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至上最強迷子  作者: 月下部 桜馬
1章 始動編
41/85

41話 カミングアウトは寝室で

 覗き込んでる皇帝の後に見えるのは天蓋、そして背中の柔らかい感触。

 

 やばいわ…このベッド。

 寝心地サイコーだわ…出来ればもう一度今度は意識飛ばすとかじゃなくて、ちゃんとした眠りに入ってその心地を堪能したい。


 上掛の下に潜り込もうとするあたしを皇帝の手が阻止する。

 必死に上掛を死守するあたしとそれを剥ぎ取ろうとする皇帝。



 …言葉だけだとエロさ満天だけど、実際には朝の母親と子供以外の何でもない図


 「こ、らっ!起きろ!!」

 「い〜や〜だぁ〜」


 あたしは決めたっ!何が何でも、もう一度寝る!

 ここ最近受験勉強で睡眠時間減らしてたし、今睡眠を貪らなくていつ貪る!!


 皇帝の質問とか後で結構。

 …黒の支柱、つまり夏生と話して結局わかった事って、元の世界に戻るには自分が頑張れって事で、それより変に自分がハイスペックな珍獣だってわかって軽いショックを受けただけだった気がする


 「あたしは傷心中です、デリケートなんです。そっとしておいて下さい」


 皇帝の手が突然止まった……もちろんお互い全力で引き合ってた力を突然一方だけが抜いた場合に起こる事はもう一方の力だけが残る事で…


 あたしは見事にベッド上部に頭を強打した。


 「っぐぅ!?」

 「す、すまないっ!!」


 いや…もうそんな言葉に反応出来る痛みじゃないです。目から星どころか大きな花火が打ち上がってまた何処かに行きかけましたから、とりあえず後頭部を抑えてのたうち回るのは許して下さい


 「のぉぉぉぉ〜っ!!」

 「す、すまなかった…ア、アサミズ大丈夫か?そうだっ!シーだ!医者を呼ぼう!」

 

 オロオロする皇帝に構ってられない痛みだったんですけど…医者という言葉に思わずベッドから離れようとする皇帝の腕を思いっきり掴んだ。そしてドスの聞いた声を発しながら皇帝を睨みつけた


 「げっごう”でず」

 

 朝の親子の図から頭部強打とか恥ずかしすぎる……しかもここ、よくよく考えたら皇帝のベッドだし…


 頭の花火ついでに先日ここに乗り込んで来たエリルさんの鬼の形相も襲って来た。皇帝のベッドに寝てる姿とか見られたら確実に殺られる気がする。それでなくても命の危険があるのにこれ以上命の危険を増やしてどうするのさ

 

 グッバイ最高ベッド。最高の寝心地をありがとう。 

 

 「お、お”ぎま”ずがら”…」


 頭を抑えて起き上がろうとするあたしを今度は皇帝が抑えつける


 「悪かった…寝ていろ。このままでも話は出来る」


 いやいや…眠れない快適(皇帝の)ベッドに固定とか一番最悪なパターンなんですけどっ!!それなら断然、隣の部屋のソファが希望なんでっ!!


 「いいです!!起きますっ!!」

 「しかし…」

 「起きたいんですっ!!起きるの希望です!」


 とりあえず片手を上げてもうアピールしてみる。


 「…大丈夫なのか?」

 

 痛む後頭部より、事件が起きる方が断然厄介なのであたしはにっこり皇帝に笑いかける


 「寝ぼけてたみたいですから!頭打って目が覚めました」

 「そうか…」


 そう言って皇帝が確認の為にあたしの後頭部を触る。



 「っんにゃ〜〜〜〜〜〜!!!!」


 

 見事に100連発ぐらいのスターマインが打ち上がりました



 ***



 さっき紹介され別れた筈のシーさんがベッドの上で三角座りしたあたしの後頭部に柔らかい綿のようなもので薬を塗ってくれる。あの叫びの後、あたしは悶絶して皇帝が慌ててシーさんを呼び出し、そして今に至ります。


