人間は魔法使いの聖獣なんて見慣れているらしくこっちに気を配る人なんて居ない。なのでその場でコハルに冷蔵庫サイズになってもらい背中に乗せてもらう。もちろん格好よく飛び乗るなんて夢のまた夢でコハルに伏せて貰い乗るのだけれど、そうやって乗る時でさえ「よいしょ」と自然に声が出た事に何だか泣けてきた。もうちょっと体力つけなくては…


 背中に乗ってしまうと後はコハル任せなので、寝不足の身体をちょっと休めさせて貰う


 「コハルは大きくて安定感バッチリね」


 先を飛んでいた筈のシーさん達がいつの間にか並列で飛んでいてこっちに向かって話しかけてくる…軽くもっと大きくなりますとは言えない。


 [お褒め頂きました]

 「良かったね」


 少し照れた様子のコハルにあたしはしがみついてる首元を撫でながら言ってやる


 「コハルって人語操れるの!?」


 あ…そう言えば、コハルにあたし以外の人が居る所で不用意に喋っちゃいけないっていうの忘れてた。でも…多分シーさんは大丈夫。


 「さすが、黒の加護者ね」


 ほら…やっぱり知ってた。何となくそんな気がしてましたけど…もちろん情報元は


 「リュー…陛下から聞いたんですか?」

 「今はリュージュで良いわよ。あたしとシュビがリュージュの幼なじみだって話したっけ?だからあいつが黒の守護者だって事も知ってるの。で、アサミズちゃんが黒の加護者だからこそ今からの訓練があるのよ!さ、目的地に着いたわ。降りるわよ」

 

 …黒の加護者だからこその訓練?何ですかそれ?と問おうにも既にシーさんは降下を初めていて、声など届きそうにない。空中に停止してあたしの指示を待ってるコハルに「ついていって」と促すと、何だかこれから起こる事も楽な事ではなさそうで、降下しながら大きな溜息が何度もあたしの口から吐き出された

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