64話 火曜・魔術講義①
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嬉しいです。ありがとうございます
お茶を入れ直した後の会話は先程とは全然違って和やかな物だった。一番ビックリしたのがラッシュさんが25歳だった事…だって落ち着きすぎてるっていうか…どうみてもあたしより年上でしょう?
「っていうかタメ!」
「…タメ?」
「うん!あたしも25歳!」
…激しく失礼だよ?その反応。顎が外れそうな勢いで開いてますから、今までの落ち着きは何処へ行った?。しかも何また蒼ざめてんのさ…
「あ、アサミズ様…」
「あ〜同い年なんだし、敬語止めようよ。名前もヒヨリでいいし」
同じ年齢の人なんてこの世界に来て一人も会わなかったから素直に嬉しいかも、年下でも年上でもない同じ年…これってかなり貴重だ。
「…ひ、ヒヨリ様」
「ヒヨリでいいってば!あたしもラッシュって呼んでいい?」
「あ…はい。い、痛い…」
意味もなくとりあえずラッシュの背中をばしばしと叩く。いやぁ…何かテンションあがる!何だろうこの高揚感。しいていうなら高校入学したばっかりで「君何中?僕二中」「僕も二中!」「まじでっ!」みたいに盛り上がりたい感じ。
「じゃあ授業始めちゃう?」
「はい……」
…うん、まぁ…あたしとラッシュの間にはテンションの温度差がかなりあるみたいだけど…。ただ、やっぱり副長の地位は伊達じゃないっていうか、偉い人だなぁって授業が始まると実感した。
***
講座授業といえど、それなりのスペースが必要だと言われたのであたしのバリケード部屋は論外だった。
「…とりあえず、学習部屋を作りましょうか」
そういうとラッシュはソファや動かしたい家具に魔法陣が描かれた紙をどんどん貼付け、一通り全部貼り終えたら一気に魔法を発動させた。すると魔法陣を貼られた家具が少し宙に浮いた状態になる
「これで家具の重さが軽くなりました。ちなみにこれは地属性魔法で、物体の重さを軽くします」
「へぇ〜便利だね」
ラッシュが家具に貼った魔法陣を一つ見て解析してみると、どうやら物を空中に浮かすというよりは重力を調整している魔法らしい。こんな魔法もあるんだねぇと軽くソファを押してみると宇宙空間のように押された方向にふわふわと移動する。
「コレ面白い」
そこらに浮かんでる家具を突いて遊ぶ。家具同士がぶつかってビリヤードみたいに弾けるのを見て笑ってたら「遊ぶな」とラッシュに叩かれた。う〜ん叩かれておいてなんだけど…まだまだ遠慮が見えるなぁ…「すみません」って謝られたし、友達になる道は遠い。宰相なんてばしばしあたしを叩いてきたんだし、もっとカモン!いや…決してM属性じゃないんですけどね…。
取りあえずスペース確保の為に応接室のソファやらを片隅に撤去して24帖ぐらいの広い空間を作り、そこに大きな黒板のような物を持ち込むと簡単な教室みたいになる。…こういう空間をわざわざ作るとどうして昨日は宰相とバリケード部屋で勉強したんだろ?とか考えちゃうよね…。
「凄いなぁ〜あっという間に出来ちゃった」
あたしがそう呟いたのと同時にラッシュが家具の魔法を解除したらしく、ドンっという音が部屋に響く。
「さて、予定よりはかなり遅れましたが始めましょうか。ヒヨリ様、執務机の方へどうぞ座って下さい」
色々な意味ですみません。そのやつれの賠償は一番の原因であるリュージュに後で請求して下さい。あたしが言われた通りに執務机の椅子に座ったのを見届けるとラッシュは持ってきた黒板に何かを書き出した
そこには『天』『火』『地』『水』という4文字を時計でいうと天を12時に火を3時、地を6時、水を9時という場所で描かれていた。そしてそれを書き終わるとラッシュはあたしの方向へ向き直る
「この世界は四つの魔属性で形成されています。対象位置にある物は反属性となっており相性が悪いです。各属性に補佐属性として無数の属性が存在していると言われており、現実に今でも新しい属性の発見などもあります。ただどんなに新たな属性が発見されても全て4大属性のいずれかに所属しています」
まぁ…これぐらいは自分で勉強出来ましたよ。天なんて元の世界では無敵っぽいのにこの世界では補佐属性に『雷』や『風』が付いてる事から推測して、どちらかというと大気や空中を表すような感じらしい。逆にもの凄く天っぽい『光』は火の補佐属性で他には『炎』などが『火』の補佐属性にはあるらしい。
「ヒヨリ様の瞳が赤いように、人の魔属性の判定は瞳で行います。私のような者も極稀にいますが、一人一属性が基本です。単一属性では出来る事が限られてしまうので、自分の属性の横に書かれた属性の力を借りて、新たな出来る事が生まれます。例えば地属性の私が『火』や『水』の属性力を借りると『錬成』が出来るようになります。『天』の属性力を『水』や『火』が借りると雨などの自然現象が起こります。ここまでは理解していただけましたか?」
この辺は別にどの本にも載ってた事だし、ばっちり理解してますよ。あたしがオッケーの形を指で取るのを見て、ラッシュは頷きまた黒板に向かって何かを書き出した
「…召還術と召喚術?何が違うの?」
「術者が聖獣や精霊の力を魔力化して使うのが召還術。個体を魔力化する事なくそのまま使役する事を召喚術と言います。聖獣や精霊は魔力が増幅して出来た個体ですので、どちらにも対応出来ますが、召喚術はその他にも使役契約を結んだ者を呼び出す事が出来ます。ただし使役契約を結べるのは魔力が一定以上有るものだけですので、見た事ありませんけど…膨大な魔力を持った人や竜族、海人などが可能と言われています」
…膨大な魔力を持った人って…もしかしてあたしも含まれちゃう感じ?あたしって実は召喚されちゃう側の人間?
「あの…質問いいですか?」
「何です?」
「例えば…あたしが竜族を使役しようと思ったらどうすればいいんですか?」
…もしかしたらあたしがこの世界に来たのって何者かが行った召喚魔法に引っかかった可能性が高くない?ならそこに元の世界に帰るヒントもあるかもしれない!
「初心者が出来るはずもないですが…そうですね。書物などでは竜族や海人は直接会いに行って合意の上、使役契約を結ぶのが正しいやり方と載っています」
うん?…そんな契約、元の世界で結んだ覚えないけど…?という事は召喚術はやっぱり違うのかな?折角異世界トリップの謎にちょっと近づけたと思ったのに…残念。
だけど続くラッシュの言葉にあたしは釘付けになった。
後半はラッシュによる魔法説明文がだらだら続いて済みません。
重要な設定部分なので次回もこんな感じかもしれません。