45話 『今更』な事は危険分子を含んでます
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心から感謝いたします
してやったりでにこやかに笑うあたしと引きつった顔の皇帝。何か喋ろうとしては言葉を飲み込んでる姿は哀れかもしれない。
でもあたしも引き下がるつもりも無い。何と言っても未来がかかってますからっ!!
「…わかった。そのシステムを受入れよう」
よしっ!!あたしは心の中でガッツポーツを決めた。
これが営業先なら営業成績上がるのになぁ…なんてちょっと郷愁にかられて、どんな郷愁だよっ!って自分で突っ込んでしまう悲しさ…。
「ありがとうございます!」
自分が喜ぶ事をされたらきちんと相手にその気持ちを伝える!これ重要!
言葉にしないと伝わらない事って多いし、どんなに身近な人でも大事だとあたしは思ってる!お礼と一緒にしたのは綺麗なお辞儀。まぁこれは営業の必須アイテム。会釈15度、敬礼30度、最敬礼は45度!こういう時自分にはしっかり社会人が身に付いてるって思うのよね。
今はお礼だから敬礼30度!
言葉と一緒に下げた頭の向こうではっと息を呑む音が聞こえた
「皇帝?」
何だろう?疑問に思って皇帝を見ると少し驚いた顔
「こういう姿を見ると…やはりアサミズは成人してるのだなと感じさせられる」
ん?褒めてるようで何気に失礼?
思わず口元を引きつらせながら返事してしまう
「こんなの貴族社会だったら、礼儀で当たり前なんじゃないんですか?」
「あぁ…女性は少し形は違うがな。だが礼儀で習った事とは言え、子供では形ばかりのものがほとんどだ。作法の仕草に気持ちを載せる事が出来るのはやはりある程度の年齢を重ねていなければ出来ないものさ」
「…皇帝も大変ですね」
…なるほどね。皇帝ともなればそれだけたくさんの人に傅かれてるだろうし、礼儀一つで相手を判断する事もあるんだろうね。
う〜ん。初めて目の前の人が皇帝なんだって感じた。
「アサミズの礼は…とても暖かいな」
…礼に暖かいとかあるんですか?言ってる意味がわからないんですけど…
あたしの怪訝な様子を見て皇帝が苦笑する。
「…上辺だけの感謝など…冷たいものだ」
「あ…なるほど」
確かにさっきのありがとうには、ちゃんと感謝をぎゅうぎゅうに詰め込めましたから!それにしても、あたし『皇帝』自体を呼び名みたいに使ってますけど…皇帝ってこの国で一番偉い人なんだよねぇ〜…ってしみじみ思っちゃったけどさ
「はは…」
やな事に気付いてしまった。
あたし…そもそもの礼儀がなっちゃいないんですけど…?
「…アサミズ?」
よくよく考えたら『皇帝』って呼び捨てるの果てしなく失礼じゃない?
普通『陛下』だったり、『皇帝陛下』だったり…名前は…何だっけ?まぁ…『〜様』だったり…やばい…汗出て来た
『皇帝陛下』と呼ぶべきか…『陛下』と呼ぶべきか…
「アサミズ…様子が変だぞ」
「こ………」
「皇帝…」と言いかけた口を慌てて両手で塞ぐ。
のぉ〜〜〜!!返事も出来ないっ!!
「アサミズ…どうした?」
あたしは口を抑えながら首を小刻みに左右に振る。いや…だって何て呼んでいいかわかんないんです。パニックです!
取りあえずバクバクする心臓を抑えて、呼吸を整える
落ち着けあたし…。何でこうなった?
思い出せあたし…最初はちゃんと呼んでた………多分…。
そうだっ!ちゃんと『陛下』って呼んでたよ!あたしっ!
「へ、陛下…」
「……」
そう呼んだ途端に皇帝の眉が吊り上がった…。
えぇっ!?どうして怒るの?
…ど、どもったのが悪かった?
「陛下…」
いやぁ〜!!冷気が漂ってます!ミレーヌと同じ現象なんですけどっ!!
慌てて対処の魔法を発動させたけど、それも気に入らないのかどんどん部屋が氷ついてく…
え〜この防護魔法どれぐらいまで保つんですかね?
