65話 火曜・魔術講義②
すみません。ちょっと他でトラブルがあって短いです
ラッシュによって囁くように呟かれたその言葉をあたしはずっと求めていた。
「禁戎の法であれば…」
「禁戎?…それって…」
禁って言われるぐらいだし、異法って事よね…。異法って言われると想像してしまうのは自分の存在であって…それって…
「…黒の加護や白の加護の事を指すんじゃないの?」
「ヒヨリ様は黒白の加護をご存知なのですか?」
「え?」
しまった…あたしは魔法に無知な留学生だった
「そういうのが存在する事だけ…陛下に教えて頂きました」
嘘ではない…はず。だって黒の支柱に会わせてくれたのだってリュージュだし…。ちょっと無理やりではあるけど自分を納得させる
「そうですか…。しかし禁戎の法も黒白の加護も学院入試には関係の無い事です。それでなくても覚えなくてはいけない事が山のようにあるので、今は目の前の勉強に集中して下さい」
えぇ~!!!せっかく情報が得れそうだったのに!!あたし的には受験勉強よりその件のが重要なんですっ!?何てあたしが思ってても、目の前のラッシュはこの話の続きをする気は毛頭なさそうで、次の魔力の説明を黒板に書き連ねてる。
あたしはモヤモヤした物を胸に抱えながらも、不確かな情報に無理をすると身の破滅だと思ってとりあえず勉強の為に用意されていた紙の端に『禁戎術』と走り書きする。もちろん手が空けば自分で調べる為のメモで、ラッシュに見られないようにする事と後からすぐわかるように端を折り曲げた。
「それでは、次は魔力の説明です。魔力に純度があるのはご存知ですか?純度が高ければ同じ魔法を発動しても全然威力が変わってきます。魔力の純度が高ければ高い程、魔法力は上がるというわけです」
「純度?」
…そのアルコール度数みたいなのは何なんでしょうね?…後から金なんかも純度あったなぁなんて考えて、一番最初にアルコールってあたし女としてどうなの?ってちょっと凹んだ
「はい。魔力というのは生体エネルギーの突然変異ですが、その中でもやはり属性魔力をずっと高めた家系と一代限りの属性魔力でしたら属性の魔力純度が全然違います」
「血筋って事?」
「はい、血統です。国の上位貴族達は大体これに当てはまりますね」
血統って聞くと、つい純血種!と売り出されてる動物を想像してしまうけど…意外とミックスの方が遺伝子的には強かったりするのにと考えてしまう。
「ヒヨリ様の火属性の純度を調べてみますか?」
「え?そんなの出来るの?」
「えぇ。本来はチェッカーではないですが」
と言ってラッシュが部屋の隅から持ってきたのは、小さなガラスの中で火が燃え続けている一見するとランプのような物だった
「これは?」
「これは火灯篭といいまして、世界の標準と呼ばれる属性魔術師が各属性の力をガラスに込めた物です。この力を基準として同じ魔法陣でどのくらいの魔法を出せるかで純度を測る事が出来ます」
う~ん、どうやってその世界標準が決められたのか…なんて突っ込みたいところは山のようにあるけど、それよりもまた訪れたピンチに頭が痛くなる
だってあたしの魔力って人外だし、普通にやってしまうと騒ぎになるのが目に見えてるよね?ラッシュが火灯篭の底から魔法紙を取り出すのに苦労している間に、あたしは火灯篭をガン見する。
…これ以上大きくしちゃいけない。これ以上のサイズはまずい
念のように自分自身に唱え続ける。まるで呪いのようだけど、今一瞬だけ呪われて力が減ればいいのに…と本気で悩んだ
コハルはどうなった?という声がちらほらと聞こえてきましたが、もう少し出るのは後になりそうです。