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至上最強迷子  作者: 月下部 桜馬
1章 始動編
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12話 猫の威嚇は怖いんだぞ!

 あたしのナゾはナゾのまま、皇帝と突然男は会話を続けてる。

 二人の会話を要約すると『ガース国の使者との謁見中にあたしが現れて、皇帝はその人をほっぽり出してここに駆け込んできた』らしい、皇帝陛下の返事が「放っておけ」なんかの切り捨てる言葉が出てきてないとこを見ても重要な案件だったのではと推測出来る。




 ………って駄目じゃんっ!!!!



  

 重要度は関係なくても社会人としてそういうのはよくないと思うよっ!!

 しかもそのガース国ってテリサン村の隣の国じゃん!揉めたらどうすんのさ!!

 一番最初に被害受けるのテリサン村の人じゃないかっ!!!


 「あ…あの…」


 とりあえず声を掛けてみるけど、男二人は全く気付いてくれず、それどころかどんどん話がずれていって「戻ると言った・戻るなんて言ってない」の会話をヒートアップさせていってるようで…


 あたしは側にあった適当な紙を丸めると肺いっぱいに息を吸った


 「そこまでぇぇぇぇ!!!!」


 二人目掛けて自分の出せる最大の声を出すと、呆気にとられこちらを向く二人の顔はなかなか見物であった。


 「そんな「言った・言わない」の水掛け論してもしょうがないでしょうが!皇帝!!」

 「な、なんだ」

 「貴方、一国を統べる王様でしょう!こんな私事に左右されてる場合じゃないでしょうが!!キチンと自分の責任を果たしなさい!責任をっ!!!」


 あたしの突然の言葉に皇帝は「うっ」とブロンズ像のように固まってしまった。突然男も片眉を上げて「おや?」という顔でこっちを見てるがそれにもちょっとムカついた


 「あんたも側近なら頭使え!!下らない私事に皇帝を煩わせるんじゃないわよ!!」

 「あ…あぁ」


 今度は皇帝がこちらを見て「くくっ」と笑っている。

 それを見てあたしは皇帝に対して眼差しをきつくした。


 「さっさと皇帝は元の場所へ行きなさいっ!!」

 「いや…しかし…」

 「シャーーーーッ!!!!!」


 あたしが猫のように威嚇すると、皇帝は慌ててソファから立ち上がって扉へと向かう。だけど扉の前で立ち止まるとふっとこちらを振り返った


 「すぐ戻る。私が戻るまでここに居るように…」

 「そんな事よりさっさと行きなさいっ!!」

 

 あたしが噛み付くように言っても皇帝はその場から動こうとはしなかった。ただ俯いて聞こうとしなければ聞こえない小さな声で




 「…頼むから…居てくれ」




 と言った。そう言った皇帝の顔は俯いてて見えなかったけど、ぎゅっと拳が握られてるのだけが見えた。そんな皇帝を見てあたしの怒りも急速にしぼんでいく。


 え~っと…なんだか犬を捨ててる気になるのはあたしだけですかね…

 …散々「う~」とか「あ~」とか誤魔化してみたけど…結局口から出た言葉は「……居るようにします」だった。

 

 それを聞いて皇帝はぱっと顔を上げると、にこりとあの神々しい笑みを浮かべた。

 

 いや、だからその笑顔はあたしには毒なんだって…

 自分の中にある罪悪感がどっと押し寄せてくる


 いや…だってあたし…居るようにしますって言っただけだし、あたし的には「(皇帝が帰る時間頃に)居るようにします」ってわけで、ずっとここに居るとは言ってないから一度家には帰ってもいいよね?

 いつ戻るかわかんない人をこんな上品な場所で待つって…あたしにとっては罰ゲーム以外のなんでもないもん。それにそろそろお昼でしょ?ミレーヌも心配だし、お腹も空いてきたから、ライザさんの昼食食べに一旦家に帰りたかったりするじゃない…。皇帝が戻りそうな時間にまた来ればいいだけで…ね?


 「行ってくる」

 「…い、行ってらっしゃい」


 にこやかな皇帝が扉を出て行くとあたしは一つでっかいため息を吐いた


 「…つ、疲れた」


 最後のやりとりだけで疲労困憊になった。

 

 「くっくっく」

 「うわぁ~!!」


 あたしの横から聞こえてきた含み笑いにまた叫び声を上げてしまう。


 

 と、突然男っ!?あんたも出て行ったんじゃなかったの!?


 

 どうしてか突然男はまだあたしと同じ部屋にいて、しかもあたしの隣で口元を手で覆って笑っている。


 「あぁ…すみません。あんな陛下を初めて見たものですから…」


 いや…別に笑ってる理由なんて聞いてないし…


 「…こ、皇帝と一緒に行かなくていいんですか?」

 「えぇ、外には別の側近が控えておりますから」

 「………」


 あたし的には一緒に出て行って貰った方が嬉しいんですけど…あ、もしかして


 「見張りですか?」

 「見張り?」

 「えぇ…あたしがこの部屋で悪さしないように…」


 そりゃ闖入者だから信頼ないのは当たり前だけどさ…なら待っとけなんて言うなよ!って言いたくなる。


 「あぁ…違いますよ。そんな疑いはかけてません。幼児文字しか読めない貴方にこの部屋で何か出来るとは思いませんから」


 一言多いなこの突然男は…またそれが的を得てるから更にムカつく


 「じゃあ何で…」

 「貴方に興味があったというか…いや、違うな。皇帝が興味を持った貴方に興味があるんですよ」


 …やっぱり一言多い。

 別に興味がある事に代わりないんだから違わないでしょうがっ!!「皇帝が興味を持った」部分はあっても無くてもよくないですか!?



 

 それにしても、突然男…貴方は誰なんでしょうか?



 ……いい加減名乗って貰えませんかね?

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