いくら空気を固定して熱を遮断してるとは言え、限界があるのは確実で…早くこの状況を打破しなくてはならないのだけど、全くもって皇帝が怒る理由がわからない。
…つまりそう言う場合は…
「どうして怒ってるんですかぁ!!!」
と本人に聞くのが一番です。
「何故怒ってるか…と聞くのか?」
地を這うような声で返事されても、死を目前に控えた人間には効きませんよ…多分
おぅ吹雪まで出てきましたよっ!!すごいなっおいっ!イリュージョンじゃん!!
「だってわかんないですからっ!!」
確実にこのままだと普通に死にますから…必死です
部屋で遭難しそうですっ!!
「………どうして…………」
「……はぃぃ?」
今や雪が暴雪と化したせいで、上手く皇帝の言葉が聞き取れない。
「皇帝っ!!!死ぬからっ!!!!死んじゃうからっ!!!」
必死に叫んだ言葉が皇帝に届いたのか、それまでの景色が嘘のように元の状態に戻った。最初はあまりの変化にあたしはただ茫然としてしまったけど……だんだん浮かんできたのは怒りで…
あたしは拳を握ると皇帝の頭に思いっきり落とした
「っく!!」
「バカかっ!!!殺す気かっ!!守護者が守る人殺してどうすんのよっ!!」
……あたし今思いっきり殴ったんですけど、何でこの人笑ってるんですかね?
ドMですか?この人…
「……良かった」
ふわりと微笑む姿は美形だけに美しく…頭に置いた手が邪魔だけど、それには文句は言えない。それにしてもやっぱり発言も変なんですけど…頭叩いておかしくなりました?
「…良かったって何がよ?」
「すまない。今まで…気軽に皇帝と呼ばれていたのに…突然…『陛下』だなんて…壁を作られて…暴走した」
…はぃ?
つまり…あたしがただ『陛下』と呼んだから暴走した…と?
「ど…どんだけ危険分子なんですか…。他にも起爆スイッチあったら前もって教えといて下さいよ」
「…普段はこんな事はない。アサミズだけだ…」
「…はい?」
「アサミズに関してだけは…理性が保てない」
あたし自身が起爆スイッチかよっ!!
きっと…これも全て『黒呪』のせいに違いなく。
あたしは心の中で『絶対呪いを解く!』と念のように唱える
それにしても…さっきは勢いでまた『皇帝』と言ってしまったけど、そのまま呼び続けるのは礼儀に反すると自覚してしまった以上出来そうにない。
でも…変に『陛下』とかで呼ぶと、どんな起爆スイッチが潜んでるかわからないし…
………
「あの…皇帝と呼ぶのは失礼ですので…」
やばい…ちょっとでも敬語を使おうもんなら…起爆だ…。
「もっと親しく呼びたいな!…な、な、何て呼べばいい?」
おぉ…ほんとに嬉しそうだよ。仔犬みたい…ちょっと可愛い…。
絆されるなっ!待てあたしっ!!
この可愛さの両隣は起爆スイッチだからっ!危ないからっ!!
「出来るなら名前で呼んでほしい」
「名前?」
「ああ」
……名前。
えぇ…名前お伺いしましたよね?お伺いした事は覚えてます…。やたら長い名前だったなぁ〜って記憶の底にありましたよ…。
「なまえ…」
あぁ…期待を込めた仔犬の視線
必死に記憶を遡るあたしの頭に要注意人物の医者が出て来た
『じゃあね、リュージュ』
彼女が言った言葉が蘇る。
「リュー…ジュ?」
その言葉をあたしが言った途端、皇帝リュージュの顔が今までの笑顔など比べ物にならないぐらいの満開の花が咲いた。
この顔だけできっと何人もの人が跪くに違いない。
び…美形って凄い。
「アサミズに…名前を呼ばれるのはこうも嬉しいものなのだな…」
きた〜っ!!!
お医者様!要注意人物だけどありがとう!!
今日の教訓、『今更』な事はきちんと相手に確認しましょう。
少し長いです。
ようやく日和に皇帝を名前で呼ばせる事に成功しました
活動報告でラフ画その2『皇帝』を載せました