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至上最強迷子  作者: 月下部 桜馬
2章 魔術学院入試編
70/85

70話 親子

お気に入り登録が5000件を越えました

感無量です!

ほんとにありがとうございます!


 今がどういう状況かと言いますと…ソファに丸くなって眠るコハルの横に正座で座っています。目の前ではナサエラさんを含むたくさんの侍女さん達によって部屋の中の清掃がすすめられています。「自分で片付けますから」の言葉も「お客様に部屋の掃除をさせるなど侍女のプライドが許しません」と相手にされず、「じゃあ手伝います」という言葉も「結構です」の一言で却下され…今あたし非常に居た堪れません。なら部屋から出ようとすれば「そのような格好で表に出るなんて許しません!大人しく座ってて下さいませ」と言われてしまうともうどうしようもなく…ただソファに横柄に座るなんてとんでもなく…正座となっているわけです。


 「………」


 横に丸くなるコハルに目を向けると片目を開けてちらりとこちらを見てくるけど、あたしからの指示が無いとわかるとすぐに元の体勢に戻ってしまう。


 「………」


 で、あたしに不埒な事をしようとした疑いをかけられたリュージュはナサエラさんに「幼いお子に何て事を…私は坊ちゃまをそのような御仁にお育てした覚えはありません!頭をお冷やしなさいませ!!」と叫ばれて問答無用で部屋から言葉通り叩きだされてた。うん…それはもうほんとに気の毒な感じで…「違うっ!!誤解だっ!!」って言う言葉が暫く扉の外から聞こえてきたけど、消えたのは多分、宰相か誰かに連れ去られたんだと思う。何でも侍女頭のナサエラさんはその昔リュージュの乳母兼教育係だったそうで、皇帝という地位になった今でも彼女には逆らえないらしい、というのはナサエラさんが呼んだ掃除担当の侍女さんから仕入れた情報。「アサミズ!!誤解だと言ってくれ」なんて言葉も聞こえたんですけどね。ふふ…リュージュ、正座を余儀なくされてる身分では助け出すなんて不可能ですからね。ん〜それにしてもそろそろ正座した足が臨界点を突破しようと無感覚になってきてるんですけど…


 「アサミズ様、大丈夫ぅ?」


 そんな時に聞こえて来た声にに救いを求めたけど…ひょっこり現れた顔に思わず眉間の皺を深くしてしまう。うん、セクハラ医者じゃ…この足をいじり回されるだけだ。

 あたしが思わず引いた身体は完璧に痺れた足に刺激を与え、「ぎひっ!」なんて情けない声が口から漏れる。それを聞いた瞬間の医者の顔をあたしは見た!完璧に見た!!絶対ニヤリって笑った!!


 「アサミズちゃん…ん?足どうかした?」


 わざとらしい台詞を吐きながらじりじりと近寄ってくる医者に危険を感じ助けを求めようと隣に寝ている筈の物体に手を伸ばした。だけどその手に本来伝わってくる筈のモフモフはレザーに取って代わられていて…


 「っ!?」


 部屋を見渡すとコハルは既に避難を終えていて、侍女さんが片付け終わった一人がけの椅子に丸くなってる…こ、この裏切り者ぉぉぉ!!!


 「ひぃぃぃ…」


 立ち上がって逃げる事も出来ず、手をワキワキと動かす医者から怯えてソファの端まで逃げるのが精一杯だった。そんな医者の頭に容赦ない拳が叩き落とされるのがスローモーションで見えた


 「シーっ!!!お前まで何やってるんですか!!」

 「ま…ママ」

 「ママぁ!?」


 もちろん拳を落としたのはナサエラさん、そしてママと言ったのは医者であって…あたしは驚きの余り立ち上がり、すぐに「んぎゃっ」と足の痺れに撃沈して再びソファに沈む…だけど痺れる足を摩りながら目の前の人達を観察する事は忘れない


 「医者の母親がナサエラさんっっ!?」

 

 目の前で頭を抑える赤毛頭が爆発してる故に残念な美人医者ときっちりと纏め上げられた赤毛の昔はそれはもう美人だったろうというナサエラさんを見比べる。似てると言えば…似てる?医者の頭の爆発に気を取られててそんな事考えもしなかった…でも医者の母親ならあの眼球抉られそうになった事件は凄く頷けてしまう。


 「アサミズ様申し訳ありません。我が娘が粗相を…」

 「失礼ね!『まだ』何にもしてないわよ!」


 ナサエラさんが綺麗に頭を下げる横で唇を尖らす医者は正しく「悪戯を見つかった子供の横で親謝る」の図である。…それにしても『まだ』を強調するあたりにマッドな匂いがプンプンします。


 「リュージュに言われて様子を見に来たんだけど、その調子なら大丈夫そうね。まぁ遊ぶのは明日でも出来るし、何も無いようなら帰るわね〜」


 明日?明日って何?まさかまさかの『魔術実技』の先生が医者だなんて事…にっこり微笑む医者を見て「明日は終わった」と色んな意味で覚悟を決めた。あたしの蒼い顔を見て「ぷっ」と吹き出すと医者は手を振って部屋から出て行った。


 「まったく陛下といいシーといい子供にこんな大人げない事をするなんて…」


 医者が出て行ったのを見送ると、彼女が開けたままの扉を閉めに入口に向かいながらぶつぶつと小声で文句を言うナサエラさんに出て行った筈の医者が開け放たれた入口から顔だけひょっこりと見せ爆弾を落とす。


 「ところでママ、ちなみに言うとアサミズちゃん25歳だから!」


 部屋の中であたし達の会話に聞き耳を立てていたんでしょうね、侍女達の掃除道具が一斉に結構派手な音を立てて床に落ちましたよ。うん、ナサエラさんの選んだドレスの感じで何となく誤解されていたと思いましたけど…

 医者からの言葉を受け取ったナサエラさんは何故か怒気を纏ってこちらを振り返り…


 「にじゅう…ご…のお嬢様ですか…」

 「は…はい」

 「25歳にもなろうお嬢様がまるで坊ちゃんのような格好で、人前に出ていたのですか?」

 「…え?いや…その…」


 ゴゴゴと聞こえる音の発信源はもちろんナサエラさんで…ゆっくりとこちらに向かってくるとさっきのリュージュと同様に問答無用であたしは隣の寝室へと連行されたのだった。

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