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至上最強迷子  作者: 月下部 桜馬
1章 始動編
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1話 私、迷子になりました

 


 お父さん、お母さん。

 恥ずかしながら貴方達の娘、日和ひよりは22歳にしてどうやら…




 『迷子』になったようです




 ***

 

 今日も今日とて日は昇る。

 目が覚めて見慣れた天井は今ではシミの数もわかる。前は起きてから一つずつ数えて変化がないか凝視したりしてた。


 だって、ほんとはこの天井は私の部屋じゃない。


 目が覚めても自分のベッドだといいなぁって思わなくなったのはいつ頃からだっけ?


 まさか自分が異世界トリップなどという『物語の世界』を体験するなんて考えもせず、しかもどうしてこの世界に来てしまったのかという疑問は3年経っても未だにわからない

 普通は「勇者様!どうか魔王を倒してください!」などというイベントフラグが立つものじゃないんでしょうか?まぁ…それはそれで迷惑な話だけど。イベントが無かったら無いで帰り方もわからなければどうしていいのかもわからず、あたしはこの世界で単なる迷子扱いだったりする。


 「ひよ!朝!」


 扉の向こうから聞こえる声にいつも安心感を与えてもらいながら、私はいつもの身支度を始めた。白シャツと黒ズボンの動きやすい服装に白の前掛けを腰に巻いて、肩より少し長めの茶色い髪をくるくるっと巻き上げてアップにする。

 

 

 「よしっ!」



 と腰を叩けばどこから見てもあたしは職人。



 「あ~もぅこの世界に来て3年経ったんだっけ?皆元気かなぁ?」



 洋服を着替えながら、郷愁を感じたのは昨夜、久しぶりに家族の夢をみたからかもしれない。


 3年前と全く変わらない両親。


 そりゃ3年前から一度も会ってないから変わってなくて当然なんだけど、せめて皺を増やすとか、白髪にしてみるとか、あたしを心配した陰を少しぐらい出そうよ…。

 いつものように能天気にニコニコ笑う両親にこっちの方が心配になったわっ!



 「夢だけどねぇ…」



 まぁ…迷子の報告なんていう全くもって恥ずかしい限りな再会だったけど…



 「ひよっ!!!朝っ!!!」



 あたしの一人妄想に痺れを切らしたのか、扉の外の人間は思いっきり玄関を蹴っ飛ばして開けてきた。そこに立ってたのは超絶綺麗な美少女で、どう見ても扉を蹴破るなんて芸当をしそうにない。



 「ミレーヌ…今月玄関壊したの何度目?」

 「…2、3回?」

 「15回。半月毎日玄関壊されて直してる身になって下さい」


 

 うるうる瞳であたしを懐柔しにかかっているようだけど、まだまだお子ちゃま。

 悪い事をしたら、ちゃんとしなくちゃいけない事があるでしょう?

 あたしが流すつもりがない事を悟ったのか、ミレーヌはかろうじて聞き取れる大きさで「…ごめんなさい」と口にした



 「はい。謝罪受け入れました。で?こんな朝早くにどうしたの?」


 

 時計を見ればまだ朝の7時。いつもミレーヌが店にやってくるのは10時近くになってからで何かがあった事は一目瞭然。するとミレーヌがフリルのついた前掛けのポケットから4つに折られた紙を取り出して差し出してきた


 「?」

 「これ!昨日宿に泊まった人が持ってたの!!」


 ここテリサン村は小さな村だけど隣国への旅行者がよく立ち寄って宿泊していく、中継地点のような村だった。なので宿を経営するミレーヌの家には旅行者の出入りがよくあった。

 そんな彼女から受け取った紙は乱雑に折りたたまれていて、その状態から見えた内容は手配書のようだった。


 「この付近に強盗団でも逃げてきたの?」


 とミレーヌをからかいながらその紙を開け、あたしは目を見開いた。言葉を無くした自分にミレーヌが甲高い声で話しかけてくるが一向に耳に入ってこず、ただただその手配書を呆然と見つめていた

 

 「な…なんで?」

 「この絵の人!ひよだよね!?ひよってば王族の人だったの!?」


 そう。ミレーヌから渡された手配書にはでかでかとあたしそっくりの似顔絵が描かれていて、懸賞金の金額もとんでもない数字だったけど、その手配書を発行した相手を見て、あたしは更に衝撃を受けてしまった。




 そこにはこの世界で一番の大国ガルフェルド帝国皇帝直々の印が押されていた

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