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至上最強迷子  作者: 月下部 桜馬
2章 魔術学院入試編
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48話 安らぎ


 その後も「可愛い〜!」の一言で、ひたすらミレーヌは聖獣を弄びまくり、いささか腕の中の聖獣がぐったりし始めた。ミレーヌはもともと素直なのとまだまだ子供なんでしょうね…さっきまで泣いてたのに今はもう満開の笑顔、気持ちの転換が早くて羨ましい限りです。大人になると…ねちっこくなるからなぁ…あ、それはあたしだけか?


 […主、もう限界です]


 腕の中の聖獣はそう言うと…ミレーヌから飛び降り少し離れたところで、また身体を一回転させる。そして姿が現れた時と同じ冷蔵庫サイズになった…


 「あ……」

 「………」


 やばい…。やっぱり元の姿は恐ろしいのかミレーヌが聖獣を見て固まってる。


 「こ…こら、聖獣…」

 

 早くちっこい姿に戻って…と言いかけた時に横から正しく黄色い声援が飛んで来た


 「かっこいい〜〜〜〜!!!!変身も出来るのねっ!!!」


 ミレーヌは何の迷いも無しに冷蔵庫サイズの狼に飛びついている…。え〜っと…初めに小ちゃいサイズを見たのが良かったのか、それとも全然冷蔵庫のサイズでもおっけーだったのかよくわからないけど…ま、怯えてないから…いっか。


 「モフモフ〜!!!すごく気持ちいいっ!!!ヒヨっ来て!凄く気持ちいいよっ!!」

 

 ミレーヌが聖獣の首元にスリスリと顔を近づけるのを見て…あたしも釣られてとりあえず後から抱きついてみた。すると紅い毛は想像通り高級ビロードのような感触で…こいつ狩人に狙われて皮剥がれちゃうんじゃないか!?って心配してしまうほど気持ちよかった。


 [あ、主!?]

 「お前…ほんと気持ちいいね…」

 「でしょう!」


 ミレーヌを全面に、あたしを背後に抱っこした状態で聖獣は身動きが取れず固まっているが、尻尾は左右にパタパタと揺れていたのでご機嫌な感じではあると思う。大きさを元に戻した事が良かったのかさっきほどのぐったり感は消えてるみたい。あ…どうしよう…良からぬ事を考えてしまった…でも思いついたら…どうしても実践してみたくなるのは科学者の血で…


 「ねぇ…あと2倍ぐらいの大きさになれる?」

 [もちろん出来ますが?]

 「………」


 背後から期待を込めた目で聖獣を見つめると…聖獣は大きく息を吸い込み、あたしとミレーヌに自分から離れるように言い、そしてそのまま大きく一回転しようとして飛び上がると轟音を立てて天井を突き破った。慌てて着地した時にはすでに身体は2倍のサイズになっており、着地先の机を粉砕した。咄嗟の判断でこの家全部とあたしとミレーヌを空気の膜で覆ったのは良い判断だったとあたしは自分を褒める。お陰で轟音は外部には漏れなかっただろうし、あたしとミレーヌも埃などを被らずに済んだ。


 あたしの「あ…」とミレーヌの「きゃぁ!」は同時に発せられて…


 […あの…主]


 あたし達の声に恐縮した冷蔵庫サイズから2倍へと変化した紅い狼は、しっかりと尻尾が身体に収納されてる。まぁ…この惨状を理解しているからだと思うけど……でも実験っていつでも最初は失敗するものよね?あたしは天井が落ちて屋根と梁だけになった上部を見ながら苦笑する。そりゃこのサイズを普通の家の中で変身させちゃ駄目だわ


 …怒らないのかって?だって変化してって言ったの自分だから。…天井は魔法で簡単に直せるし。しかもどうせ玄関はミレーヌに吹っ飛ばされてる状態で、聖獣が回転する度に起こる凄い風で家の中の物は既にめちゃくちゃですし…開き直った感じで怒りなんてわいて来ない。


 ただ埃っぽいのは嫌なので、窓を開けて中の空気を外の物と入れ替える。そしてようやく部屋の空気が綺麗になった状態で、あたしはワクワクしながらくるっと聖獣に振り返った。いよいよ想像してた物に出会える。


 「あのさ…横になってくれる?」

 […?]


 あたしが聖獣にそう言うと、聖獣は怒られると思ったのかちょっとびくつきながらも横に寝そべった。…これよ。これを求めていたのよっ!!


 「ミレーヌ、おいで」

 「え?ヒヨ?」

 「一緒に寝よ!」


 笑いながらそう言ってあたしは横に立っていたミレーヌの手を掴むと、聖獣のお腹に飛びついた。聖獣のお腹は柔らかい布団のようで、肌触りは高級ビロードなのだから文句無しに気持ちいい


 [!?]

 「やっぱり…想像した通り、コレ気持ちよすぎる…」

 「ほんとだね……」


 一瞬で眠りに落ちそうなあたし達を察したのか、聖獣は丸くなって包み込むような形を取ってくれた。…素晴らしい。素晴らしいよ、聖獣君。

 微睡んだ状態で隣を見ると、泣き疲れた事もあったのかミレーヌはすっかり寝息を立てていた。でも…ほんとに気持ちいいな。人肌じゃないけど…有機物の温もりに包まれるというのはこんなに安心感を与えてくれるんだって初めて理解した気がする。


 [主…後で名前つけて下さいね……]


 そんな囁きを眠る前に聞いた気がしたけど、ごめーんすっかり忘れてた〜っと思いながら忘却の彼方、夢の世界へあたしは旅立った。

10万文字を越えてPick Up!に載る事が出来ました。


読み専だった時にトップページに載る作品を見て『すごい』と思っていました


自分で書き始めてからは『いつか!』と目標でした


すべてはこの作品を読んで下さっている皆様のおかげだと思います


心より感謝申し上げます


ありがとうございます!!

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