11話 髪は女の命です
多分魔法が使えるっていうのは、それなりの確証があって…まずあたしの頭。
これ実は魔法がかけてあったりする。あたしの髪は本来は黒髪のど直毛なのに今は茶色のフワフワ髪。ライザさんにこの世界では黒髪が珍しいという事を聞いてとにかく目立ちたくなかったあたしはまず髪を変えた。
ざっくり言うと髪の構造と同じ3層魔法構造で今の髪型は出来上がってる。
『メデュラ』と言われるたんぱく質と脂質の塊でこれが髪の張りを司るものなんだけど、まずそれを細~くする事によって直毛がふんわり毛髪に変わるのですよ!
その次に『コルテックス』と呼ばれる硬ケラチンというアミノ酸の塊があって、この中のメラニン色素をいじる事で好きな髪色に早変わり!
『キューティクル』これ重要!細胞の板!これがしっかりしてないと天使の輪は出来ませんからね!強化!強化!
髪の成分さえ知ってりゃ魔法で簡単に操作出来ちゃったんだよね~。
この魔法が組み込まれた魔石をピアスにしているのであたしの髪はサラフワ髪になっているのだ。
傷めずに髪を弄れるなんて、素晴らしい。
ひそかに昔からこの髪型に憧れていた事は内緒だ。
さすがに長さはどうにもならないので思い切って切った。いいよね、軽い髪!
切るなって強制する奴がいなけりゃ元の世界でも肩下のこれぐらいの長さがベストだと思う。腰下の黒髪なんて重さ半端ないっすよ。
…髪の構造なんてどこで知ったのかって?ビバ理系!
ふふ…無駄に顕微鏡と格闘してなかったですからね。
いや…元の世界では全然無駄でしたけどね…何せ営業職ですから。
まぁ…ぐだぐだ説明したけど、そんなあたしのピアスは電池タイプじゃなくて魔方陣だけが組み込まれた物でずっとあたしの魔力を使って発動してるから、本来なら背中の紙を貼られた時点で黒髪に戻んないと変なんだけど…指先で掴んだ髪は今までと一緒の茶髪…
…?
…あたし、皇帝より魔力あるって事ですか?
いや…まさかそんな…ね。
きっとこの魔方陣が間違ってるか、皇帝の魔力が…そんなないだけですよね?
いや…失礼な事を考えてる自覚はあるんですけどね?
そうじゃないとすると…え~無理。
考えるの止めよう!
そして今魔法を使うのは止めよう!
「あ!ほんとだ!!魔法使えないやっ!!ははっ!!」
ちょっと時間が空いたけど、とりあえず答えてみる。
怪訝な顔で皇帝がこっちを見てるけど気にしない。
「いや~こんな魔法もあるんですね~。びっくりです。凄いなぁ~まだまだ勉強不足ですね。あたし…」
…これは本音。まだまだあたしの知らない魔法がたくさんある。
…でも、希望が持てた。
あたしの知らない魔法があるって事は、それだけあたしが元の世界に帰れる可能性が広がったって事を意味する。
「これは少し上級魔法だからな…」
皇帝の言った言葉にそりゃあたしには無理だわ…と納得する。
あたしの愛読書「はじめてのまほうのつかいかた」だし…ね。後は独学で全部やってきたから想像出来ない事は形に出来ない。
「上級魔法…」
それを使うのに必要なのは知識。それを得る為に必要なのは文字力。
……分かってるけど、道のりは長いなぁ。
「……だろう。違うか?」
突然聞こえてきた声に体がびくっとなる。
…しまった。ここは皇帝の部屋であたしは闖入者だった。
あたしが自分の世界に浸ってる間に皇帝は何か喋り続けてたらしい。
どうしよう…聞いてなかったんですけど。
「え~…っと」
「どうだ?」
どうだと言われましても…何の事やらさっぱりで…
さっきみたいに「城に住め」とかだったら安易に肯定の返事も出来ないし…
「そ、その件につきましては…後ほど…しっかり考慮させて頂いて…」
日本人秘儀!グレーゾーン!!
「考慮も何も無いだろう…。親に会いたくないのか?」
えぇ?何の話だったんですか!?
全く持って話のつながりが見えないんですけど!?
「いや…親には会いたいですけど……」
「両親を捜すのに魔法ほど効果的な物はないだろう。あさみず…君のご両親の情報は君自身しか持ちえない。それならば調査の為には君自身がもっとその技術を磨くしかない」
「はい…それはごもっともです」
いや、それは重々わかってるんですけどね。
いかんせん道のりが長いんですよ…
「ならばやはりあさみずは帝国魔術学院に通うべきだ」
「陛下…そろそろお時間が…」
「うわぁっ!!!」
突然、扉付近から掛けられた声に飛び上がった。
えぇぇぇ!!!
いつから居たんですか?!貴方!?
そしてどちら様ですか!?