38話 今月の特集『皇帝のセミヌード』はいけるっしょ!
突然脱ぎだした皇帝に対し、どこをどう突っ込んだらいいのかも解らず、途方に暮れているあたし。だけどしっかりと「見た目細いのに、意外に筋肉ついてるな…」なぁんて観察してしまうあたり…気付かなかったけど日本で流行の腐女子要素も持ってたんですかね…あたし。
「…細マッチョか」
「?細…何だ?」
「いえ…こちらの話なんで…」
「………」
しかし、美形男は何も着なくてもかっちょええのぉ〜。
テリサン村では見た事なかったけど、女性雑誌とかこの国には無いのかな?
皇帝のセミヌード特集とか絶対売れると思うんだけど…
あ〜…その前に購入者全員不敬罪で捕まるか…
なんて事を考えていたら…ガン見しすぎました。
え〜皇帝の顔が何気に赤いのは気のせいですかね?
…不埒な女ですみません
「…で、突然何で脱ぐんですか?」
「…私の身体には黒の紋章がある」
「黒の…紋章?」
確かメルフォスさんの話では皇帝は『黒呪』をその身体に宿してるって言ってたけど…黒の紋章というのが、それなんですかね?
「ここだ…」
そう言って皇帝は自分の胸に手をあて、胸の上で拳を握りしめ目を閉じた。
そして目を開けるとあたしに向かって手を差し出してくる
…嫌な予感。
大抵こういう時の予感は当るよね。
「触れてくれ」
「………」
ん〜。これは究極のセクハラなんですかね?
「……それは…ちょっと」
ごめん被りたい。
あたしは別に皇帝の『黒呪』も説明されればいいだけで…別に実証とかいらないんで
しかも呪いに触れるって自分も呪われそうでやだし……もしあたしに解除の力があったとしても現時点では無いわけだし、触れる意味ないじゃん。
「…アサミズが触れてくれれば紋章の力が解放される」
「…の、呪いが解けるって事ですか?」
「呪い?……何の事だ」
「え…だって、紋章って『黒呪』なんでしょう?」
「バカなっ!!紋章が呪いだなどと…」
「え?」
…違うんですか?
…なら、黒の紋章って何なんですかね?
っていうか、この行動、後でも良くないですか?
「せ、説明を先にして貰えませんか?」
「いいから、触れ!」
そう言うと皇帝は半ば強引にあたしの手を掴んで、自分の胸に押しあてた
「いやぁ…だ…?」
手を取られた瞬間にあたしの叫びが響き渡ったけど、触れた皇帝の胸から信じられないぐらいの魔法の力が溢れ出してきて、あたしの中にどんどん吸収されていく
「な…何なの!?」
「……ぐっ」
『契約』『共有』『魔式解放』や聞き取れない数多くの言葉があたしの頭に響く。まるで頭をかき回された状態で、思わず立っていられなくなってその場に膝をついた。
ようやくその状態から解放され、慌てて皇帝を見ると彼も同じ状況だったのか倒れてはいないもののこめかみを抑え苦痛に満ちた表情をしている
「…こ、皇帝?」
「大丈夫だ」
そして皇帝の胸を見て驚いた。そこにはまるで紋章のような、魔法式のような、摩訶不思議な模様が広がっている。
そんな物はさっきまで無かった。ガン見したのだから断言出来る。
「そ…それ…何?」
皇帝は愛おしそうに胸にあるそれに触れた。
「黒の紋章…やっと戻った」
「やっと…戻った?」
…この図はどうみても『皇帝再び呪われる』でしょう?
呪われてるのが嬉しいなんて…どんなマゾ男なんですか?
若干引いた視線を皇帝に向けていると、それに気付いたのか皇帝があたしに向かって膝をついた、そしてあたしの前で………頭を下げた
「アサミズ、礼を言う」
「……いえ、役に立ってよかったです」
「…アサミズが黒の加護を受ける者だと証明された。これより黒に関して全ての記憶を渡そう」
皇帝はそう言うと、あたしの額に手を翳す。
そして『魔式 α型発動『視覚領域 記憶解放』』と聞き覚えのあるフレーズの魔式を唱える
「黒とは白以外と決して混じる事なく、全ての力をその身に取り込む事が出来る。そしてその力で、この世を支えている黒の支柱。黒の加護とはその支柱の力を扱える者の事を指す。そして黒の紋章は加護を受ける者の守人だ。さぁ…支柱の記憶を辿ってくるんだ」
皇帝がそう言うのがどこか遠くの方で聞こえた。