69話 儚い夢
すみません。
68話を訂正すると2話分の長さになってしまいました。
予想以上に訂正に時間がかかってしまったので…本日手抜きですみません
あたしの情けないその声に即座に反応したコハルが窓の外に飛び出し、あたしの身体をまた尻尾で包み支えると、気圧のバランスが整うまで空中の安全な位置まで退避してくれた。
[主、大丈夫ですか?]
「ご…ごめん」
短時間の間に何度コハルの「大丈夫ですか?」を聞いただろうと、その声に謝りながら思わず首が縮こまってしまう。しょげたあたしを見てコハルはあたしの頬を一舐めすると頭押し付け甘えてくる
[お怪我が無くて良かったです]
自分でも呆れるばかりのあたしにそんな優しい言葉をくれるなんて…やっぱりこの子は素晴らしい!!「コハルぅぅぅ」と叫びながら顔に抱きついてモフモフしてたら結構な時間が経ってたらしく、申しわけなさそうにコハルが[もうそろそろ部屋に戻りますか?]と言われ…やっぱりバカ主ですみません。戻った部屋の惨状に顔を蒼くして突っ立ってるとコハルが側にきてあたしに[すみませんでした]と謝ってくる
「どうしてコハルが謝るのよ」
[いえ…私が遅くならなければと思いまして…少し主の魔力を辿るのに手間取ってしまって…]
どこでもわかると言ってたあたしの魔力が辿りずらくなってるって事はやっぱりあたし自身の魔力が低下してる事が考えられるけど…ただ、さっきの水魔法と地のシールドの実験によって、それって火属性だけ限定だって立証されたのよね…
「…という事はあたし火属性の魔力無くなってるの?」
[…無くなる?]
あたしはコハルに火属性の力がほとんど使えなかった事を中心に今までの経緯を話した。コハルは何も言わずに聞いていたけど、あたしが話し終わると[あぁ、それは当たり前です]と普通に返された。
「…つまり、あたしは火属性の魔力は持ってないって事?」
[違います。それならば私が生まれるわけがないですから。…しかしある意味それは私の責任と言いますか…]
「どうしてコハルのせいなのよ?」
コハルはさっきのあたしのように首を縮めて話しづらそうにしている。あたしは話を促すように「言っちゃいなさいっ!」と首元をガシガシと撫でてやった。あたしのガシガシ攻撃に負けたのか、気持ちよさそうにしているコハルが言った言葉に目が点になる
[私が魔魂の状態の時に主の火属性魔力を全部吸い尽くしたんです]
「はぃ?あ…もしかしてあの卵の吸引?」
[はい。全部吸い尽くされた状況になると普通は一ヶ月ぐらいは魔力を生成出来ないんですが、主は少量ですけど次の日には生成されていたので、そんなに心配はしていなかったんです。ですが、微弱になっていた火属性の魔力は他の属性魔力に圧倒されていて…]
「…ん?」
…つまりあたしの身体の中で、いじめられっ子な火属性魔力がいじめっ子な他の属性魔力にいじめられていたような状況だったってわけですか?
[私たち属性聖獣は同じ属性の魔力ならばすぐに探知出来るんですが、他属性になると結構な魔力が放出されない限り位置を特定する事が出来ないんです]
あたしが水属性の魔力を使ったから位置が特定出来たと…という事はやっぱりあたしは普通になったわけでも何でもなくて…
「このまま火属性の魔力がいじめられっ子だったりするの?」
[いじめられっ子かどうかは…わかりかねますが、一ヶ月もすれば元の状態に戻ります。そうすれば他属性とほぼ同じ魔力に戻りますので」
今日ダムを作った勢いな水属性と同じ魔力…ラッシュの前で火属性がフルパワーじゃなくて良かったって心の底から思います。
「でさ…あたしの魔力、火と水と地だけって事はないよね?」
[もちろん。天属性も含め四大属性全てをそれぞれにその身に宿してらっしゃいます。それもほぼ無限に生成されていて、魔魂のように吸収されるだけ奪う物が対象でなければ魔力が無くなるなんて事はないと思いますよ]
吸収されるだけ奪うって恐ろしい事をさらっというね…コハルのお腹の中の雷属性の魔魂が悪魔に見えてきた。
「でも他の魔魂はちょっとずつ魔力を得ていくんでしょ?」
[はい。卵のままでいるとより多くの魔力を吸収出来、孵化後の強さを決めます。ですが周りの卵がさきに孵化してしまうと食べられてしまう危険も伴いますので普通は魔力を孵化出来る最低限まで溜めると孵ります。簡単に言ってしまうと他の魔魂は腹三分ぐらいで孵るのに対して私は満腹で孵ったという状況でしょうか?]
