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至上最強迷子  作者: 月下部 桜馬
2章 魔術学院入試編
66/85

66話 火曜・魔術講義③

 

 ようやくラッシュが差し出した紙に描かれた魔法陣はあたしの愛読書『はじめてのまほうのつかいかた』にも載っている様な簡単な魔法だった。うん、やばい。これぐらいの魔法なら属性関係なく全部詠唱どころか念だけで出来ちゃいます。


 「あ…の、さすがにこれぐらいだったら…詠唱で出来るけど…」

 「もちろん火属性魔法の初歩ですから、火属性の者であれば詠唱で出来て当然なんですが…これはチェッカーですので公正さが重要なんです。なのでこの付属の魔法陣で発動して頂きます」


 おいおい…まだ念とか詠唱だったら何とか誤魔化せたのに、魔法陣とかで固定されちゃったら魔力を誤魔化せそうにないんですけどっ!!


 「はは…」


 とりあえず顔を引きつらせながら紙を受け取ってしまった。魔法陣の解析をしてみてもチェッカーらしく、余計な部分が無いきっちりと組まれている物で、属性魔法を惜しみなく使う魔法陣になっていてラッシュの目を避けて細工なんて事出来そうにない。あたしが冷や汗を背中に流してるとラッシュが部屋の中央に別の魔法陣を描く


 「…何その魔法陣?チェッカーに関係あるの?」

 「いえ、魔法使用は事前に申請したんですが、何かあったら困りますので一応部屋全体にシールドを張らせて頂きます」


 いやいやこんな初級魔法でシールドとかありえないし。うん?…もしかして私の存在気付いちゃってます?


 「さぁ、いつでもどうぞ」

 「………」


 うぇー。やりたくないよぉ…今更止めますとか無理なんだろうなぁ…あたしは手の中の紙の端を弄りながらちらっとラッシュを見てみた。まっすぐにあたしを見つめて逃げる隙なんてありゃしない。


 …こうなりゃ覚悟を決めましょう。どうか、ラッシュのシールドの範囲で収まりますように…あたしは一度大きく深呼吸をしてから紙を右手の手の平に載せた。すると魔法陣が発動し赤く光を放ちだす。手に熱が伝わるのを感じると『出来る限り最小で!!』と何度も念じる。効くかどうかわかんないけどね…


 「綺麗な色ですね…」


 うっとり魔法陣の色に見とれてる場合じゃないから…もしかしたら部屋吹っ飛んじゃうかもしれないからっ!!魔法陣の真ん中に赤い光が集められるとそこに火が発生した。


 ポッ



 「……え?」

 「………」


 えっと…あたしの見間違い?どうみても小指サイズのちっちゃな炎が一瞬現れただけなんですけど…この魔法陣の紙、おかしいんじゃないの?まぁ、求めてる事まんまだったんだけどさ…現実になると何だか複雑。いくら何でもこんなちっちゃい炎にしなくてもいいんじゃない?ほら、ラッシュだって言葉失っちゃってるし…


 「ヒヨリ様…」

 「わかってます!今度は本気でもう一度やり直します!!」


 別に手を抜いたつもりはなかったんだけど、ちっちゃくなれと願ったのは事実なんで…今度はさっきよりちょっと大きくなれって念じた。光の発生も手の熱もさっきと同じで…やっぱり現れたのは『ポッ』で何度やっても同じだった。息の上がるあたしにラッシュが頭を抱えてる


 「ヒヨリ様…本当に魔術学院の試験受けられるんですよね?」

 「はい…」


 言いたい事はわかります。あたしもそれでなくても受かる自信が無いのに更に崖下に急下降してますから。

 …というか、あたしって人外とか言われてるけど、それって全くのデマだったって事?


 「…あたし全然普通の人間なんですかね?」

 「……この状態だと、魔法使いとしては普通以下です」

 「なんだ…」


 あたしは身体から一気に力が抜けるのを感じた。


 「何だ…全然普通なのか」


 悲しくなんて全然無い。だって会う人会う人に想像の範囲を超える人間とか言われて…自分が化け物みたいで実は軽く傷ついてた。あたしの求めるのは平凡!ビバ平和!願いが叶った!!


 「いよっっっしゃぁぁぁぁ!!!」


 不出来を前にして雄叫びを上げるあたしにラッシュは心底呆れた視線をくれる。でもいいもんね!今のあたしを傷つける物は無い!!あたしの黒目はこの世界での純粋な黒の加護の黒目とはきっと別物なんだ。大した事ないじゃん、あたしの黒の加護!早くリュージュに知らせてあげないとね


 こんな平凡人には魔術学院なんて受からなくて当然だし、元の世界に戻るのは働きながら研究しよう!いやー良かった良かった!頭の隅っこで「ほんとに普通なのか?」とテリサン村で作った性能の高い魔法道具や質のいいと言われた魔石の事を思い出すけど…無視です!無視!!


 「あの…、一応授業続けましょうか?」


 ラッシュがあたしとは真逆のがっかりした様子で話しかけてくる。うん、あたしが凄い魔法使いなの期待してたんだよね?ごめんね!裏切っちゃってっ!!授業自体が無意味にも思えたけど、さっきラッシュが言ってた禁戎の情報がどんなタイミングで得られるかわからないし、ラッシュとの繋がりはちゃんと確保しておいた方がいいと思う。


 「宜しくお願いします」


 受験勉強すっごく憂鬱だったけどいい事があってよかった!あー今晩からすっきり睡眠出来るわっ!!


 ラッシュが続きの説明をしている間中あたしのニヤニヤ顔は止まらなかった

はい…ひより有頂天です。

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