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至上最強迷子  作者: 月下部 桜馬
2章 魔術学院入試編
52/85

52話 聖獣ランド開園?


 コハルに示された雲は巨大であたし達より遥か高くそびえ立ち、稲光が消える事なく走っている。どう考えても雷属性の魔魂に違いなく…ヤバい感じがプンプンする。


 「あのさ、まさかあの雲に突入とかしないよね」

 [………]


 …返事がないんですけど、しかもさりげなく近寄っていってない?稲光って近くで見てもとっても綺麗とか言ってる場合じゃないから!


 「…死んじゃうからさ…普通に雷ヒットって死んじゃうから」

 [大丈夫です。さすがに雲の中には入りません。出来る限り近づいてそこから魔力を照射し魔魂を引き寄せます]

 

 …早く言ってよ。凄くビビったんですよ?


 「魔魂て魔力に近寄ってくるの?」

 [はい。魔力は魔魂にとっての極上のエサですから]


 直接エサだと言われたわけじゃないけれど…複雑な気分なんですけど。

 それにしても雲に近づくだけで放電なんかがありそうだし…防御しておくにこした事はない。確か空気って絶縁体になったはずだから、断熱壁魔法の応用で、水分とか不純物を除けば絶縁体になるはず。後は絶縁耐力がだいたい1mmで3000ボルトだったから10cmぐらいの厚みにしておけば大丈夫だと思う。


 あたしはコハルの背中で詠唱を始め、自分とコハルの周りに魔法を展開させる


 [主?]

 「一応、電気対策しといた」

 [ありがとうございます。ではいきます]


 そう言うとコハルはゆっくりとしたスピードで積乱雲に近づく。絶縁体は上手くいっているようで稲光は相変わらず見えるが、今のところこちらに向かって放電が起こる気配は無い。それにしても、ほんと雷って危険さえなけりゃ綺麗だよね〜こんな間近で雷が見れる日が来るなんて思いもしなかったわ。


 積乱雲のかなり側まで近づいたところでコハルが止まった


 [主、ここから魔力を放出して下さい]


 …はい?魔力の放出ってあたしがやるの?


 [ここならば内部の魔魂にも届くはずです]


 だから…それを魔力だけの放出なんてやった事が無いあたしがやるの?


 「え〜っと無理」

 [主?何か気に障る事が?]

 「気に障るとかじゃなくて、やった事ない」

 [……]

 

 止まる時間。稲光の音だけが空間を支配する


 「ごめんね。出来の悪い主で」

 [いえ…そこに考えが至らなかった私が悪いです。主は普段でも微力ですが魔力が体から放出されているので……]

 「…え?そうなの?」


 あたし魔力垂れ流しなわけ?どんだけ魔力有り余ってるのさ…シュンとしてしまったコハルに対して少し可哀想だったので、ちょっとふざけた口調で話しかける


 「もしかして手をかざすだけで出来ちゃったりしてねー」


 ただここまで来てそのまま帰るのももったいないので…なんて軽い気持ちであたしはモーゼの十戒のごとくコハルの背中に立ち上がり、「いってらっしゃい!」と言う台詞とともに手を積乱雲に向けてかかげてみた。


 「きゃぁっ!!!」

 [主っ!!」

 

 手をかざした瞬間、光が目の前で弾け積乱雲に向かって手から何かが放出される。それは雲を一瞬で突き抜けたようで一筋だけぽっかり雲が無くなり向こう側が見えた。そして雲の中のその筋にコハルの魔魂と似た物が積乱雲の上部から降りてくる。


 「え?」

 [主…魔魂です]

 「……」


 魔魂は複数あり、筋を通ってこちらに向かってくる。卵なのに何だか幼い子が集団下校してる姿に見えるのが不思議…。


 「…あ、あんなにたくさん聖獣いらないけど…」


 全部孵化させたら聖獣ランドとかできそうじゃない?その前にあれ全部にあたしの魔力吸われるとか…無理でしょう…さすがに。


 [大丈夫です。必要分だけ私の体内に取り込みます。後はこの場に残しておけば元の場所に戻ります]

 「たたっ食べるの!?」


 頭の中で共食いを想像してしまった。


 [違います。魔魂同士であれば体内は保管場所となるんです]

 「凄いね。コハル」

 [主の方が凄いです]


 …うん。それはもうこの世界に来てから色んな人にウンザリするほど聞かされてきたから、そんなうっとりした顔で見つめられても…。


 「一個でいいよ…」

 [しかし雷属性の魔魂は貴重ですので、ストックしておくと後でハンターとして結構高値で売る事が出来ますが…]


 …売るねぇ。駄目だ、一度幼稚園児に見えたものを売るなんて出来ない。


 「ううん、一個でいい。…でもあたしが触ると聖獣化しちゃうからコハル保管でお願いします」

 [わかりました。どれにしますか?]


 列をなしてこちらに向かってくる魔魂を見て、何だか一つを選ぶのも可哀想な気がするけど…全部は養えないのだから、心を鬼にして…一つを選ぶ。そう思って探したら魔魂の列から少し遅れて動きがぎこちない一回り小さな魔魂があった。


 …どうみてもあれ弱そうに見える。ここに放置すればいずれ魔獣になる筈で…弱そうなのは…淘汰されちゃう可能性が高い


 「…コハル。あれ、あの一番後のちっこいの」

 [あれですか?あれは…もしかして劣性魔魂かもしれませんよ]

 「いいよ、馬鹿な子ほど可愛い」

 [わかりました]


 そういうとコハルはあたしが指した魔魂を引き寄せ、大きく開いた口で飲みこむ。コハルが傷つくから口にはしないけどね…見た目どうみても共食いです。

 無事にコハルの体に魔魂が落ち着いたのか、コハルは次に尻尾で大きな風を起こし残りの魔魂を積乱雲へと戻した。そして体を積乱雲から反転させると羽根を動かし始めた


 [では、戻り……]

 

 しかしコハルは途中で言葉を止め、素早く向き直った体をまた積乱雲に向けた。そして耳を色々な方角に動かし何かを確認している


 「コハル?どうしたの?」

 [どうやら……一部の魔魂の魔獣化が始まっていたようです]

 「え?」

 [すみません…主。来ますっ!!]


 そのコハルの言葉と同時に落雷がこちらに向かってきた。絶縁体の壁によって直撃は免れたが衝撃はかなりのもので、コハルごと5mほど後方へ弾き飛ばされる。


 そしてあたしでも聞こえる咆哮が空に響き渡った。

活動報告にてラフ画、筆頭医シーを掲載しました

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