自分がエサみたい…というかエサなんだけど、まぁ…あたしの使えないハイスペックがコハルのお腹を満たしたのならよかった。
[魔魂自体に魔力吸収の制限量はありませんが、本来は魔力を全て吸収してしまうと母体の生命の危機に直結されるので魔魂自体で吸収をセーブをしますが、主は他属性の有り余る魔力が存在していた故に、火属性の魔力を全て吸収してしまいました]
美味しい物が目の前にあると…我慢出来なかったんだね…。どっちにしてもあたしは今はヘタレ魔法使いでも、一ヶ月後にはハイスペックに戻るらしい。あたしはがっくりと床に手をつくと儚かった夢に別れを告げた。
手をついた場所が丁度ラッシュの魔法陣の場所だったらしく、部屋の中にシールドの姿がはっきりと浮かび上がる。部屋は惨状だったけど、残りの水も全て窓から放出されたのであたしはついでにシールドをオール解除した。その途端バンッと音を立てて開かれる扉
「アサミズ…」
開かれた扉の向こうに立っていたリュージュの顔は蒼く、唇にも色が無い。あたしの姿を確認するとフラフラと近寄ってくる。足取りがまるで亡霊のようでちょっと気持ち悪い
「なっ何よ、その顔!何かあったの?」
「何かあったのじゃないっ!!警備兵から五階の部屋から煙が上がっていると連絡があって…私は……ラッシュを呼び出せば授業は終わったと言うし…部屋に着いたら着いたでいくら扉を叩いても全く開きもしない…転移魔法を使えば弾かれる。そんな状況だったのに…」
あ…もしかして煙って…湯気ですかね?確かに大量だったからなぁ…煙に見えたかもね。それに扉と転移魔法はシールドで弾かれたんだろうな。助けに来た人を妨害するって…やっぱあたしの魔力は無駄なハイスペックだわ。
「…アサミズに怪我は無いのか?」
「あ…全然平気」
だってあたしが死にかけたとか言っちゃうと、この人の方が死んじゃいそう顔色なんですもん。それぐらいリュージュは蒼い顔をしている。ま、幸いあたしの体濡れてないし…
側に膝をついたリュージュはあたしの身体を頭から触って怪我がないか確認している。
「煙が上がった状態なのに…部屋は水浸し……一体何があったんだ……」
「あはは…」
初級水魔法で溺れかけたなんて恥ずかしくて言いたくない。待てよ?さっきのコハルとの話を使って…
「あのですね…コハルを呼び出すのにちょっと力の加減を間違えました」
[主は今火属性の魔力がほとんど無い状況だったので…]
ぴったりとした合いの手のようにコハルがフォローを入れてくれる。うん…やっぱコハルは最高の聖獣だ。
「コハルは火属性……そうか…魔魂で火属性の魔力が減少していたのか…だから水属性の魔法を爆発させたんだな」
まぁ、現実は水属性の魔法を爆発させたんじゃなくて…溺れただけなんですけど。…そこは「あはは…」と誤魔化しておく。リュージュも安心したのか苦笑を浮かべていた。
そんなあたし達のほのぼの雰囲気が突然破られた
「なっ、何なんですかっ!!この部屋の惨状はっ!!!そ、それにそのお姿は!?」
口元を押さえて絶叫するナサエラさんが登場されました。しかも言われて気付くあたし達の姿。リュージュの手はあたしの腰部分にあるし、あたしのシャツはさっきの暑さでボタンが開かれていて…コハルはいつの間にかチビサイズになって乾かしたソファの上でちゃっかり丸くなって寝ています。最高の聖獣はどこいった!?
はい…ナサエラさんの背後に立ち上る怒気が恐ろしいです
本日は昨日の話の訂正分です。
大きな話の流れは変わっていませんので読み返さなくても大丈夫ですが、より詳しく倍以上の長さになってます。
手抜きですみません