18話 田舎だと思っていたら、やっぱり田舎だった
えっと…テリサン村はそんな変な村じゃないんですけど…?
そんなドン引きされるような村じゃないですよ?いい人達ですよ!!
あたしがどうフォローを入れればいいか考えていると皇帝が言葉を続けてきた
「帝都からテリサン村まで…魔法以外の一番早い移動手段を使っても3ヶ月はかかる」
「あ…そっちですか…」
あはは〜距離の事だったなんて全然勘違いしてました
「…転移魔法も…距離からして莫大な魔石を必要とするからそうやすやすと行える物じゃない」
…あれ?
転移魔法って距離=使用魔力なんですか?
しかもテリサン村が以外と遠い事実にびっくりした。
…だから3年も帝都で手配書だされても村まで届かなかったんだ、なるほど納得。
村にある地図とか超アバウトだったもんなぁ…。
あの地図では帝都とテリサン村の間2cmぐらいしか無かったけど…結構近所なんだって勝手に思って来ちゃったあたしはどうすればいいの?
…あの地図の縮図は信用性0っていう事がよくわかった。
…それより前にあの地図って正しいのか?
まぁ…その疑問は置いといて…
今はこの場を乗り切る事に全力を注がなくては…だって皇帝が返事を求めてじっと見つめてくる…これはかなりキツい
「あはは…」
「あさみずは…どうやってここまで辿り着いたんだ?まさかジュールに乗ってきたわけじゃないだろう?」
ジュールは知ってますよ?
この世界で一番早い乗り物で、見た目馬車なのに馬無し。動力は魔石らしく、よくガース国へ向かう旅人が乗ってる。
スピード的には車ぐらい出せるみたいだけど魔石の消費が凄まじいので、だいたい自転車ぐらいのスピードで走ってるのがほとんどらしい。
あれで3ヶ月っていうと…この世界の時間軸は元の世界とあまり変わらないので…単純計算で…
90日×(一日の走行時間10時間×自転車時速15km)=村までの距離13.500km
東京からマイアミまで行けちゃうよ…
改めて数字化すると…そんなに遠いのか…テリサン村…その距離を2cmって…
もちろんあたしは帝都で地図を買って、あの地図は即座に廃棄する事を頭にメモした
しかし…どうしようか?
そんな距離を「普通に来ちゃいました…」とかありえないよね?
仕方ないけど…
「帝都近くまではこちらに用事のある方に転送魔法を便乗させて頂きまして…これってガース国からの中継地点の利点ですね。まぁ…そこからこの部屋へは自分の転送魔法を使いましたけど…」
嘘がどんどん増えていく度ににっこり微笑む顔筋が痛い…。
平凡に生きていく為とは言え、いつかお婆ちゃんに聞いた「嘘つく子は舌抜かれるばってんね」という言葉が頭を過り、思わず口をぎゅっと閉じた
「そういえば魔障壁は……城へはどうやって転送したんだ?」
…っち。
何かどんどん最初に心配したヤバい点をついてくるなぁ。
「え〜っと…穴が開いてまして」
「穴!?」
「目印つけておきましたから後で直された方がいいですよ?」
え〜…開けた犯人あたしですけど。一応すみませんと心の中で謝っておく。
皇帝が慌てて外に控えていた衛兵を呼んだから、至急直させるのだと推測。
その際に衛兵から耳打ちで何か言われていたが、こっちまで聞こえなかった
ここでこの会話をしてしまったからには城の中から転送魔法を使う事が出来なくなったので、とにかく一刻も早くこの城を出る事に専念しなくては
…早くおみやげも買いたいし。
「あの…そろそろ遅くなって村の人も心配してると思うのであたし帰ります」
「私にとっては最悪だが…あさみずにとっては朗報だ」
「朗報?」
皇帝が苦虫を噛み潰した顔でこちらを見ている。
朗報とは何ぞや?と視線で訴えかけてもなかなか話しだそうとしない
「…ほんとにこのまま城に残る気はないか?」
「ありません」
えぇ、即答です。
…魔術学院の事とか、とりあえず一旦帰って村で冷静に考えます
皇帝は一度大きく溜息をついた
「ガース国の使者が2時間後にテリサン村近くまで転送魔法で飛ぶらしい…それへの便乗が可能そうだが…どうする?」
…2時間後。
ぎりぎり夕食に間に合いそうな時間…って今御飯食べたとこだけど。
ライザさんの夕食は別腹なんで!!
「お願いします!!」
疲れてるし、自分自身で魔法使わずに済むならラッキー!!!
「ならば…約束して欲しい事がある」
…さっき見た捨て犬のような陛下にまたなった。
切に願う。
美形のこんな姿を邪険に出来る魔法があるなら今すぐ教えて欲しい