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至上最強迷子  作者: 月下部 桜馬
1章 始動編
31/85

31話 どきどき、イベントでの出会い

 城内音声では簡単に警備員と言われましたが、さっきから声は確認出来るんですけど…姿が一向に見えないし、というか私今気づいたんですけど、この世界の平均身長よりかなりミニマムらしく、人混みに入ってしまうと周りを人の壁に覆われてしまって埋没。

 

 「これはテリサン村では体験出来ない事だわ…」


 …あえて好んで体験したいとも思わないんだけどね。人混み苦手だし…


 「さ…酸素が薄い」


 満員電車などでも身長が低いとどうしても澱んだ空気しか吸えなくて、あたしにとって出入り扉付近を死守するのは生死をかけた戦いだったりする。この状況はまさしく満員電車状態で…


 ヤバイなぁ…酸欠になりそう。


 とにかく人混みから離れようと動こうとするけど、自分の位置がきっちり固定されて前に進む以外全く動く事も出来ず。


 「あの~!!横に行きたいんですけど!!」

 

 と叫んでみるものの、この人混みでそれぞれの人が会話しているとあたしの声は聞こえないらしい…


 魔法でぶっ飛ばしたい…なぁんて物騒な事が頭を過ぎるけど実行はしませんよ?無差別殺人者なんかになりたくないですし…


 「…困った」


 困ったけれどどうする事も出来なさそうなので、人混みが途絶えるとこまで我慢するしかないか…と思ったらまた城内音声が流れる


 『再度迷子のご案内です。テリサン村よりお越しのアサミズヒヨリ様。お連れ様が大変心配しております。大至急お近くの警備員までご連絡ください』


 思わず怒りマークが顔に浮かぶ。

 誰が音声を依頼したのかわからないけど、無事着いたらとりあえず一発殴る。


 出来るもんならさっさとやってるっつうのっ!!!


 ちょっとずつしか進まない列にイライラもMAXになり、叫びだしそうになる寸前


 「君、アサミズヒヨリっていうの?」


 と隣にいる緑の髪を持った青年に話しかけられた。 


 「え?」


 突然見ず知らずの相手に名前を言い当てられる事ほど怖い事はない。しかもその青年の容姿が長く黒い外套を羽織り、前髪で目がほとんど隠れている状態なので警戒心が倍増される。そんな相手は当然眉間に皺を寄せ見るしかなく、そんなあたしを見てその青年は苦笑しながら


 「城内音声が流れた途端に動きがそわそわし始めたから、そうかな?って思っただけなんだけど…」


 と言った。


 なるほど…確かにそう言われればそうだけど…


 だからと言って単純に警戒心を解くほど世間知らずじゃない。黙って見つめていると青年は「まいったな…」と頭を掻いた。


 「…あたしがアサミズヒヨリだったら何なんでしょう?」

 「ん~お連れさんがかなり心配してるみたいだから、警備員を呼んであげるかな」


 よし、良い人決定


 「すみませんでした。お願いします、困ってたんです」

 「よかった。じゃあ…」


 青年はそう言うと「警備員さんお願いします」とぼそっと呟いた

 

 「…い、今の何?」

 「ん?警備員さん呼んだんだけど…それでよかったんだよね?」

 「いやいや、ありえないぐらい呟きだったんですけど…」

 

 そんな声で伝わるんだったらとっくの昔にあたしがやってるっつうの!


 「あぁそういう事、警備員の位置は見えたからそこに魔法で音声を飛ばしたんだよ」

 「魔法!?…という事はあなた魔法使い?」

 「フロシェイド・ダイス・ビュートリア。魔術学院の研究員だ」


 魔術学院って今度からあたし達が通う予定のところだよね…間違いなく。

 つまり怪しい黒の外套は魔法衣らしい。


 「…そんな人が何で城見学なんかに?」

 「あぁ…俺、地方出身だからさ。魔術部には所属できないんで、就職活動を兼ねて城の部署見学」


 …部署見学なら何もこんな日を選ばなくてもいいんじゃないでしょうか?と思わなくも無い…

 けれど就活と言われると、自分の就職超氷河期時代の過去を思い出して寒くなるのでそれを現在経験している人にそんな突っ込みは出来ない。


 面接100社とか…あれは精神的にも体力的にもしんどかった。


 それにしても、魔術部って地方からの人間が入れないんだ…。

 特権階級の集団ってわけですか…やだやだ、そういうの。


 そう思うと目の前のこの青年を心から応援したくなる。

 

 「それは…大変ですね」

 「ん~。まぁ別に観光も兼ねてだから…あ、警備員来た」


 彼がそう言うと遠くの方からあたしを呼ぶ声が聞こえてくる。

 それに合わせて人の混雑がモーゼの十戒のように開かれていってるらしく、警備員の頭があたしからでも見えた


 「アサミズヒヨリ様~!!何処ですか~!!」

 「警備員さ~ん!ここで~す!!」


 緑の青年が大きく手を振ってくれて、それをすぐ見つけてくれたらしい警備員が「今そちらへ行きます!!」と返事をくれた。


 「…色々ありがとうございました」

 「いえいえ。それじゃね。アサミズちゃん」


 そう言って緑の青年は先に進んでいった。

 あたしは一礼してそれを見送り、こちらに向ってくる警備員さんを待つ。


 …帝都であたしの名前を呼ぶ皇帝・宰相・エリルさん。そして4人目の人。


 何だかちょっと不思議な雰囲気を持った人だったけど、いい人だった。

 受験に合格して、もし次に会う事があればお礼をしなければ…と思う。


 受験勉強で容量が少なくなった記憶の端に留めたところに警備員さんが到着した

今日で連載を初めて一ヶ月です

たくさんの方に読んで頂けて嬉しく感じています


本当にありがとうございます

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