59話 悪魔が来たりて、地獄を言い渡す
帝都の城に着いて、次の日は休みを貰った。その間にメルフォスさんに会ったり、城の間取りを覚えたり…全部は覚えられなかったから自分の使用しそうな所だけ把握した。あたしに用意された部屋はリュージュの部屋以上に豪華絢爛な部屋で、客間らしいその部屋は落ち着かないので部屋替えを希望したが泣きながら懇願という却下をされ…仕方ないので部屋にあった移動出来そうな家具で一部の空間を四畳半に区切った。用意された、というか元からあったベッドがその中に入るわけがないので、調理場からいらない木箱を大量にもらって囲われた空間に簡易ベッドと机を作った。
傍から見るとデカイ応接間の隅に突如バリケード部分が登場したみたいになっており、中に入ると…木箱による簡易机とベッド…戦後な香りがプンプンと漂うけど…うん、落ち着く。そんな感じで次の日は終わり、こんな感じで1ヶ月過ぎるのかと思いきや…
「…落ち着いたか?」
と夜にリュージュが持ってきた今後のスケジュールに村に逃げ帰りたくなった。
「…何ですか?これ」
手の中にある1ヶ月の予定表を凝視してしまう。見間違いかと思ったそれは何度見てもやっぱり変わらず…
「月曜、言語。火曜、魔術(医術含)講義。水曜、魔術(医術)実技。木曜、政治経済。金曜、歴史・地理。土曜、剣術訓練。日曜、礼儀作法。各1日休憩は10時間……え~っとどこから突っ込めばいいのか…」
「…これでも最低限だ。期間が短いので全部上澄を浚うぐらいしか出来ないだろうが…しないよりマシだからな。ちなみに明日から朝から晩までみっちり各指導者の指示に従って貰うぞ」
「つかぬ事をお聞きしますが…休みは…」
「この1ヵ月は基本無いものと思え。ただ頑張り次第では2週目からは考えないでも無い」
…鬼が居ます。いや、鬼より恐ろしい皇帝がいます。
「…死にます。確実に死にます」
「大丈夫だ。調子が悪くなったらシーがいる。私が皇帝に就いた時にもシーが居たから政務で2ヶ月ほどほぼ不眠不休でも大丈夫だった。人間そんなに簡単には死なないさ」
いやいや…筆頭医確実に皇帝に何らかのジャンキー状態にしてるよね?それ。あまりの恐怖にひぃぃぃとワザとらしいほど怯えてみせるが、リュージュは動じない。
「ちっ…」
軽い舌打ちをしたあたしを見て、リュージュがスケジュールに何か書き込んでいる。それを再び渡されたあたしはソファに座っていたのをすぐ降りて土下座した。
「申し訳ありませんでしたぁ!頑張りますから『休憩時間。時と場合による』は元に戻して下さぁい!」
半泣きのあたしを見て、リュージュは無言で訂正に訂正を入れてくれた。だってどうみても10時間って休憩時間=1日分でしょう?食事とか睡眠とか全部含まれてるんですよね?それを時と場合によるって……リアルに恐ろしすぎるでしょう。
「…あ、8時間になってる」
「ペナルティーだ。1週間ごとに見直すから、頑張って休憩時間も伸ばせ」
そう言ってリュージュはソファを立つと、「今日はゆっくり休め」の今日の部分を強調して部屋から出て行った。その後にあたしの「のぉぉぉぉ」という嘆き声が城全体に響いたのは言うまでもない
300万PVの感謝を込めて、通常更新とは別に、短いですがカットしようと思っていたシーンを載せました。
ありがとうございました。