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至上最強迷子  作者: 月下部 桜馬
1章 始動編
13/85

13話 オアシスは毒沼だった

 あたしの怪訝そうな目には全く動じず、突然男は優雅にソファに座った。

 落ち着いて見ると、突然男…貴方って……



 何て普通の顔してるの~っ!



 最近、メルフォスさんとかミレーヌとか皇帝とかその相手の美形女性とか…基本この世界の人間は顔が整っているので…その他大勢キャラの中で生活してきたあたしは若干、美に食傷気味。


 そんな中のオアシス見つけた~!!!!


 名前も分からないけど突然男!

 素晴らしいっ!!貴方の普通顔!!


 「あさみず、…座ったらどうですか?ずっと陛下が戻られるまで立ち続けるのはしんどいでしょう?」

 「え…何であたしの名前?」

 「……最初からずっと扉付近にいましたから」


 えぇ!?

 全く気付きませんでしたけど…何その存在感のなさ!?

 

 …あれですか?この世界は美形度合いで存在感が決まるんですか?

 

 「き、気付きませんでした…」

 「まぁ…よくある事です」


 …そう言った突然男の姿に影を見たのはあたしだけでしょうか?

 ただすぐにその影も取り去って、こちらを向いてにっこり微笑まれた。

 

 いい。いいよ!その笑顔!

 神々しさなんていらないよ!素朴な普通の笑顔、素晴らしいっ!!


「お茶のお代わりを頼みましょうか」

 

 突然男の笑顔に見惚れてると、彼がテーブルの上の茶器を片付け始めた。

 ただそれを聞いた瞬間あたしのお腹がタプタプを必死に訴えてきて


 「いっいえっ!!!もう飲み物は結構です!」


 ソファにだけ座らせてもらったが、お腹をポンポンと叩いてアピールを忘れない


 「あぁ…そう言えば、レヒアのジュースを7杯も飲んでいらっしゃいましたね…」


 …残念だ。

 顔はオアシスなのに…やっぱり一言多い…この人。


 「…ところで、皇帝の側近って事はわかりましたけど、貴方はどなたなんですか?」

 「失礼しました。私はガルフェルド帝国宰相シュバイリヒト・グランロード・レイ・レングランドと言います」

 「シュ…?」

 「シュバイリヒト・グランロード・レイ・レングランド」



 さっきの皇帝と言い、この人と言い…名前が長い!!! 

 …もう皇帝の名前思い出せないし…リュー…なんだっけ?

 

 ちょっと思い出そうと努力はしてみたけど…無理っぽいんで諦める。


 あぁ…他の事考えたら、宰相の名前忘れた…

 昔から人の名前覚えるのは苦手なんだよね~…正直、皇帝と宰相の名前は一生覚えられる気がしない。




 え~っと……シュ~グラ~……レンがついてたような?





 あっ!………シュグラー!

 



 ……………何か違う。

 もう宰相でいい…。



 でも宰相って…確か、国の偉い人じゃなかったっけ?


 「え~っと…宰相さん。あの…あたしどうなるんでしょうか…」

 「どうなると言うか…あさみずがどうしたいかによるんじゃないでしょうか?」

 「あたし!?」

 「ええ。君が帝国魔術学院に通うならばその手続きを取りますし、そうでなければ今後の事を多少話し合う必要がありますね」


 あ~あの保護とかってやつですね…。

 

 「あの…あたし結構自立してやっていけてるんで、保護とかいらないです」

 「そうですか。ですが決定事項として諦めて下さい」

 「はぃ?」


 今、何と仰いました?

 諦めろ…意味がわからないんですけど…


 「陛下が貴方をこの国で保護すると口にした以上、それに我らは従うだけです。この国で陛下の勅命に逆らう事は出来ません。逆らう者達は下手すれば反逆者です」


 は、は、反逆者!?

 おぃおぃ、自分の無実を証明しにきて、ほんとの犯罪者になるとかってどうなの!?


 …それに何か宰相の言い方が気になる。『者達』って複数形ですよね?


 「え~っと…それってあたしが皇帝を無視してこのまま帰れば、住んでる所にも迷惑がかかるって事ですか?」

 「説明前にご理解頂けて何よりです」


 …褒められても全然嬉しくないんですけど。


 「…つまりあたしにどうしろって言うんですか?」

 「陛下の御心のままに…」


 …何だそれ。

 あたしは皇帝のおもちゃじゃないっての!!!


 そう思いながらあたしはさっきの皇帝との会話を頭の中でリロードする。

 彼はあたしを保護するのは考え直してくれそうだった…でも帝国魔術学院には行けって何度も言われた


 「………つまり、あたしは帝国魔術学院に通う事になるんですね」

 「…やはり貴方は頭の回転が速い。陛下とのやり取りといい、とても12歳とは思えません。ニホンという国にちょっと興味が出てきましたよ」

 「ニホンは関係ないし…あたしじゅう…」

 「…じゅう?」


 やばい…もう少しで「12歳じゃないし」って言っちゃうとこだった

 

 「じゅう…何ですか?」

 「え~っと…「十分苦労してきてますから」」


 若干、苦しい言い回しだとは思ったけど、宰相は「…そうでしたね」って納得したみたいだった


 「では、魔術学院の説明をしましょう」

 「……ヨロシクオネガイシマス」


 あぁ…宰相がまたにっこり笑顔を浮かべている。

 オアシスはどうやら毒沼だったらしい。

 

 私、安佐水 日和は22歳にて迷子になり、25歳にて学生に戻る事になりそうです

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