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至上最強迷子  作者: 月下部 桜馬
1章 始動編
33/85

33話 名付けセンスは無いかもしれません

 見事に悪者二人は「げはっ!」や「ぐっ!」という台詞とともに吹っ飛んであたしから離れてくれた。


 『ワルピー』と名づけたこの魔法は、実は村に居た時に習得した物。 


 テリサン村=辺鄙な村=自然に溢れた場所だったので、村を出て少し歩くと森やらがたくさんあった。普段の注文ぐらいなら必要魔石は川で十分事足りるのだけど、稀に特別な物を依頼されると良質な魔石がいる事が多く、それの入手手段として森などに行かなくては行けなかった。森は良質な魔石がある反面、危険度も上がり魔獣なんかもたくさん居るので自然と身を守る術を学んでいったのだった。


 最初のうちは出会っては逃げるを繰り返していたけど…これがかなりキツい。1時間以上逃げた事もあって、ずっとその間隠れては走るの繰り返し…あたしアスリートじゃないし20歳越えた女に走り続ける事を求めるなんて何の拷問?ってその時に思った。


 それを経験してから真剣に攻撃の仕方を考えた。


 殺してしまえば単純なのかもしれない。だけど村を襲われたならまだしも、相手のテリトリーに入り込んでるのは自分なのだから無意味な殺生するのは嫌だった。

 

 だから魔法を使って殺さなくてすむように、だけどそれなりに強力で、あたしがやったようにはわからなければなおよろし!でうまれた魔法が『ワルピー』だった。


 基本は昔、兄達が持ってたエアガンがふっと頭に浮かんで、それを参考に魔法式を組んでみたんだけど…魔法式に座標を組み込んだのが良かった。きっちり目標物に対して左右どちらか1mのところに球を固定する事が出来て、実践でも思いの外上手く使え、魔獣は相手の見えない攻撃に怯えて逃げていった

 


 「いやぁ…まさか城でも役に立つなんてね。思わなかったわ」



 それぞれ互い違いの方向に吹っ飛んだ二人は水に受け止められ、水は衝撃を緩和しつつはじけ飛びそこら中が水浸しになった。受け止めるものが水だったせいで二人も全身びしょ濡れになっている。

 犯罪者は倒れたまま起き上がる様子は無かったけど胸の部分が上下に動いているから命に別状は無く気を失ってるだけに見えた


 「……ってぇ」


 いい声男はどうやら気を失ってはないけど、膝をついた状態で空気砲を受けた部分を手で押さえているからこちらに攻撃は出来なさそうだ。


 「あ~ちょっと待っててね。気を失った方を先に診るから」

 「………」


 あたしはいい声男にそう言うと、犯罪者の方に近寄って首で彼の脈を取り、正常な事を確かめた。上着をめくって空気砲が当たった場所を確認したが、赤くなっているだけで骨折などは起こって無さそうだった。


 「速度指定を原チャリで考えたのがまずかったかな…」


 魔獣を気絶させた事はなかったのでちょっと心配だけど、すぐに治療すれば大丈夫だろうと思う。人に見つかるまでに動かれてもやっかいなので、両手両足を自分のベルトで結んでしまう。

 捕縛の魔法とか覚えてたらいいんだけど、それは「はじめてのまほうのつかいかた」には載ってなかった…


 「さて…これでよし!」


 で、意識のある人の方ですけど…

 視線を向けるといい声男はまだ苦しそうで無理矢理笑みを浮かべているものの、瞳はこっちを睨みつけている


 先に『か弱い女の子』に刃物向けたのそっちでしょうが!

 ちょ、ちょっと…か弱くなかっただけですけど?


 あたしは犯罪者の側から立ち上がっていい声男の方に向かう。いい声男はさすがに警戒してるらしく、片足ついた状況でもじりじり下がってくが、さっきと変わらず少し笑みを浮かべた表情でこっちを見てる。

 そして下がりながらもあたしに話しかける


 「……今の衝撃、君の魔法?」

 「……でしたら何です?」

 「…何?今の衝撃。鉄ではねられたみたいなんだけど…」

 「………」


 そんな大げさな、鉄だったら死んでる…多分。

 …まぁ速度上げたら空気砲でも内臓破裂とかで十分殺傷能力ありそうですけどね…


 「俺とキッシュほんとに同時に吹っ飛んだよね?遠隔魔法を二人同時であんなに正確って…君よほどの使い手?魔術学院にそんな子いたっけ?少なくとも俺は聞いた事ないな」

 

 …あの犯罪者の名前は『キッシュ』らしい


 「へぇ~。あの男キッシュって言うんだ。フルネームは?」

 「キリアード・メルドリアって俺は聞いてる」


 なるほど、仲間のお名前をすぐに教えて下さるのなら…


 「貴方お名前は?」

 「………」


 じぃーっと同じ笑みでこっちを見つめてくるけど、答える気は無いらしい。

 あたしは相手にもわかるぐらいに大きく溜息をつくと、指で拳銃のポーズをとる。

 そして指先にさっきと同じ『ワルピー』を今度は直径3cmで作り、肩がぶつかる程度の速度で「バンッ!」という掛け声と一緒にいい声男の眉間に飛ばす


 「っ!?」


 突然眉間に衝撃を受けたいい声男は後に跳ねて尻餅をついた。その顔には驚愕が浮かんでいて、ようやく笑顔の仮面が剥がれ落ちましたよ


 「貴方のお名前は?」

 「……ジョゼ」

 「ジョゼねぇ。何でフルネームで教えて頂けないのかしら?」

 「………」


 怪しさMAXなんですけどね…

 警備員の時の身のこなし方もこの人の方がキッシュより全然キレイだったし…魔術学院の内情知ってるのも、もしかして…


 「…貴族の坊ちゃんが誘拐犯の真似は頂けないわね」

 「……っ」



 さぁ~って洗いざらい白状してもらいましょうか!!

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