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至上最強迷子  作者: 月下部 桜馬
1章 始動編
29/85

29話 口は災いの元?


 本人はそうでも無いらしいが、あたしは皇帝がこの家に居る事にかなりの違和感を感じながらとりあえずお茶を入れる。ミレーヌは「お、お母さん呼んでくる!」って出て行ったまま帰ってこないしね…


 「………」

 「………」


 空気が重い。

 さっきから皇帝の顔筋は動くのを拒否してるのか、無表情のまんまだし…

 ただ、あたしから何か話しかける気は毛頭無かったので、とりあえず皇帝と自分の前にお茶を置いた後、湯飲みのお茶を啜る。


 …もちろんあたしの試作品32号『日本茶』ですが?


 皇帝は目の前に置かれた湯飲みを少し不思議そうに、見様見真似でお茶を啜っている


 「…苦いな」

 「苦味が美味しいんです」

 「そうか…」


 …はい、会話終了。

 

 あたしをすぐ帝都へ連れて行くのかと思いきや、皇帝が来た目的がよくわかりません。


 「…ここがあさみずの家なのか?」

 「借家ですけど」

 「そうか…」


 …だから何なの?


 一気に目的を伝えてくれれば、それに対応も出来るんですけど…


 「ここにある物は全てあさみずが作ったのか?」

 「………」

 「そうか…」

 「返事してないしっ!!!」


 あ…しまった。

 思いっきり突っ込んでしまった…あたしが顔を引きつらせるのを見て、それまで無表情だった皇帝の顔がゆっくりと微笑みを浮かべた


 「…やっとこっちを向いた」

 「え?」

 「さっきからずっと俯いていただろう?」


 そういえば皇帝が乗り込んできて全然彼と目を合わせて居なかったことを、指摘されて始めて気付いた


 …だから、微笑まないで…

 貴方の顔はあたしにとって毒なんですってば


 「顔を見たかった。あさみずが実在している事を確かめたかったんだ」

 「………」

 「あの日、再び私の元に訪れてくれた事を…」


 …すみません。砂吐いていいですか?

 そんな甘すぎる台詞は日本人には辛すぎます。

 出身文化は気持ちを上手に隠す文化なんです!


 …まぁ、黒呪の事を知った後なんで多少ましですけどね


 「げ…現実ですよ」


 あたしは出来れば夢の方が良かったです。

 この世界に来た事自体夢だったらもっと良かったですけどね…


 皇帝は何を思ったのか手を伸ばしてきた。


 「んぎゃっ!!」


 皇帝の手はあたしの手を包み込んで、それを自分の額に当てた


 「…こ、皇帝」

 「…本物だ。この1ヶ月あの日が夢だったらという恐怖に襲われていた」

 「………」


 ど、どんだけ黒呪って恐ろしい呪いなんでしょうか…

 皇帝の話を聞けば聞くほどあたしにどうこう出来る代物じゃない気がします


 ただ…皇帝の手が小刻みに震えてて、悪気があったわけじゃないですが、この1ヶ月皇帝へ連絡をしなかった罪悪感に切り刻まれてる自分がいたり…


 「あのぉ…すみませんでした」

 「…?」

 「連絡…しなくて…ちょっと引越しやら受験勉強やらで…パニくってました」


 う、嘘じゃない。

 受験勉強も引越しもこれから本腰だけど……嘘ではない。と思う


 「構わない。魔法便へ返事をくれただけで十分だ」


 …魔法便はあたしが出したんじゃないです。

 事故に近いものがあったんですけど




 …真実より嘘の方が重要な事ってありますよね?



 「はは…」

 「もぅ帝都に向かえるのか?それにしては…」


 皇帝が部屋の中を見回すのを見て、彼の思考に同意する


 「はい。まだ片付けが終わってないんです」

 「…?」

 「て、手紙を間違えてしまって。ほんとはもう少し待っていて下さいと書いた物を送るはずだったんですが…ほ、保護者に向けて送る筈だった物を送ってしまいました」


 あたしナイスフォロー!!


 「…保護者?」

 「はい。メルフォスさんという一家にあたしご厄介になってまして…」

 「メルフォス!?」


 皇帝が勢い良く立ち上がった拍子に机の湯飲みが倒れた


 「あぁ!!」

 

 お茶がかかった本人の皇帝はそんな事が気にならないほど、何か別の事に気を取られている。あたしはとりあえず台布巾でこぼれたお茶を拭き、皇帝には乾いたタオルを渡した


 差し出されたタオルに皇帝ははっと自分を取り戻したらしく


 「……ありがとう」

 「いえ……どうかされたんですか?」

 「メルフォスというのは、青髪の槍使いか?」


 確かにメルフォスさんは青髪の美男子で、槍を使っているけど…


 「だと思いますけど…」

 「こんなところに居たのかっ!!!」


 …あれ?

 皇帝にメルフォスさんの事言っちゃいけなかったんですかね…?


 メルフォスさん、皇帝のこの様子からして穏便に帝都から旅立った訳じゃ無さそうですね…道理で転移魔法の時にあんなに露骨に嫌がったはずだ…


 「メルフォスは今どこに?」

 「あのぉ…」

 「教えてくれ!!」

 「………」


 これ以上墓穴を掘れないので、黙っていると皇帝はあたしのタオルを持ったまま表へ飛び出していった。


 「えぇ!?」


 追いかけて表へ出た時には魔力の歪だけがそこに存在していて…


 「……あの人、あたし迎えに来たんじゃなかったの?」


 メルフォスさんを捕獲しに皇帝が戻った事に間違いなく…


 「しくじったぁ~」


 頭を抱えてその場にしゃがむが、そんな事をしてる場合じゃなく…

 急いで向かいのライザ母さんの宿に駆け込むと、ミレーヌとお茶をしているライザ母さんに向って「少し帝都に行ってきます」と言い残して、すぐに転移魔法を発動させたのだった。

ひよ墓穴です。

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