建国歴708年7月29日 「鏡」
誰もが夢と希望を抱く世界
通称──────異世界
だが、そんな異世界にも“リアル”は存在する
不公平・不条理…そして死──────
これは私の
異世界での記録の書である。
異世界死亡録-「鏡」
鏡とは──────高位貴族の持つものだ
だがそれも現実世界ほど優れたものではない
知恵が集まりようやくできたものだ
私は王国の貴族へ、作られた鏡を持っていく為の傭兵として雇われた
もちろん望んで傭兵になった訳ではない
ただ──────
この苦しいまでの“リアル”から逃げ生きる為に必要な職だったのだ。
鏡はもちろん、平民である我々が見ていいものではない
──────見れば欲に目が眩んだ者として処刑されるだろう
鈴虫に似た虫の鳴き声がする──────
暗闇の中で唯一感じる現実世界に似たもの
だが、進む中に パチパチ という音が聞こえ始めた
松明の音だ
草原をかき分ける音、荒い息遣いこの緊張感
山賊だ
戦う 私はスポーツができたわけでも、人を斬り殺したことがある訳でもない
だが、相手を行動不能にしなければこちらがやられてしまう──────。
斬られぬように、刃に当たらぬように、ただただ剣に剣を合わせる。
相手の疲弊を待つしかないのだ
周りにいたほかの傭兵が逃げる音、斬られる音が聞こえてくる
私は私の事に精一杯で気づかなかった
絞首台の上で漸く、仲間の不手際で鏡が割れてしまったのだと知った。
このまま死ぬのだと思った時、店主が来た。鏡の制作者だ。
彼は何か事情を説明してくれた。
そして私の元へきた
その手には剣があり──────
私は死んだ。
責任の追求を恐れた店主の憤りにより、私は失血死した。
翻訳:建国歴 708年 7月29日 死因 失血死




