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至上最強迷子  作者: 月下部 桜馬
2章 魔術学院入試編
51/85

51話 プチ旅しましょう!


 実は今、空を飛んでいます。夢の世界なんかじゃありませんよ。リアルですリアル!コハルの背中に乗って大空に舞い上がってます…昔アニメで空を自由に駆け巡るとか憧れた事もありましたけどね…実際は恐怖のみです。だって落ちたら確実死にますから…すぐ横に雲らしき小さな水の集団があるとこを見ると上空2000Mぐらいですよね?スカイダイビングの高さを装備無し、丸裸状態で飛行とかってありえないですから…唯一の救いはコハルの背中に埋もれてるので寒さだけは緩和されてる事ぐらいですよ…

 

 「…何でこうなった?」


 コハルの毛に埋もれながら記憶を辿ると思い出すのは今朝の事。前日に仮修理した玄関をきちんと直して、コハルに破壊された天井部分も補修魔法を完了した後にお茶をしながら休憩してる時だった。

 それは何気なくあたしがコハルに聞いた言葉が事の発端だった。


***


 日本茶を啜りながら側にいるコハルに視線を向けると、身体を舐めて綺麗にする作業に没頭していた。それを見ながらこういう仕草は猫系だよな〜なんて思う。見た目狼なのに…でも聖獣はあたしの魔力であって…純粋な獣ってわけじゃないだろうし…ってそこがよくわからないんだよね…。


 「あのさ…魔魂ってそもそも何なの?」

 [魔魂…ですか?]


 コハルが毛繕いを止めてあたしに視線を向けてくる。


 「うん…ただ気になって、人が作ったものなの?」

 

 もし人が作ったものであればあたしの無駄なハイスペックで作り出せるかもしれない。という事はもう一つ魔魂を作ってそれでレポートを書けばとりあえず悩みは解決しそうなのだけど…というのは表向きの理由で、単に魔力を吸収して獣を産み出す卵はあたしの研究心をガンガンに揺さぶってくれたので研究したい!っていうのが本音だったりする。残念な事にコハルは気付いたらすでにカチコチの銀色の卵だったので、最初の状態すらまともに見れなかったのだ。そうなると疑問を解くためには魔魂自体のコハルに質問するのが一番だと思ったのだけど…


 [いえ、魔魂は大地の力が溢れる場所に自然に生まれる魔力の結晶です。そのまま自然に放置された状態だと魔獣となり、人の魔力が加わると知識が同時に込められ聖獣となります]

 「え…じゃあ…自然にゴロゴロしてるって事?」

 [ゴロゴロはしてませんが…、例えば私は火山で生まれました]

 「か…ざん?」

 

 火山と言われるとどうしても頭の中にど〜んど〜んと岩が飛んでる噴火状態を想像してしまうのだけど…無理無理そんな場所にいけるわけない。


 「…そんな危険な場所にある魔魂をどうやって捕獲するの?」

 [別に噴火の有無は関係有りませんから。それよりも長年の過酷な環境によって炎の力が凝縮された場所に、魔魂は生まれます。水系ですと海の大渦地帯や、大滝壺。風系ならば風の止まぬ絶壁や竜巻地帯。土系は強力な磁力地帯。氷系は氷山。簡単に言うとこんな感じでしょうか。魔魂専門のハンターがいまして、それによって各場所の魔魂が捕獲されるというわけです」

 「…なるほど。つまりコハルは火系の聖獣なわけね」


 まぁ…体の色からしても水では無いと想像はしていたけれど。


 [はい。そのはずなんですが…ただ主からの魔力は複数の属性が流れ込んできましたので…完璧な火系というわけでは無く、水も変な感じでは使えそうです…]

 「変な感じ?」

 [はい…例えば…]


 コハルはそう言うと大きく息を吸い込むと、口を閉じ二回ほど咀嚼の動作をする。そして再び開けた口から小さな丸い水の塊が飛び出し、壁に当たった。壁から湯気が立ち上ってる様子からして飛び出した物はお湯らしい。

 

 「…お湯?」

 […よくわかりませんが、吸い込んだ息から水を作り出す事が出来る様です。ただどうしても吐き出す時には炎と一緒なので温度が上昇するようですが…]


 自分でもなぜそんな事が出来るのかよくわかっていないのか、不思議そうにこちらを見つめるコハルにあたしは顔を引きつらせてしまう。大気中の物質から水を作り出す。つまりコハルの口の中で、化学反応が起こってるわけで…ごめんねコハル。それは多分思いっきりあたしの元の世界、つまり白の加護の分野だと思うわ…。


 「ま…いんじゃない?便利で…」

 

 笑って誤摩化すけど…つまり、あたしから産み出された聖獣はやっぱりハイスペックな有り得ない状況になるという事がコハルで証明されたわけで…そんなレポート提出出来るわけもないし…だからといって魔魂を取りにいくとか無理だし…


 「…魔魂のレポート、どうしようかな…」


 課題提出が出来なければ確実に試験落ちるよね?…どうしよう。諦める?「自力で受かる!」とかあんなに皇帝に大見得切ったのに?う〜んと頭を抱えるあたしを不憫に思ったのかコハルがあたしの腕を鼻先でつついてきて言った


 [主、実は少し離れていますが、行けない距離では無い所に魔力が溜まる気配があります。そこなら魔魂がある可能性がありますが…。私の翼ならそんなに時間もかからないと思いますし行きますか?]

 「え?そうなの?」

 [はい。どういった系統の魔魂かはわかりませんが…」


 …ほんの少しの望みでもそれを手に出来る可能性があるなら懸けてみるしか無い。あたしはコハルの頭を撫でて「お願い」と言った。


*** 


 …そして現在に至る。

 

 「コハルぅぅぅ〜まだまだ遠いのぉ?」


 ビョウビョウと風の音が鳴る中で思いっきりコハルに向けて叫ぶ。凄いスピードで雲を抜けるので開けた口の中に水分が入ってくる。


 [いえ、もう見えてきました]

 「え?そうなの?」


 下を見るのは怖いけど…ちらっと覗くとどうみてもそこには緑の絨毯が広がっていて単なる平原と思われ、どう見ても過酷な環境には見えなかった。


 「…魔魂がありそうに見えないけど」

 [主、前方です]


 …前方?コハルに言われて前方を見てあたしは固まった。どう見ても前方には雲しかない。ただその雲があたし達の位置よりさらに高く昇っているのを見て嫌な予感がした


 「…あれ?」

 [はい。あの前方の雲から魔力が滞る気配がします]


 でしょうね〜。



 どうみてもあの雲『積乱雲』ですから…

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