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至上最強迷子  作者: 月下部 桜馬
1章 始動編
21/85

21話 死にかけてわかる事がある



 目が覚めて見慣れた天井は今ではシミの数もわかるいつもの天井。



 「……おぉ、生きてた」



 神様…この世界に神様がいるかどうかは知らないけど、誓います

 もう、二度と楽しようなんて考えません。



 帰ってきたあたしの状態を一言で説明すると、酷い船酔い状態。

 クラブのファンキーソングばりで胃が踊り、脳が殴られた様にグラグラ揺れてる感じ


 …他人の転送魔法がこんな永遠ジェットコースターだと思わなかった。

 

 どおりでガース国の使者達が魔法を行う前に魔術師に眠らされていたはずだよ…と納得した。


 あたしも眠りの魔法をかけてもらった


 ただし皇帝自らにかけてもらったので…やっぱりあの人の魔法は効かなかった


 

 なら自分で眠ろうと思ったのだけど、皇帝が魔法詠唱の最後に小さく付け加えるように言った爆弾発言で一気に目が冴えてしまった。


 『…あさみずは嘘付きだな』


 何が!?


 年齢?出自?魔力?


 どの事なのぉ~!!!!

 

 自業自得だけど嘘をつきすぎてどれの事を言ってるのかさっぱりわからず…あたしは恐々としたまま転送魔法に乗せられ……サングラスをかける間もなく、光のジェットコースターを経験した

 

 着いた場所はテリサン村のほんとにすぐ側、歩いて戻れる距離だったのが幸いで、こんな状態のあたしでも自分を保ってガース国の方達ときちんとお別れしました。あたしという気苦労の種が居なくなってほっとしたのか皆さん笑顔で去っていかれましたし、こちらの別れの際の多少の蒼い顔は許して下さい。



 その姿を見送って自宅まで辿りついたのはよかったんですがね、すぐグロッキーでトイレに駆け込みましたよ…ふふ…



 ミレーヌに事情を説明出来る状態じゃなかったんで、彼女は「きゃーっ!!」という叫び声を上げながら慌ててライザさんを呼びに行ったみたいで…というのも



 そこからの記憶は無いです


 

 で、今朝出たはずのベッドに寝かされています。



 「夢……んな訳ないか…」



 まだ少し残る船酔いと、頭に乗せた自分の左手首に光る虹色の腕輪を見て、深いため息をつく。


 「…今、何時?」



 部屋が暗いし、夜だという事はわかるけど…




 「…気がついたかい?20時を少し過ぎたところだよ」



 暗闇から突然聞こえてきた声に一瞬驚いたけど、それは聞き慣れた声で、そちらを見るとその声の主の部分だけがほのかな明りに包まれている。そこには青髪の美男子が立っていた。


 

 「…メルフォスさん」

 「ミレーヌとライザもさっきまで居たんだが、宿の食事の時間になったのでね…」


 ライザさんの宿は7時から9時までが食堂での夕食の時間なので忙しくなる


 「あ~ご迷惑をおかけして…」

 「ストップ。それ以上は言わないでいい。ひよりはこの世界では僕らの家族だろう?」



 …涙が出てきた。


 自分でもわからない内にすごくテンパっていたのだと思う。

 

 手配書を見てから今日一日、訳のわからない混乱状態に陥って、まるでトリップした日のようで、考えないようにしていた異世界という現実を突きつけられて、あたしの中の何かが限界だった。

 顔に乗せた手で目を覆いながら、嗚咽を必死に止めようと思うけどなかなか止まってくれない。

 

 25にもなった女がみっともない…


 何とか泣くのをやめて冷静に今日の事を話そうとして、上手くいかない自分に余計に泣けてくる

 

 「…ごっごめんなさい」


 そんなあたしにメルフォスさんはベッドの側に立って上掛けの上からポンポンと優しく叩いてくれる。

 しばらくその優しいリズムに身を任せると段々落ち着いてきて、嗚咽も無くなる


 もう大丈夫ですという意味も込めて起き上がると、優しい笑みを向けてくれるメルフォスさんがいた


 「落ち着いた?」

 「……はい」

 「何があったか話せる?」

 「はい」


 こくんと頷くとメルフォスさんは「じゃあライザ呼んでくるよ」と言って一度出て行った。


 床に足を下ろしてみたら立てそうだったので、とりあえず部屋の明りをつけてお茶の用意をはじめる。

 どうやって今日の事を話そうか考えていると、メルフォスさんがすぐにライザさんを連れて戻ってきて、あたしがお茶を煎れようとしているのを見て代わってくれる。


 ライザさんを見ると目が真っ赤で…すごく心配をかけてしまったのがわかる

 

 謝ろうとした瞬間彼女に抱きすくめ…抱き殺されかけた


 「ら、ライザ…さん」

 「ひよりぃぃぃぃ~~」


 …号泣されてしまった

 しかしマジでこのままでは死ぬ…


 「ライザ…ひよりが死にそうだ」


 メルフォスさんの苦笑が混じった声が、ライザさんの腕の力を弱めてくれた


 「あぁ…ごめんよ。ひより…ひよりぃぃぃ」


 ライザさん、さっきの状態でも見なかったお花畑が見えたよ。

 

 身体を離されても手を握って目の前で泣き続けるライザさんを見ていたら、今度はこっちから抱きついてしまった。


 

 止まった涙もまた溢れ出して二人一緒に泣いた

ストックが無くなった途端に体調を壊しました…ぐふ

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