 「…すみません。お手数おかけしまして」

 「いえいえ……ぷふっ」


 どうみても皇帝の寝室でベッドの上で後頭部をトントンされる図は笑いを誘う。


 「……シー、笑うな」


 皇帝に言われて必死で堪えるシーさんの手元が小刻みに震えてる。


 「駄目っ!もう限界っ!!あはっはっはっはっ!!!」


 盛大に笑い出したシーさんに、あたしは他人事だったらあたしも笑うのに…と引きつった笑顔を返すしか無く…


 「あははっ!!ごめっアサミズちゃん!でも皇帝の寝室で後頭部打撲ってありえないし!!あははっ!!しかも結構強打!」

 「はは…」 


 はい、色気なんてあったもんじゃないです。


 「シー…いい加減にしろ」

 「はいはい。あ〜楽しかった。単なる打撲で頭の中に損傷は無さそうだけど、今日と明日に吐き気なんか感じたらすぐにあたしのところにきてね」

 「…了解です」


 この人達の見解は12歳とは言え、本来25歳の大人が寝室で打撲ってどうよ?泣きたくなってくるわっ!!


 「シー、手当てが済んだら出てけ」

 「ったく、こんな幼子になにしたのよ?皇帝様は?」

 「なっ!?ち、違う!!断じて違うっ!!」


 …幼子?それってあたしの事?


 「まさかリュージュがそんなロリ好きだったなんて…ショックだわ…」


 目の前の二人はまだロリだの子供だの言い争ってるんだけど…もしかしてこれってサバを訂正する絶好のチャンス?

 そのまま突っ走る気でいたけど…黒の支柱にも訂正した方がって言われたし、メルフォスさん達にも信頼出来る人には言った方がいいって言われたしなぁ…


 それに皇帝の黒の紋章って黒の加護者を守る人だって言ってたし、バレても怒られないよね?最悪怒られても今ならハイスペック持ちだし、白黒の加護者だし…罰せられたとしてもなんとかなると思うし……言っちゃうか。


 「だから!!違うと言ってるだろうっ!!こんなお子ちゃまにそんな事するか!!お前の頭の中の方がおかしいだろうがっ!!」


 皇帝の台詞にあたしの片眉がくいっと上がる


 こんなお子ちゃま…?


 あ〜何かその台詞、気持ちいい程古傷を抉るんですけど。

 昔言われた事あるんだよねぇ〜元カレに


 『お前見た目そこそこ可愛いけどさ、一緒に歩いてるとお子ちゃま連れてるみたいなんだわ。悪いこんなつもりじゃなかったんだけど別れて』


 …えぇ、一方的に告ってきた相手と付合ったら、こっちがさんざんな振られ方して傷つきましたよ。どうせあたしは見た目お子ちゃまですからね。


 でも中身は立派な大人なんで、しっかり仕返ししてやりましたけど?何か?


 「あの〜」

 

 あたしの声なんて聞こえてないのか二人の争いはヒートアップしていく。

 どっかで見た光景だって思ったらこれって宰相と皇帝でもやってなかった?

 ここの上層部はこういう人を無視して言い争うのが好きなのか?


 あたしはあの時と同じ様に大きく息を吸い込むと二人の声をかき消すぐらいに大声で叫んだ


 「お子ちゃま談義に花を咲かせてるとこすみませんけどっ!!あたしほんとは25歳なんで、その話題関係ないんですけどっ!!」


 …あぁ…叫んだら頭に響く。


 ぴたっと止まった二人がぎぎぎっと音が出そうな感じでこっちを振り向く。先に立ちなおったのは皇帝みたいで


 「に…じゅう…ご?」

 「はい、見た目こんなですけど成人してるんで」

 「だが…あの時は、12歳だと…」

 「そう言ったのは皇帝であたしじゃないです。あの場で訂正出来なかったあたしも悪いんですけど…まぁ今訂正出来て良かったです」



 …それにしても二人ともすごい驚きようなんですけど。

 

 

 12歳って言った時よりも確実に驚かれてるよね。

 そ〜んなにあたし25歳に見えないですかね?



 あぁ、何か今日は色々ハートブレイクだわ…

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