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至上最強迷子  作者: 月下部 桜馬
2章 魔術学院入試編
57/85

57話 皇帝モード

 玄関を開けてると忘れていた悲惨な部屋の状態をが飛び込んできた。うん…そういえば昨日コハルが産まれた時に酷い状況になったんだっけ…玄関と天井は直したけど、破壊されたままの机とか散乱した本とか…そのまんま。で、今のあたしの状況はその部屋の真ん中に正座させられていたりする。目の前には椅子に座ってそこら中に散乱していたあたしの受験資料を手にとって目を通してるリュージュ。


 「…これも古い。全然使えない」


 リュージュは手に取っていた本を投げ捨てた。投げ捨てた先にはすでに山のように本が積み重なっており、それらはすべてここ一ヶ月あたしが受験勉強に参考書にしてきた本たちだった。もちろん『はじめてのまほうのつかいかた』もすでに山の一部となっていて、リュージュはため息を一つ吐くとあたしに視線を向けてきた。


 「こんな資料で勉強していたのか?」

 「はは…」


 だって村の本屋で買える本なんてたかがしれてて、これでも一番近い大きな街から取り寄せなんかをしてもらって精一杯のものを買ったのだけれど…


 「アサミズ…帝国魔術学院は帝国の中でもトップクラスの学校だ。その学校に私やメルフォスの後盾なく平民受験で入学したいのだろう?」

 「……はぃ」

 「…敢えて聞くが、入試の筆記試験の魔法陣はどんな物を用意するんだ?」


 …もちろん『はじめてのまほうのつかいかた』から適当に魔法を写すつもりでしたけど…そんな事を言ったら殺されてしまいそうな気がするのは空気読めるんでわかります。


 「まだ…考えてなかったかも…ほら!昨日試験内容知ったばかりだし!」

 「………」


 リュージュが頭を抱えるのを見て「あ…あたし落ちたな」って確信しちゃったり…どうしよう?とりあえずライザ母さんが帝都で開く店をお手伝いしながらもう一度きちんと受験勉強するしかないか…ま、やって無駄な事なんてないのだし、この一ヶ月の勉強だってきっとどこかで役に立つだろう。


 「アサミズ…」


 すっかり頭の中で再来年受験モードに切り替わっていたあたしに地を這うような声が届いた。声の方を見るとリュージュが笑顔だけど背後に黒いオドロオドロシイものを背負ってる。見るからに皇帝モードになったリュージュに嫌な予感がする…というか嫌な予感しかしない。この人にギャップ萌えとかありえないし、ひぃって叫び声しか出ないわ!


 「今から猛受験勉強だ」

 「え?いや…あたし再来年入学でもいいし、っていうか受かるまで頑張るし」

 「…絶対来年入学させてやる。すぐに私と一緒に帝都に来い。それぞれのエキスパートな先生も見繕ってやる。…城でみっちり試験勉強だ。まさか平民受験したいって言ったくせに断るなんて事しないよな?」

 

 さらに笑みを深めるリュージュはあたしが正座のまま壁際までズザザザーって下がってしまうほど恐ろしく。…怖すぎる…いつもの紋章使いのわんこリュージュは何処へ行っちゃったんですか!?助けを求めようとコハルに目をやっても頑張ってといわんばかりに尻尾をフサフサと振っている…裏切りやがった…


 「しっかり陰から見守って合格させてやる」


 ダラダラと流れる汗はもちろん冷や汗で、そんなあたしを見てリュージュの背後の黒さがどんどん増していってるのは…気のせいであって欲しい。そして黒いリュージュは尽くあたしの先手をつぶして行く


 「ちなみにメルフォス家がどうのって言い訳は聞かないからな、メルフォス家も今週中には帝都へ引越しだ。2.3日アサミズが早いぐらいどうってことはない。それどころか帝都の城に『1人』で居るメルフォスは早めにアサミズが来れば喜ぶだろう」


 …メルフォスさんの裏切り者ぉー!!…なんて本人にとって完璧な八つ当たりの全く意味の無い八つ当たりを心の中でしてみる。それにしても黒い!黒すぎる!!リュージュ!!


 「…でも試験まで後一ヶ月しかないけど」

 「俺を誰だと思っている、皇帝だぞ?この国で俺の思い通りにならない事はない」

 

 いやいや…皇帝の力を一平民受験に例えるって間違ってますから。まぁ…リュージュに適当に付き合って…でもそれをやって落ちちゃったらどうしようもないし。また再来年受験という事で…そんなあたしの考えを読み取ったのかリュージュは椅子の背に持たれ、組まれた足の膝部分で手を握った体勢だったものを、足を開き、膝に肘をついて組んだ手の上に顔を乗せた前屈みの状況で笑った。


 「アサミズ…再来年など無いと思え。平民受験に失敗するようであれば私の力だろうが後見人だろうがどんな手を使ってでも入学させるからな」


 ひぃぃぃ!!そんなまんま裏口入学、一番嫌です!!!


 「頑張ります!頑張りますから…勘弁して下さい」

 「死ぬ気でやれ」

 「了解でありますっ!!」


 あたしがとっさにした敬礼姿勢に満足したのか、リュージュは椅子から立ち上がると玄関に向った。


 「30分で大事な物と簡単な身の回りの用意しろ。後の荷物はメルフォス夫人によろしく伝えておく」


 そんな捨て台詞を残しリュージュは出て行った。



 うぅ…確実に一ヶ月地獄が待ってる。皇帝モードのリュージュ恐るべし。これ以上怒らせる事は避けたいので、この世界に着て来た服や、鞄。そして数枚の着替えと日用品などを慌てて荷造りした。


 もちろんコハルの首元を腕でロックして頭に拳骨でグリグリする事も忘れない

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